メルマガ色鉛筆第335号「新しい鍵たち」
タイトル 新しい鍵たち
メルマガ色鉛筆編集チーム
2024年度がスタートしました。
同じタイトルで自由に文章を書いてみよう、
タイトルは「新しい鍵」、できるだけコンパクトに書いてみよう、
そう呼びかけてみました。
実にさまざまな心模様が「新しい」と「鍵」の言葉をきっかけに
ひろがっていきました。
見え方も世代も、この4月の状況も異なる皆さんの「新しい鍵」をお届けします
。
★タイトル 新しい鍵
ペンネーム グリーンブレード (20代 男性 全盲)
環境が変わるだけでは不安にならない
人間関係に悩んだりすると不安になる
心に抑え込んでいる、そんなものが入った箱、
その不安の箱を開けてみる。
心の鍵をあける
話してみたり、書いてみたりすることで
気持ちが楽になる。
ぼくはそう思っている。
★タイトル 新しい鍵
ペンネーム ポイントはパステル (50代 女性 弱視)
また、4月がやってきた
昨日からの続きの今日だけど
新年度はしばらく襟もパリッとさせて
朝から強く踏み出す
そんな雰囲気を街中がまとってる
通り過ぎた夜がおだやかなら
その空気もさわやかで
通り抜けた夜がもどかしいなら
それは きつい緊張感にもなる
霞む空の下 ふと立ち止まる
深呼吸なんて
そんな深い寄り添いじゃないけど
ふと吐き出すものの中に
僕らは何を見るだろうか
新しい鍵は君の中に
新しい鍵は僕の中に
手のひらを 空に向けて捜す
なにもないようで なんでもある この手のひらを
★タイトル 新しい鍵
ペンネーム 銀色の鈴 (70代 女性 弱視)
4月から新たな道を開けよう。
続けていることはそのままに
何となく学校も 職場も
行政も 保育園の子供たちも
ただ新年度ってだけで どこか前進のイメージだ
現役を引退した シルバー世代はどうかと言うと、
4月とて何ら特段の変化はない
なんとなく世の中から置いてけぼりにされてる、そんな気分にすらなる。
本当に 置いてけぼりなのか?、考えてみた。
世の中ではなく、自分に向かって
「それでよいのか」と問いかける、いや、問いかけない。
おそらくそれだけでも日常の過ごし方がちがってくるのだろう。
現役世代の知人や家族、子どもなどとの交流がなくなると
季節感まで失われるようだ。
「もう年だから」ではなく、
「まだ大丈夫」という気持ちを持つことが
これからも元気に暮らす鍵になるのだろう。
★タイトル 新しい鍵
ペンネーム ブラックセキュリティー(10代 男性 全盲)
近年ではホテルや車などでキーレスやスマホでの認証が増えてきている。
一方で自宅や建物のカギはまだまだ金属で作られたものが使われている。
セキュリティー的には、金属で作られた鍵のほうが良い。
しかし、この小さな金属の鍵、自分たち視覚障害者にとっては
失くしやすいものでもある。
キーホルダーにじゃらじゃらぶらさがっていると、
どれがどこの鍵だったか、区別だってしにくい。
視覚障害者でも使えるスマホなどのIT機器でなんとかできないものだろうか。
まずは、今までアナログキーを使っていた建物のドアなどに、
専用のレシーバーを取り付ける。
スマホにも専用アプリをインストールし、
スマホの生体認証機能を使えば、ドアに触れることなく開けることができる。
しかし、両手がふさがっていた場合やスマホがない場合はこの手法は使えない。
そこで専用のレシーバーの機能を拡充させ、指紋認証や顔認証ができるようにす
る。
指紋認証だと、レシーバーの位置がわかっていないと
スピーディーに開けることができない。
顔認証のみにすれば、スムーズに出入りできるのではないだろうか。
もちろんレシーバーには音声ガイド機能も搭載させ、
鍵が開いているかどうかも確認できるようにする。
ただ、音声ガイドにおいては、セキュリティー的に問題があるかもしれない。
音声ガイドの内容を盗聴されるかもしれないからだ。
それは厄介だ。
ビープ音を鳴らすようにすればある程度緩和できるかもしれない。
夢のようなことを、自由に妄想してきた。
しかし、いや、やはり課題は山積みだ。
専用レシーバーを導入するには、多額の費用が掛かる。
スマホ用の専用アプリや機器の互換性を合わせるのも困難だろうし、
それには時間もかかる。
機器をつけたドアは重くなってしまい、災害時などは使えない。
このようにたくさんの困難を乗り越えなければならないデジタルキーだが、
数十年後は当たり前になっているかもしれない。
今のアナログキーが「珍しい!」といわれるような時代が楽しみだ。
★タイトル 新しい鍵
ペンネーム レッドカード (30代・女性・弱視)
人の心の中にはいくつも鍵のかかった扉がある。
もちろん、私の中にも。
シンプルな扉、重たそうな扉…
それはもう、たくさん。
扉に鍵はつきものだ。
大事にしまっておくため
新しく開くため
鍵の用途はそれぞれだろう。
新しいもの、世界は…
ドキドキ、わくわくするけど…
やっぱり、ちょっと怖い。
怖いけど、進まなきゃいけないことばっかり。
もう歩けない、なんて
言ってられないのが人生だ。
手には、新しい扉を開けるための
鍵を握りしめて、震えている。
これは武者震いなんだと
自分に言い聞かせて、一歩を踏み出す。
鍵穴からのぞく、一筋の光が好きだ。
扉の向こうからさす光に
いつだって、惹かれている。
怖くても、なんだかんだ
先が気になってしまって
じっとできないような感覚に、覚えはないだろうか。
私はたくさんある。
性格の問題だろうか。
怖いもの見たさ、みたいなものだ。
また、新しい扉を見つけよう。
新しい鍵を作ろう。
いつだってへっぴり腰の
小さな私たちの冒険を、終わらせないために。
…なんて、今なら言えるけど
数年前の自分なら
楽しんでる場合か!って
キレ散らかしてしまいそうです。
編集後記
「鍵」から連想する言葉をペンネームに入れて、
「新しい鍵」をタイトルに文章が寄せられました。
不安や岐路、一歩踏み出すといった心の中にある鍵の世界がひろがっていたり、
未来の鍵を描いたり、社会の中の自分と対話したり、
いろんな「新しい鍵」がありました。
今、このメルマガを読んでくださっている方のお心には、
どんな鍵があるでしょうか。
また、実際の鍵、ガチャガチャとまわすものや、かざすタイプや、
ネット上でのログインなど、
私たちは実にさまざまな鍵を手に暮らしています。
一つの言葉からさまざまな視点が出てきて、考えて、それを誰かに伝えて、
そんなちょっとした交流も何かにつながるきっかけになるかもしれません。
一つの言葉からいろんな世界へ、色鉛筆でまたいつか。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2024年4月12日
☆どうもありがとうございました。