メルマガ色鉛筆第37号(「点字で開くワンダーランドへの扉」)

タイトル 点字で開くワンダーランドへの扉
ペンネーム 夢色の春樹ワールドに迷い込んだ野良猫(60代 女性 弱視)
 レポートの要旨です。
 本が好きだった私、見えにくさが増すにつれて読書が苦痛に。
でも、デイジー図書と出会って感動!
片っ端から大好きな村上春樹を堪能。
さらに、点字で読むことの味わい深さと出会い、
指でなぞり、ゆっくり本にいそしむ幸せへと・・・。
 ここから本文です。
 今から何年前になるでしょうか?
村上春樹のベストセラー「海辺のカフカ」が文庫本となり、
本屋さんの店頭を華々しく飾っていたころ、
私は少しずつ読書が困難になり始めていました。
行がうまく追えず、1ページ読むのに10分も20分もかかる有様。
「長編小説を読むことは、私にはもう無理だな」と、
悲しい気持ちで本屋をあとにしたのを思い出します。
その時、私は読書をあきらめました。
 それから7年余り、少しずつ視力が落ちていった私。
それでも見栄を張ってというのか、プライドからか、
視力が落ちてきた自分を認めたくなかったのです。
「私はまだまだ大丈夫」と思いたかったのです。
「白い杖なんて・・・」と、意地を張っていました。
でも、やっぱり現実を受け入れなくてはいけません。
 私はついに、ついに京都ライトハウスに足を踏み入れることとなりました。
そこで、私は音声で本が読めることを初めて知りました。
デイジー図書です。
こんな便利なものがあるなんて知らなかった私は、
「もっと早くライトハウスに来ればよかった」と後悔。
 私は、早速一番読みたかった「海辺のカフカ」のCDを点字図書館で借りました。
これが、私の村上春樹ワールドへの第一歩でした。
ここから春樹ワンダーランドの奥深くへと迷い込むこととなるのです。
私は、長編、短編、エッセイ集と、片っ端から読みあさりました。
「また読書を楽しめるなんて、夢みたい」、
私は目の前にぱっと世界が広がったような気がしました。
 時を同じくして、私は京都ライトハウス生活訓練部鳥居寮の訓練を受けることとなり、
そこで初めて点字とめぐり会ったのです。
この6つの点だけですべての文字を表せるなんてすごい!、驚きです。
これを考案した方に敬意と感謝。
私はすぐに点字に魅せられ、点字の世界に引き込まれていきました。
そして、なんとしても自分の手で、
いや、指で「海辺のカフカ」を読んでみたいと思うようになりました。
 苦節2年、意を決して念願の「海辺のカフカ」上巻を借りることに!
そして、点字本にして全7巻が手元に届きました。
読み終えるのに何年かかるんだろうとちょっと心配になりましたが、
どんどん物語に引き込まれ、1か月余りで読み切ることができました。
点字にてついに読破、そこには満ち足りた満足感と充実感がありました。
 1文字1文字と、指でたどって読むのは時間がかかります。
でも、音声で聞いていた時には気づかなかった何気ない言葉や表現の中に込められた作者の思いが
指先から伝わってくるような気がします。
私は、すっかり春樹ワールドのとりこになってしまいました。
ゆっくりと丁寧に指で言葉を追っていくと、
どんどんイメージが膨らんでいき、
物語は鮮明な映像として浮かび上がってきます。
 デイジー図書には、次から次へとストーリー展開を追っていく醍醐味とか、
話題作を一早く読めるという利点があります。
点字で読むのは確かに時間がかかります。
ゆっくりなだけに、深く作品の中に入っていけるように思います。
点字には、デイジーとはまた違った味わいや新たな発見があります。
 点字で読書ができるようになった私にとって、
「海辺のカフカ」は何度も読み返してみたい大切な1冊です。
短編小説なら、ちょっと笑えるハードボイルド「パン屋再襲撃」が私のお気に入りです。
リズミカルな春樹様の文章に指でいそしむ私、
今日もワンダーランドの迷宮へとお出かけしてきます。
編集後記
 文字を目で追うことに困難を感じ、大好きな読書をあきらめてしまったこと。
デイジー図書との出会いでたくさんの本をすらすらと楽しめるようになったこと。
さらに、点字で読むことで、味わいながら読む幸せと出会ったこと。
夢色さんと本との間に広がる世界は、
読書のスタイルをめぐりながら引き込まれていくワンダーランドなんですね。
村上春樹さんの作品には猫さんがよく登場しますが、
夢色さんも気ままに作品の中でキャットウォークなんですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
助成協力: 京都オムロン地域協力基金
発行日:  2015年3月6日
☆どうもありがとうございました。


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