メルマガ色鉛筆第127号「人生ため息いろいろ」
タイトル 「人生ため息いろいろ」
メルマガ色鉛筆編集チーム
「人生、いつもため息まじり」、どこかで聞いたようなセリフです。
今回は、ため息をテーマに語ってもらいました。
人生いろいろ、ため息いろいろ、小さなおまじないも添えてお届けします。
お1人目は、京都で歩行訓練を受けられた方のレポートです。
タイトル 「いつかのため息」
ペンネーム 銀色暗号(60代 女性 弱視)
歩行訓練で、やっと鳥居寮までの往復に合格が出た。
この日は真夏日を思わせるほどの暑さだったことと、緊張がとけたことがあいまって、
大きなため息が出てしまった。
ひと休みしたあと、千本北大路の横断歩道を初めて1人で渡ることになった。
エスコートゾーン(視覚障害者誘導用道路横断帯)に沿って渡る。
横断歩道中央部に道路全幅にわたって突起体がある。
この丸いぷツぷツした触覚があるから、いくぶん安全だ。
それでも、こんな大きな交差点を1人で渡るのはずいぶん久しぶりな気がした。
先生に指示されながらライトハウスまで戻ってきたら、やっぱり大きく息をはいた。
見えにくくなって、1人で朝の通勤をするのが徐々につらくなってきた。
その頃はまだフルタイムで働いていた。
なんとか人に頼らなくてもすむ方法を考え、自分なりに工夫していた。
現状を維持させるためにどうにかできる方法を模索していた。
だいたいの日は夫に送ってもらうのだが、月に何日かは1人で行かなければならなかった。
バス停まで10分近く歩いて、バスで堀川通を北上して、
北大路堀川で東方面行きのバスに乗り換える。
どうにも移動が難しくて、北大路堀川での乗り換えは断念せざるを得なかった。
そこで、一つ西側の大徳寺前で乗り換えることにした。
そこは、バスを降りたらすぐに音の出る信号機がある。
その横断歩道を渡ると、すぐそばに東方面に向かう205番や206番のバス停がある。
この方法の難点は一つ、北大路堀川で左折する12番のバスだけに乗らなければいけないことだ。
堀川通でいちばん本数の多い9番を避けて乗るために、
ケータイにポケロケのお知らせ機能まで設定して乗車するようにしていた。
人通りが少しでも少ないうちにと7時半には家を出て、8時15分頃には職場に到着した。
笑われるかもしれないが、無事職場に到着したら、1日の仕事はこれでOK!って感じだった。
ロッカーの鍵を開けると、ごった煮になった感情が流れ出た。
緊張や気苦労や安堵から解放され、自分の状況へのいら立ちが混じり合う。
職場にたどり着くだけでこんなにも必死にならなきゃならない自分、
いろんな感情がうず巻き、いつも深いため息をついていたものだった。
あれからずいぶん時間がたった気もする。
でもまだ数年、あの頃の自分といつかのため息を懐かしく思う。
銀色暗号さん、いつかと今、それぞれのため息にそれぞれの色がありましたね。
お2人目は、鮮やかなため息シーンを描かれました。
タイトル 「桃色吐息」
ペンネーム 黄色い手帳(50代 女性 全盲)
「もう頬づえはつかない」、昔、こんな題名の映画を名画座で見た記憶がある。
主演は桃井かおり。
他の共演者、すべて不明。
まだデビュー間もない桃井さんは今と変わらぬ舌足らずな話し方で、
長い髪をかき上げるしぐさが似合う人だった。
頬づえをつき、だるそうにタバコをくゆらせていた。
そして、ため息まじりのけむりをはき出すのである。
このシーンがやたら多い映画だった。
それが色っぽい。
そう!、ホンマ色っぽい。
「桃色吐息」という歌があるが、私は桃井かおりさんのため息こそこの言葉そのものだと思っている。
この映画、プラトニックな男友達と見に行ったから、さあ大変!
内容もすごいから…。
スクリーンを見ていられなくて、彼の顔も見られなくて。
映画館を出てもお互い気まずく、ほとんどしゃべらなかった。
それから、うん、10年。
ため息の似合う女になりそこねた私は、ため息だけはたくさんついているらしい。
ガックリ(ため息)。
黄色い手帳さん、リズミカルでユーモアのあるため息エピソードでした。
ラストは、しょんぼりなため息が出たらどうする?というご提案です。
タイトル 「幸せが逃げていかないように」
ペンネーム アメーラ(50代 女性 弱視)
はーっ しんど
はーっ どうしよう
はーっ どうしようもない
はーっ どうにかならない
はーっ どうにもならない
はーっ どうにでもなれ
あっ そうだ
はーっ よかったぁ
何はともあれ、最後はこれ言わなきゃ。
アメーラさん、おまじないエピソード、ありがとうございました。
3人の個性的なため息物語、どうでしたか?
いろんなタイプのため息がありました。
また一つのテーマを切り口に、カラフルにレポートをお届けしたいと思います。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2018年7月27日
☆どうもありがとうございました。