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活動紹介

メルマガ色鉛筆第314号「編み物レポ」

 
タイトル 編み物レポ
ペンネーム アクリル絵の具(30代 女性 弱視)
レポートの要旨です。
 私はモノづくりが好きな物好きです。
思えば昔から、それこそ幼稚園児くらいの頃から、何かしら作っていました。
他の子よりも、じっとしているのが苦手で、周りの人を大いに悩ませていました

とりあえず手を動かせば体は動かなくなる、ということがわかったので、
よく粘土を触っていました。
そこから出会ったのが、モノづくりだったのです。
見えにくい状態の今もいつも手を動かしています。
そんな私のところに、なんだかデカイ声が飛んできました。
「視覚リハ大会ってのがあってね・・・」
とにかくやたら熱いこの夏、暑苦しいオーダーが飛んできたのです。
そこからはじまった今回のモノづくりについてお話します。
★ここから本文です。
 私のモノづくりは、初めは夏休みの工作で作った割りばしの貯金箱だったと思
います。
そこから絵を描き、ビーズアクセサリーを作り、簡単なコースターを編み、
レジンアクセサリーを作り、ミシンでファッション小物を作り・・・。
いろいろなものに手を出しました。
 今の私は弱視です。
自分の指のシルエットがうっすら確認できるかできないか、
とてもぼんやりした視力になりました。
大好きなモノづくりは、もうできないかな。
色が見えないから、絵は描けない。ビーズだってレジンだって、パーツが見えな
い。
触ってなんとか、と言っても限界がある。
なんにも見えない。でもじっとできない。
なにか作りたい。でもどうしたらいい?
イライラするし悲しい。寂しい。
八つ当たりのように、道具を叩き壊したこともありました。
あの頃は本当につらかったなあ。
 ある日、手慰みに触った毛糸で、指編みをしてみたんです。
・・・うん?これ、見えなくてもできるな。
今の私でもできることあるじゃないか!!
これなら手の感覚だけでできる!
そして私は、編み物の世界にのめりこみました。
 今私は、京都ライトハウスで様々な訓練を受けています。
そこで出会ったのが、鳥居寮の石川先生。
初めは「私と名前似てる人だ」くらいにしか思っていませんでした。
それがまぁ、なんというか、暑苦しい人だなと感じるのに、
そう時間はかかりませんでした。
そして私は巻き込まれることになるのです。
「レクリエーションでキツネダンスをするのだけど、
そのダンスで使うアイテムを作ってもらえないかな?」
なんとざっくりしたオーダーだろうか、
というかキツネダンスってなんぞや。まずそこからわかりません。
でもせっかくだしと、いろいろと考えました。
どんなのにしよう。動物イメージのマスクとかどうかな。
たくさん作ることを考えたら、あまり難しくないものがいいよなあ・・・。
(この時点でのオーダー数はまだ少なめ)。
そういえば、キツネダンスだし、耳のついた帽子はどうだろう?
量産することを考えて、難易度低めの猫耳帽子なんてどうかな。
点字の訓練したおかげで、毛糸玉に点字メモもつけてるし、
毛糸の色の識別はできるし。
そうだ、せっかくなら、見えない、見えにくい人達がかぶるものだし、
前後左右が分かりやすいデザインがいいな。
じゃあ、サイドにゆらゆら揺れるポンポンをつけよう!
そんな感じで決めて、作り出しました。
色やサイズ、糸の素材も様々な猫耳帽子。
途中で数が多すぎる!とさじを投げかけた私に、鳥居寮に入所しているみんなが
「ポンポンづくり、手伝おうか?」と声をかけてくれました。
なんてありがたい。優しいみんなに感謝です。
なにが嬉しいって、男性陣までみんな集まってくれたこと!
全盲の人も弱視の人も、みんなで集まって作業しました。
「あれ、どっか失敗した」「この後どうするんだっけ」「難しいけど楽しいね」
年齢も見え方も様々な皆が、各々考えて、自分に向いている作業を見極めて、
いつの間にか私が教える余地もないくらいに作業分担していて、すごく驚きまし
た。
なんなら、私より早いんじゃない?嬉しいような、悔しいような。
「一人じゃできなくても、みんなでやればできるってわかって、楽しい!」
という声も聞けました。
みんな素敵な仲間です。
 バラのコサージュについては、はじめに聞いていた数からどんどん増えていっ
て、
内心ちょっとめんどくさいな、というか若干うんざりしたのはここだけの秘密で
す(笑)
確かに私は編み物が大好きで、四六時中なにか編んでいますが、
始めは20個くらい、と石川先生は言っていたのに、どんどん増えて25個超え

どうやら一緒にやるスタッフが増えたとかで、必要となるバラの数が増えていっ
たとか。
デカイ声、あちこちで、ほんまに、もう・・・。
安請け合いした私も私ですが、なんか都合よく使われてませんか?
でも、作るのは本当に楽しかったです。
これは本当に。
全部同じ色じゃ面白くないな、カラフルにしよう、じゃあ素材もバラバラにしよ
うと、
いろんなお店の、いろんな毛糸を買い歩いて、いろんな店員さんと話して。
寮のみんなでわいわい作ったポンポンを取り付けながら
どんな人が身に着けるのかななんて考えながら、ひと針、ひと針。
見えなくてもできることはあるし、
どうせできないなんて諦めないで、きっとできるからゆっくりやろう、
そんな気持ちがちょっとだけでも伝わればいいな、なんてね。
 最後に今後やりたいことですが、結局編み物なので変わらないと言えばそうな
のですが・・・書けといわれてしまったので書いてみます(笑)
 色や線を認識することが難しいので、もう長いこと絵を描けていませんが、
やっぱり描きたいとは思うので、毛糸で編んだモチーフなどを使った、
触れる絵を作りたいなと思っています。
私が描きたいものを描く、それはもちろんなのですが、
見える人にも、見えない人にも伝わる絵が描きたいんです。
いつかアトリエギャラリーなんかに飾って、いろんな人に見てもらいたいし、
いろんな人の作品を飾ったりもしたい。
そんな野望を持っています。
 病気になってしまったときは、もう何もかも終わり、というくらいに絶望しま
したが、今こうやって好きな事を続けていられるのは、石川先生だけでなく、
たくさんの職員さんが私のやりたいことをやりたいだけやらせてくれているおか
げです。本当にありがとうございます。
鳥居寮のみんなの力を合わせた作品が、皆様になにかを伝えられたら幸いです。
編集後記
 9月8日から開催される視覚リハビリテーション研究発表大会 in 金沢に向
けての
エピソードでした。
バラのコサージュ、キツネダンスのお帽子、見えない・見えにくい人の思いが
そこに注入されているのですね。
デカイ声が飛んできてアクリル絵の具さんは動き出しました。
動いてがんばっている姿からお仲間さんも動き出されたようです。
京都ライトハウス鳥居寮の体育訓練ではキツネダンスの動画も撮影されたとか。
メルマガ色鉛筆ではこの大会との連動企画としてレク川柳を募集しました。
すべての動きの中心に見えない・見えにくい私たちがいます。
金沢でアクリル絵の具さんの作品を手にされた皆様の反応が気になります。
さて、この取り組みはどうなるのか、後日、色鉛筆レポートでお届けします。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:  京都府視覚障害者協会
発行日:  2023年9月1日
☆どうもありがとうございました。

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