第76回全国視覚障害者福祉大会(奈良大会)に参加して
副会長 久保 弘司(くぼ こうじ)
新型コロナ感染拡大により影響を受け続けてきたこの大会も、今年は会場参加の定員を設けず、5月21日~22日、奈良県橿原市《かしはらし》で会場参加とオンライン参加を併用したハイブリッド方式により開催されました。
21日午後から開催された大会は、最初に、「踏切と横断歩道の安全を考えるシンポジウム」が開催されました。まず、日本歩行訓練士会から、静岡・奈良での視覚障害者踏切事故と道路横断を含めた取り組みについての報告があり、続いて国が取り組んでいる安全対策について、国土交通省からの説明がありました。その後、慶応義塾大学経済学部の中野(なかの)教授をコーディネーターとして、地元奈良県の視覚障害当事者を含めたパネルディスカッションが行われました。視覚障害者が切望しているにもかかわらず、安全対策がなかなか進まない状況を変えていくためには、どのような取り組みが必要か、熱気のこもった意見交換がなされました。
最後に、「踏切と道路を安全かつ安心して横断できることを実現するための奈良宣言」を採択しました。宣言の中では、音サイン等で踏切の場所を示したり、踏切内の誘導路を示したり、緊急時の避難方法を示すといった安全対策について、実証実験等を実施した上で可及的速やかにガイドラインに盛り込み、全国に普及させることを強く求めています。また、踏切や道路を確実に横断するためには、私たち視覚障害者も自身の歩行について確認し、学び続けることが必要であることも盛り込まれました。本会としても関係機関等へ継続して働きかけていくとともに、私たち自らも安全に歩けるよう取り組んでいきたいと思います。
その後開催された全国団体長会議は、全国の加盟団体の代表者と女性・青年・音楽・あはき・スポーツの5協議会の代表等が参加しました。今年度の日視連の活動計画に加え、ガイドヘルパーの地位向上等のために「視覚障害者ガイドヘルパーの日」の制定について検討されました。障害者自立支援法の改正法が成立したのは2010年12月3日ですが、この日を「視覚障害者ガイドヘルパーの日」として、その1週間の中で様々な取り組みをしていくことが承認されました。
なお、全国の各団体から出された提出議案は、今後関係省庁ごとにまとめられ、要望活動に移っていくこととなります。昨年度に引き続き今回も、団体長会議に先だって、オンラインにて提出議題を討議する場が設定され、本会からも副会長や担当部長が参加し全国の参加者と意見交換しました。
京都から提出した議案は、次の三つです。
1.地域の特性や利用者の状況に応じて地域生活支援事業を計画的かつ確実に実施できるよう、国庫補助金の財源を必ず確保すること。
2.国は音声式のパルスオキシメーターの開発をメーカー等に強く働きかけ、視覚障害者も確実に自力で健康管理ができるようにすること。さらに、同製品を日常生活用具に加えるよう、国から地方自治体に働きかけること。
3.雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業において従業者養成研修を実施し、専門性を担保すること。
翌日22日の午前は、全国大会(大会式典と大会議事)が2部制で開催され、その模様はYouTubeでもライブ配信されました。なお、本会元会長の田尻彰(たじり あきら)監事が、長年の地域活動の功績を称えられて礎(いしずえ)賞を受賞されました。誠におめでとうございます。
次年度第77回大会は、熊本県主幹で開催される予定です。