メルマガ色鉛筆第103号「お茶物語」
タイトル 「お茶物語」
メルマガ色鉛筆編集チーム
お茶をテーマに、言葉の4コマ紙芝居にトライしてみました。
見えない・見えにくいライターさん4名のそれぞれのお茶物語です。
4コマそれぞれの情景をイメージしながらお楽しみください。
それでは、はじまりはじまり!
日本茶は静岡や宇治が有名。
お茶の葉はおいしい空気を吸って食卓に上る準備をします。
若葉が目にやさしい、そんな新緑さんの一作です。
「お茶畑の絶景を求めて」
ペンネーム 新緑(50代 女性 弱視)
4月中旬のある日、新緑の景色を見たいとするならどこがいいかと思案する。
「そうだ!、お茶畑を見に行きたい!」。
部屋の中で、テーブルの席に座る初老の女。
女の頭からの吹き出しには以前に見たお茶畑の風景が広がっている。
モコモコのお茶の木がきれいに整列してなだらかな丘の上まで続いて、その広さ
に圧倒される。
さっそく京都南部のお茶畑を見ようとドライブする。
お茶畑の間の道路を走る車の助手席は先ほどの女。
運転席は男。
和束町を通ると、車窓から見える道路の両側は右も左もお茶畑。
山を切りくずしてできるかぎりお茶畑にした感じである。
新緑の中にところどころ咲く桜の白さが際立って、とてもきれい。
どうしたことでしょう?
それまで順調だったドライブが、南山城村に入ると急に車が増えて前に進まない。
原因は、「お茶の京都みなみやましろ村」のオープン初日だったから。
緑の山間に伸びる道路に渋滞する車の列。
黒っぽい屋根の平屋、駐車場の敷地と道路の間にピンクのノボリが数本はためき、
誘導員が立っている。
数キロ先の臨時駐車場から送迎バスで道の駅に向かい、
1杯300円で提供されるお茶を飲んだ。
やれやれ、天気のよい日にお茶畑の景色が満喫できてよかったな。
再び自宅の居間でくつろぐ初老の女。
道の駅で買ってきたお茶を飲みながらまたもや妄想する。
「願わくば、少しでも見えるうちにあのスリランカの広大な紅茶畑を走る鉄道に乗り、
ヌワラエリヤの絶景を見てみたい」。
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そんなお茶は、お茶っぱやペットボトルのお茶になって市場に出回ります。
冷蔵庫に飲み残しのペットボトルを置いておく場合は、直接飲まずに、コップに
注いで飲むようにしましょうね。
冷蔵庫で独りぼっちになって忘れられても大丈夫。
アルコールばかりじゃなくて、水分はこまめに。
麦茶より麦酒さんの冷蔵庫をのぞいてみましょう。
「forget-me-not」
ペンネーム 麦茶より麦酒(40代 女性 弱視)
「しばらくの間、よろしくね!」。
冷蔵庫のドアポケットに仲間入りしたお茶君。
半分飲みかけたお茶のペットボトル。
右隣は牛乳、左隣は赤ワイン、その隣は醤油。
ハレの日の追想。
いつもよりちょっとリッチな給食とともにテーブルに置かれたお茶。
笑顔で食事をとりながらお茶に手を伸ばす女性(麦茶より麦酒)。
4月某日、とある年度はじめのセレモニーにて。
1週間後、最初と全く同じ位置、同じ量を保ったお茶君。
隣の牛乳は賞味期限の日付が変わり、ワインは3分の1に、醤油も少し減っている。
思いがけない長居に居心地悪そうなお茶君、少し涙目。
1か月後、最初と全く同じ位置、同じ量を保ったお茶君。
もう何回入れ替わったかわからない牛乳、ワインがいた場所は現在空席、醤油は
また少し減っている。
ぼくは完全に忘れられている・・・。
扉が開くたびに「もしかしたら」と淡く期待し、そして失望した日々すらもう遠
い。
誰か、ぼくがここに存在する意味を教えて・・・。
※この物語はフィクションです、たぶん。
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麦茶より麦酒さんの家にある(かもしれない)飲みさしのお茶でも、
力強く人助けができるのか聞いてみたいです。
彼には一番いいお茶のペットボトルを渡してあげたい。
そう思わせる白茶さんの力作です。
「白杖戦隊茶レンジャー1号、見参の巻」
ペンネーム 白茶(40代 男性 弱視)
「助けてー」
巫女さんがショッカーの怪人みたいな人に襲われている。
場所は大原野神社の境内。
絵の右端で、白茶氏が驚いた顔でそれを見ている。
「白茶氏は、お茶を一気飲みすると白杖戦隊茶レンジャー1号に変身できるのだ」
白茶氏が、左手を腰にあててペットボトルのお茶を一気飲みしている。
体のサイズが普段よりはるかに膨れ上がっている。
ちなみに、視力もよくなっている設定。
「必殺、ホワイトアタックーッ」
白茶氏が白杖で思いきり敵を突いて攻撃。
絵の左上にふっとぶ怪人。
右端には感謝のまなざしで見つめる巫女さん。
「悪は滅びた。さらばだ」
絵の左上の夕日に向かって走り去る白杖戦隊茶レンジャー1号。
中央には手を合わせて感謝している巫女さんの後ろ姿。
足元には怪人が転がっている。
あのー、怪人、ほっといていいんですか?
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痛快活劇の後は、しっとり落ち着いた雰囲気で。
玉露やおうすの粉は、直射日光を遮断して育てられたお茶の一番茶を手摘みして作り上げられます。
中でも最高級はおこい茶の粉でしょう。
おこい茶の茶室の1コマを切り取ってみましょう。
「お茶席でおこい茶をいただく、京でふれるわび・さびの世界」
ペンネーム 茶釜(50代 男性 光覚)
「お茶室のにじり口から入り、異空間へ」
お茶室の庭の苔は青々としていて、石畳には水が打ってあり、人を迎える準備が整っている。
ゆったりした時間と緊張した時間がまじり、お茶会の始まりを演出する。
虫の声と山草のすれる音を聞きながら異空間の世界に進む。
「こだわりの一品と日本酒が運ばれる」
亭主から正客にお酒が注がれ、会話がはずみ、笑い声も聞こえる。
おこい茶を楽しむ前の豊かな時間を演出する。
静かな空間で会話を楽しみ、食事を終えると音をたてて箸を元に戻す。
「亭主が、ここ一番の黒楽茶碗におこい茶のお点前を披露」
先ほどとは違い、緊張感を演出するような炭の起こる音。
先ほどの空間が、キャラの香りのする空間に変貌。
おこい茶は客が回し飲みして、お茶会の終焉を迎える。
水琴窟(すいきんくつ)の音が響く中、おこい茶を飲みほすズッという音がお茶会の終わりを知らせる。
「3時間ものお茶席が終了し、足のしびれを気にしながらにじり口から外へ」
にじり口から出た時に、夕焼けに暮れる先ほどと違う庭を目にし、もう少し優
雅な時間に浸りたいと思う。
お茶懐石&おこい茶となると、そうそう出会うことはない。
そんな優越感に浸っていると緊張感が緩み、包んだお金は十分だったのだろうかと心配になる。
アッ!、ガタガタ、ゴツン。
にじり口から垂直落下、着物姿で真っ逆さま。
周りの客は驚きながらも、笑いをかみ殺すのに必死、なかなか助けてくれない。
慣れないことをする時は気をつけよう!
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わび・さび感じる水琴窟の音色もつかの間、
まったり楽しむお茶を思わず口から吹き出してしまいそうな茶釜さんの一作、
アンカーだけに「いい落ち」でしたね。
お茶という一つのテーマで自由に紙芝居を描いてもらいました。
4名のライターさん、それぞれが1コマ1コマを具体的に目に浮かべながら表現
されました。
とってもカラフルな物語たち、ちょっと一服のお伴にいかがですか?
言葉で描く紙芝居、また別のテーマでご一緒したいと思います。
では、今日はこのへんで。
おしまいおしまい。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2017年9月22日
☆どうもありがとうございました。