メルマガ色鉛筆第252号「シリーズ「心の風景」その1」

タイトル 「シリーズ「心の風景」その1」
メルマガ色鉛筆編集チーム
あけましておめでとうございます。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
今年もどうかよろしくお願いします。
2022年の新企画は「心の風景」です。
思うことを自然の中の風景に重ねて語られています。
お一人目のハートは森の風景です。
どんな森なのか、読みながらイメージしてみましょう。
タイトル 僕の心の中の森
ペンネーム 僕の好きな色は緑(50代 男性 全盲) 
 僕は病院の暗闇に居ました。
暴飲暴食をして体を壊しました。
腎臓も悪くなり糖尿病にもなりました。
糖尿病から目が悪くなりました。
右目は全く見えません。
左目は日によって電気がついているかどうかが分かるぐらいです。
どうしていいかわからなくなりました。
僕は絶望しました。
 ある日、訓練の先生が僕に会いに来てくれました。
見えなくても歩けるようになるとききました。
日常生活ができると教えてもらいました。
病院に光が射してきました。
 まず最初は歩行訓練から始めました。
病院の中で練習しました。
家族に送迎をしてもらって訓練施設に通所しました。
 やっと入所訓練がはじまりました。
訓練は厳しいものでした。
杖の使い方が難しかったです。
方向を判断するのも難しかったです。
寮のトイレ掃除は難しかったです。
寮の中を移動するのも苦労しました。
僕は何度も失敗をします。
僕は何度もやり直しをします。
訓練にたえぬいています。
 訓練が終わったらどこで生活をするか決めなければいけないです。
お仕事をしながら生活をするところがみつかりました。
洛西寮という施設です。僕の心に光が見えてきました。
洛西寮でどんな仕事が待っているかわからないです。
洛西寮で人間関係がうまいこといくかわからないです。
洛西寮という森にたどりつけそうです。
僕は想像をしています。
安いけどお給料がもらえます。
お仕事の先生と仲良くなりたいです。
寮で友達を作りたいです。
家族と離れて寮に行くこと、全然怖くないです。
両親がいなくなっても一人でもやっていけそうです。
僕の心の中の森に、これからは光がありそうです。
ーー
 飾らない言葉に力がありました。
視覚リハビリテーションにつながる前、リハビリ中、さらなる先へ、そこにはさまよ
いながらも光を求めて歩く森がありました。
さて、お二人目のハートはどんな風景でしょうか。
タイトル 我が歩、畑にて
ペンネーム 赤土の馬路迷子(70代 女性 弱視)
 「ええ~!ここは水田で向こうの丘に上がる途中に小さな沼があったな。
大木が生えて、田んぼ全くないやん。原生林になってるやん。」
大昔に開墾した人々の苦労を考えると複雑な思いが横切る。
 暗く寒い冬が終わると、北陸の小さな村にも春が訪れ、草木の芽や地中の虫たちも
むずむずと顔を出し始める。
春休みには 母を手伝いジャガイモを植えるのが年中行事だった。
「ジャガイモを切る時は、芽があるように切れや。」
「灰をまぶして、手ごに入れや。」母に手順を言われ一輪車にのせ、母と畑へ行く。
母が作っておいた畝に種芋を等間隔に置き、その後を鍬で土をかけていく。
さくっさくっととても快いリズムで誰でも簡単に出来そうだ。
やってみたが鍬は重く思うように土をかけていくことが出来ない。
梅雨の初めには白い小さな花をつけ、梅雨の終わりには土の中で大きく芋は育ってた

まだ小学生の子供だったけれど、かえって芋を3、4株掘り起こしふかしておやつに
食べた。 
豊かな時だった。
かぼちゃ、西瓜、とうもろこし、トマト。
取れる野菜はおやつにもなり、優しい甘さはお腹をそっと満たしてくれた。
 5月には、田植えが始まり、夜はカエルのコロコロ鳴く声、タニシの鳴く声が子守
歌になった。
田んぼや畑、そして様々な小さな生き物の息吹を季節ごとに感じて育った。
 唐突にも思えた減反政策で、田んぼはあっという間に原生林化し、「コメを作って
も飯食えん」時代になり、農業の担い手はなくなった。
辛うじて母が家の近くの畑一枚で季節の作物を育て、それは喜びとなっていた。
ジャガイモ、玉ねぎ、西瓜、梅干、サツマイモを箱に詰めて送ってくれた母。
歳を取り、病を得、畑も作れなくなった母。
実家の畑は完璧な藪となりはてた。
 2、3年後、実家の近くに住む妹が他の場所の農地を母から借り受け、野菜を育て
始めた。
春、夏に田舎に帰ると「姉ちゃん、畑でキュウリやナスできてるし取りに行こう。」
「ジャガイモできたし堀りに来んか?」
「このアイコというミニトマトおいしいで。」
「ズッキーニ食べてみ、私好きなんや。」
大きく育ったみずみずしいしいたけ、朝取りしすぐゆでた筍、茄子、胡瓜、西瓜とで
きた野菜を送ってくれる妹。
「ねえちゃん、畑に来て野菜の世話をしている時が一番気持ちがいいわ。リラックス
できるんや。」
「帰りには、温泉によって一風呂を浴びるのがささやかな楽しみ。」
世話をすればするほど、実りとなって充実感、満足感を与えてくれる。
日照りや長雨や気温に左右され、自分の思い描いたようにいかない事もある。
でも、作物を育てる苦労とその恵みで癒される。
 いずれは妹も年老いて、野菜を作れなくなるかもしれない。
そんな日が来ても、これまで畑や田んぼの移ろいを見てきたこと、食べてきた事は宝
だ。
一寸先は闇、畑や田んぼは 原生林になるか 手入れされた農地になるかは分からな
い。
満天の星の夜空が白み、田や畑に朝日のまばゆい光が射し始めると変わりないような
日常と自然の営みが生きている素晴らしさを教えてくれる。
 土にまみれ土の恵とともにいて久しい。
畑や田んぼと人の営みも同じなのかもしれない。
一寸先は闇、原生林にするか、手入れされた農地にするか。
畑眺め、我が歩に思う。
さて、よっこいしょ。
ーー
 お野菜を育てる、食べる、その豊かさの中に人の歩みとは何だろう、そんな投げか
けがありました。
それを畑の風景の中でご一緒できました。
 シリーズ「心の風景」がスタートしました。
例えば、まるで砂漠に一人いて、強風に吹き飛ばされそうとか灼熱の太陽で全身がヒ
リヒリ、目も痛くて開けられないとか薄い氷が張った湖の上に落っこちたみたいとか
怖い、つらい、不安という気持ちをダイレクトではない形で伝えることもありますよ
ね。
今回、この気持ちはこんな感じっていうことを、自然の風景で描いてもらいました。
何を描くか、どう描くか、ファーストインスピレーションで浮かぶのはこれ、それを
そのまま書いてもらいました。
 今回は森と畑が出てきました。
次回はどんな風景で「この気持ち」が語られるでしょうか。
来月も色鉛筆で心の風景の中をご一緒しましょう。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2022年1月7日
☆どうもありがとうございました。


現在、シンプルな表示の白黒反転画面になっています。上部の配色変更 ボタンで一般的な表示に切り換えることができます。


サイトポリシー | 個人情報保護方針 | サイトマップ | お問合せ | アクセシビリティ方針 | 管理者ログイン