メルマガ色鉛筆第91号「手紙「10年前の私へ 10年後の私へ」 その1
タイトル 「手紙「10年前の私へ 10年後の私へ」 その1
メルマガ色鉛筆編集チーム
こんにちは、メルマガ色鉛筆編集チームです。
皆さんは自分に手紙を書いたことがありますか?
卒業の記念にタイムカプセルに手紙を入れたことがあるなんて人もおられるかも
しれません。
手紙ではないけれど、大切なものを封印してどこかに入れたという人もおられる
でしょう。
歳月が流れて、それを手にした時の自分のことをうっすらと思いながら、
ただひたすらに今の自分を見つめて書く手紙です。
10年前の自分、10年後の自分に言葉をかけてみよう。
手紙という形を通して自分に語りかけてみよう。
・・・それはとてもつらいことだったり、時には怖くなったり、呵責の念におそ
われたり、
自分に語るどころか、思っただけで逃げ出したくなる体験かもしれません。
にもかかわらず、ここには頑張ってふりしぼった思いが綴られています。
今回は、自分の命への慈しみが込められた言葉、生きる意志が込められた言葉
たちをお届けします。
★ペンネーム レモンイエロー(70代 女性 弱視)
「10年前の私へ」
61歳の私、定年退職後1年余。
仕事は50歳まで!、あとは遊んで暮らしたい!なんて言ってた私なのに、
再任用という形で職場に残り、しかも生き生きニコニコと日を送っていましたね。
定年退職後ということで、60歳まで負っていた責任より気分が軽くなったこと、
職場の人間関係がとても良かったこと、新しく作っていく仕事の内容が私に合っていたこと、
そして私生活面でもとても平穏であったこと、こんないい条件の重なり合った時だったのですね。
そんないい時代だったのに、その時、それにあまり気付いていなかったのがもったいなかったですね。
人はその時その時に必死で生きていて、その状況やそのことの持つ意味などあまりわかっておらず、
後になってから気付くものなのかもしれません。
仕事が現役ではなく、再任用の立場になり、同じように忙しく働いているつもりでも、
きっと表情にも雰囲気にもゆとりがあったのでしょう。
気が付けば、30代、40代の女性たちが仕事のこと、家族のことなど悩みの相談によくやってきていました。
私は聞いてあげる役。
彼女たちはいっぱい話して、結論も自分で出して、すっきりして帰っていくのです。
そんなことが何度あったことでしょう。
現役の頃にはそんな時間はもったいなくてとれなかった。
でも、再任用になってからは相手の気がすむまで聞いてあげていたよね。
今、その人たちは仕事も人生も生き生きと進んでいて、
時々電話やメールで「何かお手伝いすることがあったら言ってください」と、優しい気持ちをくれるのです。
10年前が今につながっている、彼女たちの言葉には元気が出る薬みたいな力があるのです。
また、仕事や介護で忙しかった現役時代とは違い、息子とたくさんの話をすることができた時期だったのです。
息子の仕事上の悩みを、聞き役に徹して聞いたものでした。
あの頃の言葉を通しての心のつながりが、今の私を支えてくれているような気がします。
「10年前の私」に今気付いた私は、10年前があるから今があると思えてきました。
そう思えることで、少し元気も出てきた感じがするのです。
10年前の私、ありがとう!
「10年後の私へ」
元気にしていますか?
目の具合はどうでしょう?
食事はちゃんと作っていますか?
今も1人で暮らしているのですか?
いとこのお姉さんが「人生を考える時、60代までは5年単位の計画、70代になるとそれが3年になり、
80代になると1年ごとの計画になっちゃうんだからね!」とおっしゃっていたのを思い出しています。
そんなものですか?
いろんな場面、いろんなことに出会いながら、そしていろんな人たちに助けてもらいながら、
ゆっくりボツボツと暮らしてるのかしら?
とはいっても、見えなくなっていく中での料理は難しいでしょうね。
人に食べてもらうのが好きだったのに、ひょっとしたら今は作ってもらっているのでしょうか?
自立して暮らしたいと言っていたけれど、
送られてくるたくさんの書類の整理、季節ごとの衣類の出し入れ、トイレやお風呂の掃除などなど、
生活の中にはすることがいっぱい!
人に頼れる心のやわらかさがいるのでしょうね。
そうなれるよう、今から努力しておきましょう。
仲良しだったあの人この人、今も仲良くしてますか?
人は、人とふれあいながら暮らすから楽しいの。
家族もお友だちも大切にね!
そして、笑顔と「ありがとう」も忘れないでね!
★ペンネーム シルバーのうつわ(40代 男性 弱視)
「10年前の自分へ」
その時はまだ両目は見えていたはずでも、その後に中心が剥がれていることさえ気付かずにいましたね。
もっと気をつけていれば視覚もあり、普通に読書も漫画なども楽しめたかな。
全くの不意打ちに「剥がれてますね」ってあっさりと言われるとショックも大きかっただろうけれど、
家のことを心配してたね。
それを少しでも自分に向けられたら良かったかもね。
でも、今は今で、障害を持っても楽しいことがあるとわかって良かったよ。
自分がなってみて初めてわかることがたくさんあり、新鮮な気持ちで楽しんでいますよ。
後悔はしたかもしれないけど、これがなければ点字や音声パソコンに出会えてなかったね。
今を楽しむことができるようになれたことで自分の幅が広がって、器が少し大きくなれたかな?
最後に言えるのは、後悔はあったけど、今を充実できている自分が好きだよ。
だから一言、「ありがとう。今の自分に会わせてくれて本当にありがとう」。
「10年後の自分へ」
10年後はきっとあんま・マッサージ・指圧の仕事について、もう慣れてきましたかね。
患者さんとちゃんと会話できてる?
ちゃんと仕事をこなせているかな?
それが一番心配だよ。
少しは成長してることを願っている次第です。
でも、訓練での経験や自分なりの個性が少しずつでも出せればなんとかやっていけるはず。
だから、自信を持ってやっていてくれればうれしいかな。
今の自分も頑張っていくから、10年後の自分ももっと頑張れ。
きっとまた新しい自分に会えるはずですよ。
だから、お互いに精進しましょうね。
編集後記
1回きりの生涯。
その10年前と今、10年後を思うこと、考えることは大きな流れをとらえる取
り組みでもあります。
いつもの日常生活の中で小さな1つ1つのことをこなしていくことと、
それが長い年月をかけて積み重なって大きな流れになっていくこと。
小さな1つ1つのことが大きな流れにつながっている実感を、
レモンイエローさん、シルバーのうつわさん、それぞれの文章の中に感じます。
レモンイエローさん、シルバーのうつわさん、そして私たちも、
小さな1つ1つはときとしてたいへんだったりもしますが、
それを積み重ねてよい流れをつくっていきたいですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2017年4月7日
☆どうもありがとうございました。