メルマガ色鉛筆第255号「シリーズ「心の風景」その2」

タイトル 「シリーズ「心の風景」その2」
メルマガ色鉛筆編集チーム
タイトル 20ERAS 
ペンネーム オーシャンブルー(20代 男性 弱視)
 心の風景を描くため、さまざまな場面の自分をふりかえってみた。
まず学校のこと。 
私は未熟児網膜症で幼稚部から高等部まで盲学校に通っていた。
ずっと盲学校にいたため、外の世界を知らなかった。
だから健常者と比べて非常に経験が少ない。
小学生と中学生のクラスは3人で、高校生のときは1人だった。
純粋な人たちばかりでいじめはなかった。
授業はマンツーマンが多かった。
もちろん自分のペースに合わせて授業を受けられたことは嬉しかったけど、周りの人
との意見交換はなかったし、友達同士で会話する機会もあまりなかった。
本当に寂しかった。
 次は兄弟のこと。
小学3年のときに兄弟3人でテレビに出たこともある。
毎日放送の「せやねん」という番組の「あーニッポンの兄弟のコーナー」に出演した

番組の内容はこんな感じだ。
夏休みに和歌山の祖母の家に遊びに行ったとき祖母と母が親子喧嘩をしてしまった。
以来、和歌山に行けなくなって、祖母の誕生日を祝うこともできなかった。
そこで私たち兄弟3人は祖母と母を仲直りさせる作戦を考えた。
まず、祖母への誕生日プレゼントを作った。
写真やシール、お祝いのメッセージ、祖母の似顔絵は弟が描き、手作りのパネルを完
成させた。
そして、和歌山まで電車に乗ってプレゼントを渡しに行った。
祖母はもちろん喜んでくれて、大事に飾っておくと約束をしてくれた。
そして無事に祖母と母は仲直りできた。
テレビに出られてすごくうれしかった。
 そうだ、習い事のことも。
学生の頃は英会話教室や落語教室にも通っていた。
 英会話は約10年近く、落語は約3年ほどやっていた。
落語は毎年発表会があり、師匠は演目ごとにわざわざ録音テープを送ってくれた。
英語教室では外人の先生と会話をしたり、ゲームをして楽しかった。
英語教室のビルの社長さんはすごく優しくて私の面倒をみてくれた。
 いよいよ、一人で行動するということも。
一人で電車やバスに乗っていろいろな場所へ行けるようにもなった。
 初めて一人で行ったのは高校1年のとき、天神橋筋六丁目にある天然温泉なにわの
湯というスーパー銭湯だった。
自分一人で行動できたことがうれしくて、自信が持てた。
両親も褒めてくれた。
 そして、自分にとって大きなこと。
サザンオールスターズ、B'Z、TUBEのコンサートに行って、心に電流が流れた。
生の演出や音楽に感動した。
音楽の素晴らしさを知ることができた。
何もかもいやなことを忘れられた。
心の傷になった出来事も全て忘れることができた。
コンサートのおかげで少しづつ自分の考え方が前向きになった。
自分の人生が大きく変わった。自信がついた。
生きる勇気と希望が持てた。
今まで生きてきた中で一番楽しい時間を過ごせた。
2018年2月3日のB'Zのライブのこと、ずっと忘れない。
 また、なくてはならない存在、大阪のおばあちゃんのこと。
大阪のおばあちゃん(父方)への感謝の気持ちは大きい。
「おばあちゃんがもしいてなかったら今の自分いないな。
本当におばあちゃんがいててよかったな」と母から言われる。
まさにそう、自慢のおばあちゃんだ。
例えば、自分が悩んだ時に相談にのってアドバイスをくれたり、服のコーディネート
を教えてくれたり、美味しいものを食べさせてもらったりなど何から何まで私の世話
をしてくれる。
おばあちゃんの影響で服が好きになった。
おばあちゃんはすごくおしゃれで毎週一人でデパートに行くほど元気だ。
ちなみにおばあちゃんは犬が好きでジョンとオリーブの2匹を飼っていた。
だから私はおばあちゃんのことをじょんばあと呼ぶこともある。
 さらに、大好きな鉄道旅のこと。
2020年8月7日と8日におばあちゃんと近鉄特急「しまかぜ」に乗って三重県の
賢島へ旅行に行った。
私の20歳のお祝いで連れて行ってもらった。
京都駅10時発のしまかぜに乗って、1号車展望車両の一番前の二人掛けのプレミア
ムシートに座った。
展望車両は72㎝高くしたハイデッカー構造になっている。
しかも今回は一番前の先頭車に乗ったので、運転席の大きな迫力のある窓から前方の
景色も楽しめた。
緑の山と青い海を見ながらしまかぜのオリジナル幕の内弁当を食べた。
弁当の中身は12品、かぼちゃと小芋の煮ものや焼き鮭、栗ごはんなどまるでなばな
の里のイルミネーションのように彩り豊かだった。
パッケージには、しまかぜの車両とロゴが描かれている。
宿泊はホテルベイガーデン賢島、夕方には賢島エスパーニャクルーズであご湾の島々
を巡った。
私は最上階の展望デッキで一人夕日に染まる海を眺めた。
素晴らしい20歳の夏の思い出だ。
 だけど、悩んでいることも。
私の両親はとにかくたくさんの経験を私にさせてくれた。
しかし、これだけ経験していても決していいことばかりではない。
同世代の出会いがないため、気持ちを共有できる友達も少ない。
学校を卒業してから新しい友達ができていない。
今、改めて考えると自分には友達がまったくいない。
もちろん一人旅ができることは楽しいし、自信も持てるようになった。
だけどネガティブな気持ちにもなる。
自分はずっと一人なんだと寂しくなる。
もちろんエスコートもほぼしたことがない。
したいけど出会いがない。
そんな自分に対して悔しくなるし、腹が立つ。
俺は本当に生きててよかったのか、このままでいいのかと自分に問いかけた。
最悪死にたいとさえ思ったこともあった。
みんなから喜んでもらいたい、みんなを楽しませたい。
とびっきりの笑顔を見て盛り上がっていきたい。
でも現実は、いくら頑張って手を伸ばしてもこれらの思いは届かない。
これは20年間生きてきて、いまだに解決していない大きな悩みである。
こういった悩みを持ち始めたのは、学校を卒業してからだ。
この辛くて悲しい気持ちを少しでもわかってほしい。
 だからこそ考える、何がしたいかということ。
悩んではいるけどたくさんの人に支えられてることには変わりはない。
それを幸せだと思えるし、喜びも感じている。
そんな人たちに感謝の気持ちを伝えて、いつか恩返しがしたい。 
みんなは私にとって大切な宝物だから。
 最後に、ふりかえりからの思いを自然の中の風景に例えてみる。
やっぱり大好きな海だ。
爽やかな潮風、穏やかな波の音、夕日が沈むオレンジ色のように人に癒しを与えたい

真っ青でギラギラと輝く真夏の海のように人を明るくするやさしさを持ちたい。
どんな波であろうとも乗り越えられる、そんな海のような男になりたい。
ーー
 シリーズ「心の風景」その2は海の風景でした。
今こそ前を向いて歩き出す。明るい未来が来ることを信じて。
そんな若きパッションが届きました。
来月も心の風景でご一緒しましょう。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2022年2月4日
☆どうもありがとうございました。


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