第50回白杖安全デーシンポジウムの報告

第50回白杖安全デーシンポジウムの報告
                   第50回白杖安全デー実行委員
青木 慎太朗(あおき しんたろう)
 去る11月23日、紅葉シーズン真っただ中、会場へ通ずるJR京都駅は大変な人出、その中でシンポジウムが開催されました。
 午前中から行った展示会では、協賛していただいた株式会社サン工芸からの出展を中心に興味深く見て、触って、聞いて、感じておられる方々が多く見受けられました。その中で、第1回目の白杖安全デー(1967年10月10日開催、千本北大路付近の様子)の模様を伝える写真が掲示され、その当時の点字ブロックと共に50年間の月日の隔たりを感じさせられました。
 午後からは、50年間にわたり受け継がれてきた歴史的遺産と他に類を見ない取り組みの意義を参加者一同共有した上で、「自動運転技術と視覚障害者の歩行について」をテーマにした基調講演とシンポジウムを行いました。視覚障害者の外出環境を今後大きく変化させる可能性を秘めた自動運転技術について、その研究に取り組まれている筑波大学システム情報系教授の伊藤誠(いとう まこと)先生をお招きして、基調講演をしていただきました。その中で、自動運転技術にはいくつかの段階があること、現在は運転者が乗っていてそれを支援する技術が中心であること、視覚障害者が単独で自動運転の恩恵を受けるためには、運転者を必要としない完全自動運転技術の段階まで達する必要があるが、それには技術的な課題や法的な課題を含め、対策が必要であることなどをご紹介いただきました。
 また、完全自動運転の一つ前の段階として、自動運転技術と視覚障害者との協働の可能性について提起がありました。具体的には、人と自動運転技術との関係を人と盲導犬との関係に例え、①盲導犬は人の言うことに従う、②進む・止まる・曲がるといった行動を人と盲導犬とが一緒になって行う、③最低限の安全確保は盲導犬が自分で行う(利口な不服従)。この盲導犬のような役割を果たせる運転技術が望まれるのではないかとの提案があり、とても興味を引かれました。
 基調講演後のシンポジウムでは、当事者の立場から東京都盲人福祉協会青年部副部会長の江見英一(えみ えいいち)氏が、東京メトロ銀座線青山一丁目駅で発生した視覚障害者のホーム転落死亡事故に触れつつ、当事者の立場から視覚障害者の外出の課題について発言されました。続いてライトハウス鳥居寮所長の牧和義(まき かずよし)氏からは、視覚障害者の歩行訓練について紹介いただきました。
 京都市保健福祉局障害保健福祉推進室室長の斉藤泰樹(さいとう たいじゅ)氏からは、京都市での視覚障害者福祉に関する取り組みとして同行援護制度についての説明と現状や課題について、ご発言いただきました。
 続く意見交換では、荷物が重い場合や体調や天候が優れない場合に同行援護でガイドヘルパーの運転する車を利用したいという声がある一方、現在の同行援護の制度ではそれが難しいという問題に触れつつ、そのような場面で自動運転技術が待たれていることを指摘しました。また、視覚障害者が運転者として自動運転技術をどう使うかという視点での議論が中心でしたが、歩行者として視覚障害者が歩いている際に、自動運転技術が歩行者を視覚障害者であると認識できるのかという点が議論になり、自動運転技術が歩行者の白杖を感知して視覚障害者であることを認識することは難しいということで、例えば白杖にチップかタグを埋め込むなどして、自動運転の車両に対して、自身が視覚障害者であることをアピールするという方法も有効なのではないかとの意見が交わされました。
 いずれにせよ、自動運転技術は現状としては発展途上にありますが、今後めざましく進歩することが見込まれます。今回のシンポジウムは、自動運転技術の研究者と視覚障害者をつなぐきっかけとして、画期的な内容になったのではないかと思います。このシンポジウムが一つのきっかけとなって、視覚障害者にとって使い勝手の良い自動運転技術の開発が進むこと、そして将来は、私たち視覚障害者が自動運転の車に乗って、いつでも・どこでも・行きたいところへ行く自由を手に入れられることが期待されます。
 そのためには、技術者と視覚障害者が手を携え、協力しながら技術の発展に向けて取り組むことが求められるでしょう。
 なお、当日の参加者数は、他府県をはじめ、府内各地から遠路ご参加いただいたこともあり、シンポジウム及び展示会を合わせて約250名にお越しいただきました。この企画への感心の高さと皆さんのエールに対し、実行委員会一同、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。


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