[報告] 「手で触れる日展鑑賞会」報告
京視協文化部・五感で楽しむ会
昨年12月16日、標記鑑賞会を「みやこめっせ」において開催しました。参加は当事者9名、出展作家13名、付添やボランティアと美術館職員の総勢約50名となりました。今回もアンケートと感想文を書いていただき、その中から一部を抜粋してご紹介します。
今回の鑑賞では、作家の方と直接お話しできたことがすごく良かったです。そして、グループで鑑賞することで、他の方の発想や質問を共有することができ、一層鑑賞が奥の深いものになりました。人物をモチーフにした作品では、表面の質感を精巧に表現しながら、その内側の肉や骨の存在まで伝わってくるものばかりでした。その中でも「感謝」という作品は、奥様の肩に置かれた手の包み込むような掌や、少し力を込めて肩をもむリアルな指先の形に手を添わせると、そこに込められた優しさとぬくもりまでもがじわっと伝わってきました。
空間というものを表現している作品が多かったのも興味を引きました。細部まで細やかに作られているのに、見ても触れてもわからない「作品の前にできた空間」について説明を受けて、その空間とそこに込められた思いに心を馳せると、「肝心なものは目には見えない」を体感できたような気がしました。
複雑なテーマを持つ作品も多く、一つひとつの作品に物語が、宇宙が凝縮されているような感じも受けました。単純な希望に満ちあふれているのでも、悲しみに打ちひしがれているのでもない、悲しみを内在しながらもそれを受け止め、凛と前に向かう姿は、視覚障害と向き合う中で何度も自分の中に感じた想いと重なりました。
風化するにつれ味わいの増すと思われる作品は、人に触れられ作品の下に石膏がざらざら落ちている様さえ作品に取り込んでいて、過去と未来が渾然一体となりながら朽ちる楽しさを体現しているようでした。
私は見えていた頃、とても綺麗な絵が好きでした。見えにくくなってから参加した美術鑑賞ツアーでは、いつも何だかよくわからない作品の鑑賞ばかりで正直残念に、少し不満に思っていました。でも回を重ねるうちに少しずつその作品の奥の心を見るようになってくると、鑑賞の楽しさが広がり出しました。
今回の鑑賞会では、美しい作品とその奥の心、両方が本当に繊細な哲学に満ちていて心豊かな時間を過ごせました。
ボランティアの皆さまをはじめ関係者の皆さまに、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。(京都市 K.Y)