[地域団体より報告] 視覚障害者の防災を考える研修会を開催して
福知山市視覚障害者協会 会長 田村 敏明(たむら としあき)
11月4日、視覚障害者の防災を考える研修会を開催しました。コロナウイルスの感染が再び増加傾向にある中、参加者を収容人数の3分の1以下にするなど、3密回避で実施しました。
当会から、会員11名、賛助会員5名、ご家族とヘルパーさん4名の合計20名、参加を呼びかけた中丹管内の綾部から役員3名、舞鶴から役員1名、ヘルパーさん4名にご参加をいただきました。福知山市から総務課危機管理室 室長の森下(もりした)様、障害者福祉課コミュニケーション推進係 係長の吉田(よしだ)様にも同席をいただき、質疑に応答していただきながら、お互いの立場で研修を深めました。
第1部は、日本眼科医会、日本ロービジョン学会等で災害対応についても活動をしておられる、稲葉(いなば)眼科クリニック院長の稲葉純子(いなば じゅんこ)先生から、「防災について、備えとそのとき」をテーマにお話をしていただきました。
日本ロービジョン学会で作成されている、3つの防災用のパンフレットを活用して、非有事、有事についての対応を、提示していただきました。
1.災害が起きた時のために、備えておきたい7つのポイント
1. 一緒に逃げてくれる人をお願いしておく。
2. 避難行動要配慮者に登録をしておく。
3. 避難所、避難ルート(3ルートくらい)を確認しておく。
4. 災害用伝言ダイヤル(171)を知っておく。
5. 見えにくい人用の非常持ち出し品をリストアップし、用意する。
6. 自宅の耐震化や必需品の準備や備蓄をする。
7. 早めの避難を心がける。
2.被災してしまったら
災害時は、誰も余裕のない状態ですが、共助の姿勢が大切なことが顕在化。危険から身を守り、情報や物資を得るために勇気を出して周囲の人の手を借りる。
3.避難をした場所での行動
ア.避難所での場合。
1.避難所の管理者に、目の不自由なことを伝える。
2.目が不自由であることを、周囲の人に伝える。
3.生活上必要な配慮を、周りの支援者に具体的に伝える。
4.当事者団体に連絡をする。
イ.自宅で避難する場合
1.晴眼者の方に、安全上の確認をしてもらう。
2.食料、水、簡易トイレなど、生活に必要な物資を確認する。
3.電話やメールなど、非常時の連絡手段を確保する。
4.家族や支援者に、自宅で避難することを伝える。
第2部では、稲葉先生のお話を基に質疑と意見交換に入り、かつての水害で被災された稲葉先生や会員の生々しい避難時の様子と、避難所で実在する問題点をお聞きしました。
福知山市では、社会福祉協議会から、白杖を持った人の姿が夜でもはっきり見える、浮き上がる「視覚に障害があります」と書かれたビブスを支給していただき、各自、非常用持ち出し品に入れ、避難時に着用できる準備をしています。稲葉先生もビブスを着用することで、避難時や避難所で早く支援を受けることにつながると話されました。
今後の課題や提案として、避難所管理者が1人である場合、要配慮者に援助が出来る自主サポーターが必要なこと、自治会に視覚障害があることを知ってもらうこと、避難したことが分かる目印を近隣で共有し、避難時にそれを家につけることなどが挙げられました。
また、福知山市視覚障害者協会では、コロナウイルス感染に備えて、目の状態や受けたい援助、持病や飲んでいる薬、連絡してほしい人等を書いて、障害者手帳に挟んでおくことを申し合わせましたが、それに加え、家族の顔写真も一緒に携帯するべきだとのことでした。災害時は必ずしも家族と一緒とは限らず、支援者が家族を捜す手立てになるからとのことです。そのほか、自分のいる位置情報を知る手段を確保しておくことも大切とのことでした。
災害時、視覚障害者が避難することの難しさや、避難所においても視覚障害者が情報困難、移動困難である現実を、参加いただいた福知山市役所の方にも理解していただけた気がします。
災害は、風水害や土砂災害、震災だけではありません。コロナウイルス拡散防止のための生活上の自粛制限も、人との関りを制限し、孤独を強いる心の災害です。独りぼっちにさせないため、声を掛け合う共助は、障害者自身にも出来て、「互いの生命を守る」大きな役割を持っています。
なお、福知山市視覚障害者協会では、今後、ハザードマップを含めた防災に向ける音声デイジーCD盤を作成し、会員に配布できるよう市役所、朗読グループの皆さんと共に検討を始めています。
災害時、視覚障害者が直面する困難さを一緒に考えて下さった稲葉先生、福知山市役所の森下室長、吉田係長、積極的に発言して下さった会員の皆さま、本当に有難うございました。意義深い研修会となり心から感謝いたします。
こうしたことが徒労に終わることを、また穏やかに新年を迎えられますことを心から願っております。