新年のご挨拶 本会会長 田尻 彰(たじり あきら)
新年のご挨拶
本会会長 田尻 彰(たじり あきら)
新年明けましておめでとうございます。今年も皆々様にとって、お健やかで、平和な年でありますよう、心よりご祈念申し上げます。
旧年中は本会と共に歩んでいただき、多くのご支援、ご協力を賜りましたことに対しまして、深く感謝申し上げます。本年も、引き続き、お力添えを賜りますよう、よろしくお願いいたします。
さて、2016年は皆様方にとってどんな年だったのでしょうか。思い出すまでもなく、7月の相模原市の障害者支援施設で起きた大量殺傷事件、8月の東京メトロ、10月の近鉄大阪線での相次ぐ鉄道駅転落死亡事故、視覚障害を含めた障害を持つ仲間として、このような惨事に怒りと不条理を覚えたことを思い出します。鉄道駅転落死亡事故に対しては、素早く対応された日盲連の動きが功を奏して、国や鉄道事業者の機敏な対応を生み出しました。
京都も、やや遅ればせながら、10月に開催した、第50回目を迎えた白杖安全デーの意義を具現化するために、啓発活動と要望活動を一体的に展開し、12月までに京都関連の5つの鉄道事業者に対して、取り組みを展開しました。
私は、1年前のこの誌面で、次の三つの目標と課題を掲げました。まだ道半ばの部分が多いですが、新年の新たな決意も含めて、本年の活動の指針を明らかにしたいと思います。
一つ目は、「独りぼっちの視覚障害者をなくそう」ということに対する取り組みです。現在、本会の会員数は減少してきており、かつ地域団体に加入していない会員の割合が増えています。私たちはこのような変化に着目し、多様化する会へのニーズや生活実態を把握した活動の受け皿づくりにも配慮しなければならなくなっています。地域団体個々の体制整備を行いながら、「仲間づくりの基本は各地域団体それぞれの課題」であることを再確認すべきかと思います。現状では、地域団体にも加入しておられる方、本会のみの加入の方のどちらであっても、会員として加わり、仲間の隊列に入っていただくことが先決です。その中から、本会が一人ひとりのニーズに合った会づくりをどう進めるかが大切だと思っています。
今年も引き続き仲間の共通な願いを実現する中で、新たな会づくりにつながると信じて活動に専念します。
二つ目は、白杖安全デーの歴史と第50回目を成功させた成果を活かし、今後の社会活動への発展を目指します。50年前の先人たちの革新的な取り組みの意義を皆で共有し、広範な府市民のご支援を得て、新たな移動環境の拡充と積極的な運動、安全で安心できる生活環境を築くために努力します。
時が移り、社会の状況が変わったとしても、そこに生きる視覚障害者の安全な暮らしと生活環境を守り充実させる姿勢は、本会が語り継ぎ、守り抜いて行く必要のある大切な使命です。そうした意味からも、第50回の記念事業を、京都府内の全視覚障害関係施設、関係機関・団体が勢揃いして企画できたことを皆様方と共に確認し合い、安全への取り組みが多くの視覚障害者の社会参加につながり、役割が発揮できるよう、前進して参ります。
三つ目は、京都ライトハウスが運営する船岡寮が中京区に移転し、ライトハウス朱雀として事業を開始しました。利用者が安心して暮らせる施設づくりに向け、今後も支援して参ります。また、船岡寮跡地利用については、京都市の支援を得て、京都ライトハウスの事業拡充に大きな一歩が踏み出せる年となるよう、強く念願するものです。
この他にも、ガイドヘルパーの確保については、昨年末京都新聞にも報じられたように、多くの府市民のご支援を得て、充実を目指します。
また、視覚障害者の働く場の保障・職域拡大を願う一方で、昨年秋から全国3か所(大阪、東京、仙台)の地方裁判所に提訴された「あまし(あんま・マッサージ・指圧)師違憲訴訟」では、視覚障害三療家の業権を脅かしかねない訴状が国に提訴され、国を相手取り晴眼者の養成施設や学校の設立認可を求める動きが強まっています。そのため、日盲連をはじめ、全国の理療科教員連盟や業界団体などが反対運動を展開しています。
私たちは、本会三療部を中心に、他府県の団体とも共同して裁判の傍聴活動、裁判官への署名葉書の発送、患者を通じて、広く全国民に対して視覚障害三療家の業権を守る訴えを行い、広範な支援の輪を広げなければなりません。
私たちを取り巻く環境は、法律等の整備、社会全体のユニバーサルデザインによるハード面の普及、そして府市民の方々による声かけ等の多様な支援によるソフト面の充実など、徐々に改善されてきました。しかし、働く場の保障や職域開拓の遅れから、希望を抱いて人生に立ち向かうことが困難な視覚障害者が多いことは、大変深刻な問題です。また、ガイドヘルパー不足や、適切かつタイムリーな情報・コミュニケーション支援の拡充など、多くの課題を抱えています。
このような中、より前進できる1年とするために、全力投球します。
最後になりましたが、本年が平和で、新たな前進を共に喜び合える年でありますよう、心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。