メルマガ色鉛筆第163号「見えない・見えにくいとレクリエーションはどうなるか?」
タイトル 見えない・見えにくいとレクリエーションはどうなるか?
メルマガ色鉛筆編集チーム
レポートの要旨です。
視覚障害者のレクリエーションを実践し考える企画の参加レポートです。
散策 水景園、しりとりと連想ゲーム、温泉、食事をレクしよう、あらためて自己紹介のパーソナルクイズ、この部屋は鉄トーク、
空の下、ローンボウルズというゲーム、レクリエーションについて語り合おう、みんなでがんがんに歌う、ことばのアルバム作り、をご案内します。
ここから本文です。
6月1日午前11時前、JR祝園(ほうその)駅に白い杖を持った人や手引きをする人がわらわらと集まってきています。
これから、20~40代の当事者の会「きららの会」、
京都を中心に見えない・見えにくいお出かけを応援する「天使の杖でおいでやす」、
業界の学術団体「視覚リハ協会余暇分科会」、
そして当事者の声をみなさんのパソコンやスマホに届ける「メルマガ色鉛筆」の合同! スペシャル! レクリエーション! 実験! 企画! 「大人の修学旅行」が始まるのでした。
私も全盲、見えない当事者としてその中に参加させてもらうことに。
果たしてどんなことになるのか、どんなふうに楽しめるのか、わが身をなりゆきに任せてみようと思います。
レクその1 散策 水景園
天使の杖でおいでやすのホームページには、たくさんのお出かけレポートがあります。
レポートは、見えない・見えにくい人に配慮をした案内もしてくれています。
その1つ「水音から広がる風景 けいはんな記念公園 水景園」を頼りに、小グループで散策をします。
大きな池、噴水、紅葉などの木々や季節の花、えさをねだる鯉や亀。
見えている人と話しながらゆっくり歩いていきます。
見えていたらきれいだろうなぁ。
水に囲まれて心地よい場所だなぁ。
この場所に自分もなじんでいたいなぁ。
のんびり散策するおだやかな気分が楽しむポイントかもなぁ。
そして、仲間がレポートしてくれた所にみんなが行ったことで、互いに体験談を話せます。
それがジグソーパズルのピースとなり、心の中の風景がだんだんと充実していきます。
レクその2 しりとりと連想ゲーム
内容てんこ盛りの企画、私たちは電車に乗って次の目的地へ。
各駅停車のすいている車内を有効活用し、移動中もレクを実施する時間になっていました。
まずはしりとり。
ゆるく楽しむのかと思ったら体育会系、なんとタイムトライアル競技だと。
10分間で何個続けられるかを競います。
すっと出せればよいけれど、いったんつまると早く早くと気持ちばかりあせります。
優勝チームの記録は150。
平均4秒に1個、もし1個に7秒かかったら、別のどこかで2個を2.5秒で答えて実現する個数です。
続いて連想ゲーム。
「おみず」の1語からあれやこれやたくさん連想し、いくつかを選び出します。
実はこれが途中参加組へのクイズになる、という凝った仕組みになっています。
出てきた「海」「化粧」などの連想語を聞いて、途中参加組のみなさんにもとの1語を考えて当ててもらいます。
みんな、やわらか頭フル回転。
レクその3 温泉
電車は神戸・三宮駅に到着。
途中参加組も合流して1台のマイクロバスにぎっしり乗り込んで、温泉・宿泊施設の「しあわせの村」に向かいます。
都会の雑踏の中の移動、ご苦労さまでした。
バスでは確認事項と自己紹介、ご苦労さまでした。
温泉は多くの場合、大浴場です。
見えない・見えにくいと大浴場は困難な場所です。
今回は見えている仲間のサポートで入ります。
「すっ裸でおっさんが電車ごっこみたいにつながっておふろ入る。
こんな経験はめったにない」とは、そのお1人の感想です。
これをとても変な姿に感じるでしょうか。
そうなら抵抗がありますが、乗り越えるとどうなるか。
心も温まる姿に感じることだってあると思います。
そうやって入った温泉! 気持ちいい、いい気分。
調子に乗って泡のジェットのほうに行ったり、深そうなほうに行ったり。
レクその4 食事をレクしよう
見えないとおいしくない? ほんとにそうかな?
サポートが受けられない、それって楽しくないことなの?
バリアバリューに手をのばそう。
食事の時間は、見えない・見えにくいことを逆手にとって、
「これ何だろう? うーん、わからんけど、ぷよぷよしてる。
あ、お刺身だ。
こっちは、おお、豚の角煮」などと探検しながら、それを同じテーブルの人に伝えていきます。
ちょっと見えている人にはあえて目を閉じて食べてもらいます。
「うわー、これきびしいっすね。
天ぷら、食べれました」。
「おめでとう」。
しかし、落っことしたり、わけわかんなくなったり、苦労もあるものです。
苦労まで楽しめたら、あなたは黒帯障害者。
ごちそうの数々に、好きな人はお酒もつけて。
ともあれ、食べることは、楽しむジャンルの大きな1ジャンルです。
(バックナンバー 第92号「食べる視覚障害者」もお読みください)
レクその5 あらためて自己紹介のパーソナルクイズ
温泉も食事も終わり、次のお楽しみは引き続きお酒ありの夜の部です。
会場の部屋に集合し、わいわいがやがや。
今回の旅行は30人をこえる参加者で、すでによく知っている友人もいれば初対面の人もいます。
そんなメンバーが楽しい時間を過ごすのに、各自が自分を知ってもらうクイズを持ち寄ること、という宿題が出ていました。
「私が最近したことは、①バスケの観戦 ②ボルダリング ③プリン作り ④祇園で舞妓さん遊び、1つうそです。
どれでしょう?」。
「私が欠かさず見ているテレビは何? ①ミスターサンデー ②世界不思議発見 ③ちびまる子ちゃんとサザエさん ④秘密のケンミンショー」。
「昔、ダンスをしていました。
次のどれでしょう? ①社交ダンス ②ジャズダンス ③ブレイクダンス ④タップダンス ⑤洋服だんす」。
「プロ野球選手の応援ソング、今から歌うのは誰のでしょうか?」。
個性的な質問がいっぱい出てきます。
いろんな人どうしがつながれるには、どうしたらよいだろう?
きららの会の蓄積したノウハウがあって、こんな企画が生まれてくるのだと実感します。
こうして1日目予定を無事に終了。
レクその6 この部屋は鉄トーク
宿の部屋は3~4人ずつに分かれます。
その1つが「鉄チーム」でした。
この部屋では、きっと鉄道愛に満ち満ちた話に花が咲いたことと思います。
趣味でつながる、というのは、いろんな意味で遠い所の人どうしでもつながれるのがよいですね。
私の部屋では、期待の若手歌手、かしわもちかずと君のことや、福井県の盲学校生の様子を教えてもらえてよかったです。
それぞれのお部屋でどんな話に花が咲いたかな。
レクその7 空の下、ローンボウルズというゲーム
6月2日、午前は外にくり出します。
空の下、芝生のグランドにやってきました。
グループに分かれてローンボウルズという、ボウリングとカーリングをミックスしたような、
さらに変な形のボールを用いる、というゲームをしました。
「ここが目標ですよーリンリン」という声やタンバリンを頼りに、方向と距離を考えてボールを転がします。
左右にそれたり、途中で止まったり、先に投げた人のボールに衝突したりしながら、目標にもっとも近い人が勝利です。
うーん、難しいなぁ、ぼろんちょだ、と思っていたら、ボールの持ち方ときれいな姿勢をさとったお1人が後半は連勝です。
感心しました。
お隣のグループは、何やら別の盛り上がり方をしている様子。
独自ルールやいろいろな工夫で楽しみの可能性は広がるようです。
アウトドア、空の下、体を動かすことを、自分のレクリエーションの選択肢、カードの1枚にできたらいいなぁと思いました。
レクその8 レクリエーションについて語ろう
見えない・見えにくいことは、レクリエーションにも大きく影響します。
苦労をした話。
方法を見出してやってみた話。
統合教育、配慮なしでは楽しめず、レクリエーションがにがい思い出になっている、といった意見も。
見えている参加者さんからは、サポートする立場から思うこと、そばで見ていて思うことを。
役に立っているのか、立たねば、力を抜いていっしょに楽しめばいいんだ、といった声を聞けました。
「クルマを運転する催しに明日から行きます」というきららメンバーさん。
「ハワイで飛行機を操縦できると聞いた。
いつかは」という視覚障害リハ協会会長さん。
それを聞いて、うんうんとうなずく自分と斜め下に目を伏せる自分と、両方います。
すると、心の中、いろいろなことがぐりぐり動き出して、
「楽しみは用意してもらって与えてもらうのでなく、自分事として自分から行動する」ということが中心に存在するのか、とわかった感じがしました。
レクその9 みんなでがんがんに歌う
予定を次々、もうおなかいっぱいの私たちは、三宮駅に向かうマイクロバスに乗り込んで出発します。
それでも予定はまだあって、次のことをやります。
ぐるたみん「Yell for(エールフォー)」をみんなで歌います。
大きな声で歌うのは楽しい。
それをみんなでがんがんに歌ったら、もっと楽しくなる。
(この曲はユーチューブで聞けます。
なぜか私たちのことを歌ってくれています))
レクその10 ことばのアルバム作り
こうして2日間におよぶレクリエーション企画は解散となりました。
「今回のレク、ずばり一言で「●●」と素敵なキャッチフレーズをつけて、メールしてね」。
キャッチフレーズを作って、ことばのアルバムとしてみんなで共有する、というのが最後のレクリエーションです。
★超高濃度未確認旅行物体(取り扱い注意)
★停車時間0 途中下車禁止 ジェットコースターで行く1泊2日 大人の修学旅行
★レク、いつまで続くの? あきらめずにできることからやろう
★旅も食事もファーストインプレッションから始めよう~感じる楽しみは無限大★見えない側、見える側、ともに垣根を飛び越えて
★つないだ手と目 見えない心はいつしかラフに寄り添って
ふり返って思います。
今回の「大人の修学旅行」は、楽しむことを修得する「大人の修楽旅行」でした。
楽しみ方は人それぞれ。
じょうずな人ほど楽しめない自分も、その自分で楽しもうとするところから事は始まる。
そんな自分でいろんな人ともからみながら、ぼちぼちやっていこう。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2019年7月26日
☆どうもありがとうございました。