メルマガ色鉛筆第15号(私たちのちょっとした生活術 ~台所編~)

タイトル 私たちのちょっとした生活術 ~台所編~
ペンネーム クリーム12号(30代 女性 全盲)
レポートの要旨です。
 はじめまして。
クリーム12号と申します。
クリーム12号とは、懐かしい0系新幹線の車体の色です。
夫は軽い鉄道オタク、0系のファンです。
私は甘いものが大好き、クリームには目がないです。
そんなクリーム好きな私たちの暮らしの中の工夫について、
今回は台所をテーマにお話します。
ここから本文です。
 2人暮らしの私たちは、ともに全盲です。
なので、ちゃんと生活できているのかと心配されることがあります。
でも、小さな失敗をしながら、楽しく暮らしています。
料理をつくること、食べることはお互い好きなので、いっしょに台所に立っています。
私たちが甘い雰囲気だから…ではありません。(笑)
作業を分業にすると、圧倒的に時間短縮になりますから。
 私は中途失明で、見えていたころは調理関係の仕事をしていましたので、火や包丁の扱いには慣れています。
でも、一歩間違えると、火事やけがのもとになるものが台所にはたくさんあります。
今回は、私たちが台所で心がけていることをご紹介したいと思います。
 まず、ものを多くしないこと。
家具や棚がいっぱいだと動きにくいし、冷蔵庫の中がいっぱいだと目あての食材がすぐに探し出せません。
また、まだ残っているのに、忘れてしまって新しいものを余分に買うという無駄を防ぐことができます。
 そして、定位置を決めること。
これは見えているとなんでもないことなのですが、見えないと、いつもの位置からほんの数センチずれていても気づけない場合があるのです。
調味料やよく使う食器などは、「お決まりの位置」に徹底して収納するようにしています。
収納の区切りに、100円ショップで売っているトレイやかごなどを利用しています。
もし、倒して汚してしまった場合でも、それだけさっと取り出して洗えばよいので便利です。
区切りをつくることで配置がわかりやすくなるだけでなく、汚れの広がりを防ぐことにもなります。
 冷凍食品も定位置を決めています。
わが家の冷凍庫は引き出し式で、上段の可動するトレイには唐揚げやギョーザ、コロッケなどの「すぐ食べられるおかず系」を入れています。
下段の深いスペースには2つのかごを並べ、1つにはおにぎりやピラフ、お餅などのごはん系、もう1つには冷凍野菜やあまって保存した油揚げなどの素材系を入れています。
お肉や魚もそれぞれのスペースを確保して、一目で、いいえ、一さわりでわかるように保存しています。
私は、冷たい冷凍庫に手をつっこんで探すのがとても苦手でした。
冷凍庫も、入れ方を工夫することでスムーズに活用しています。
 次に、ラベリングをすること。
買いすぎに気をつけても、置き場所を決めても、袋や箱に入っていると判別しにくくなります。
特にレトルト食品や缶詰めなどはわかりにくいです。
最初は輪ゴムをかけたりしていましたが、そのうちにはずれてしまったり忘れてしまったりなんてこともあります。
私は、幅1センチぐらいのテープ状になっているシールに点字を打ち込んで貼りつけています。
袋入りラーメンは種類がたくさんあり、手ざわりだけでは区別できません。
例えば商品名や「しょうゆ味」など、細かな情報を入れてラベリングします。
 そして、もっとも大切なことは声をかけ合うこと。
以前、熱い鍋を夫の腕にあててしまいました。
以来、「熱い鍋通ります」と、お互いに自分の動きを実況中継しています。
買ってきたものを冷蔵庫に片づけるときも、「このお豆腐、○日が消費期限やって」と声をかけておきます。
うっかり私が忘れていても、「そろそろお豆腐、食べなあかんのちがう?」と夫が覚えていてくれて、
「そうやった。じゃあ、湯豆腐にでもしよか」となり、腐らせてしまうことも少なくなります。
 例えば、2人で料理するときの手順はこんな感じです。
夫に包丁を握らせると危なっかしいので(笑)、材料を切る作業は私が担当します。
その間、夫に米をといでもらいます。
材料が切り終わったら、炒める、焼くのは夫が担当します。
私は、プラスもう1品の和え物や煮物にかかります。
できあがった料理を配膳してもらう間に私が洗い物をします。
食卓が整うころにはシンクもきれいになっています。
後片づけも楽になるクッキング!、これが私たちのいつものパターンです。
 そんなわが家のヘビロテメニューは、夫の好物であるポテトサラダです。
季節を問わずよくつくります。
一度にジャガイモを6個ぐらい使っても、ほんのわずかしか残らないことが多いです。
(残れば、次の日の1品になるかともくろむのですが)
ただ、カロリーが高くなるので、マヨネーズの半量をヨーグルトに変えたり、食塩を減らすためにマスタードを使ったりと工夫しています。
あまったごはんを消費するのに焼き飯もよくつくります。
 見えない私たちの暮らし、工夫しだいでどうにかなることもあれば、困るポイントもあります。
ハード面では、すぐに読みたいものが読めないことがあるということです。
例えば薬や電化製品の取り扱い説明書など、すぐに見てもらえる目がないとやはり困ることがあります。
最近は食料品などを中心に点字がついたものも増えましたが、まだまだほんとうに必要なところには普及していないなあと感じることが多いです。
また、役所などからの書類には提出期限がある場合が多いので、郵便物には気をつかいます。
 ソフト面では、相手の気持ちが表情からうかがえないことでしょうか。
むっとしているのに、ぜんぜん伝わっていなかったり…。
まあ、表情さえ読めないのだから、空気なんて読めへんのもしかたないかなと笑っています。
 これは難しいかなということでも、いろいろ試すうちにできるようになった場合もあります。
今のところ、てんぷらとお好み焼きはなかなか挑戦できずにいます。
てんぷらは火事が恐いし、油の処理もたいへんそうなので、食べたくなったら実家に行ってつくってもらっています。
 見えない私たちは、このような調子で暮らしています。
とはいえ、まだまだ試行錯誤の連続、それこそ手さぐり状態です。
でも、ああだこうだ言いながらあれこれ試すのもなかなか楽しいですよ。
これからもよりよい工夫を重ねていきたいと思います。
編集後記
 見えないからこそのシンプルライフ、あうんの呼吸の連携プレイ。
まさに見える見えないをこえた生活術ですね。
思わず、わが家もお2人にならって、親子3人のオムライス連携プレイにトライしたくなりました。
見えないことで途方に暮れることをゼロにするのは難しいかもしれません。
だからこそ工夫したり、相手を思いやったり。
小さな情報でも言葉で伝え合うことは、お互いを知ろうとする気持ちそのもの。
それがお2人の自然体、しっくりくるスタイルなんですね。
「まあ、失敗しても当然だ!」と気楽にトライする中で、
たくさんの手さぐりから新たなコツが生まれる予感、楽しみですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行:京都府視覚障害者協会
発行日:2014年6月6日
☆どうもありがとうございました。


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