メルマガ色鉛筆第60号「ほんのりあったか外出エピソード2」
タイトル ほんのりあったか外出エピソード2
メルマガ色鉛筆編集チームです。
外出エピソード第2弾は一人旅編です。
新幹線にて
京都から福島まで新幹線を乗り継いで一人旅をしました。
全盲の私にはかなりの勇気が必要でした。
何か事が起こって新幹線が止まるかもしれない。
福島原発の近くに行くので、一人っきりというのは恐々でした。
サポートしてくださる駅員さんに「有事の時はどうなりますか?」と尋ねました。
すると、駅員さんは「新幹線16両乗客千何人に対して車掌は4人ですから、
手が回らんということもあるかもしれません。
その時には隣り合わせたお客さんたち同士で助け合ってもらうしかありません。
昔は同じボックスになったらおみかんの一つもあげたりもらったりしたものです。
「では、行ってらっしゃい。良い旅を」と言われました。
そして、新幹線の乗車口で私を車内の車掌さんにバトンタッチしてくれました。
こうして旅は始まりました。
席に着く前にまずはトイレの場所とその構造を車掌さんに教えてもらいました。
私の席はトイレからかなり離れていたため、一人で行くことは困難でした。
車掌さんは「通るたびに声をかけますから、必要があれば言ってください。同行いたします」と言われ、
東京までに3度もお声をかけていただきました。
東京に着く前にお世話になり、まずは京都・東京間は無事に終わりました。
駅員さんのサポートで東北新幹線の乗り換えはスムーズでした。
車掌さんの素晴らしいサポートがあるものと安心して、
東北新幹線ではトイレの場所と構造の確認はお願いしませんでした。
隣の席の方が私の見えないことを察知して、
すぐに「何かお手伝いすることがあれば言ってください」とお声をかけてくださいました。
すっかり気を良くした私は、「どちらまで行かれますか?」と声をかけました。
「仙台の友達のところに遊びに行きます。久々の旅行です」、
一人旅をするうら若い落ち着いた女性の声でした。
私たちは、思いのほかいろいろ互いのことを話しました。
見えない私になんのこだわりもなく接してくださるので、どんな仕事をされているのか興味がわいてきました。
尋ねてみると、私の姪と同じような仕事をされているということで、更に話ははずみました。
美容のこと、ヨーガや発声のことなど…。
「もう9年も付き合っている人がいるのですが、結婚の決め手は何?」と彼女に尋ねられたので、
「自分が自由でいられることかな?あなたは自由にさせてもらってるように見えますよ」と私は答えました。
東京から福島までの1時間半はアッという間に過ぎました。
ところが、降りる時に車掌さんは現れませんでした。
彼女が私を降り口まで送ってくれました。
別れ際に、彼女は私に「黄色がお似合いですね」と言ってくれました。
私も彼女の服の色を尋ねてみました。
「水色です」と彼女は答えてくれました。
よほどお名前を伺いたいほどの気持ちになったけれど、お互いに名乗らずに別れました。
ハイウェイバスにて
ハイウェイバスで、隣の方にトイレまでの介助をお願いしたことがありました。
「こんにちは。大事な白杖はここに入れられたら」と隣席の方に第一声をいただいていたので、
勇気を出してトイレの介助願いができたのでした。
その介助のなんとスマートだったことか。
お聞きすると、「看護師さん」ということでした。
ローカル線にて
「今までありました車内でのお弁当の販売がなくなっていますので、駅弁を買ってご乗車ください」。
その車内アナウンスを聞いてあわてた私に、
お隣のおじさんが「一緒にお弁当を買いに行きましょう」と言ってくださり、
おいしい駅弁にありつけました。
全盲の一人旅は勇気がいりますが、いろいろな出会いが与えられるようで意外とおもしろいものです。
旅は道連れ・世は情け、神様と旅の出会いに心からの感謝です。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2016年2月5日
☆どうもありがとうございました。