メルマガ色鉛筆第54号「働く私 両立ドタバタ奮闘中」

タイトル 働く私「両立ドタバタ奮闘中」
ペンネーム 赤バッジと緑バッジ(30代 女性 弱視)
 レポートの要旨です。
 我が家は夫、5歳の息子と2歳の娘、私の4人家族です。
現在、私は家事、育児、仕事をしながら、
京都ライトハウス鳥居寮に通所して音声パソコンの訓練を受けています。
仕事は週3日、高齢者介護施設のデイサービス部門で介護職をしています。
拘束時間は10時間、実働7時間、休憩1時間、通勤は片道1時間です。
そんな私の両立ドタバタについてお話します。
 ここから本文です。
 私は短大を卒業後、高齢者介護の仕事に就きました。
この仕事を始めて早10数年が経とうとしています。
 出産を機に一度退職し、3年半のブランクで復帰しました。
ブランクの間に障害者手帳を持ちました。
職場復帰後は、携わる業務が限定されているため、自分の思い描く業務とは異なっています。
周りができると考える業務が見えにくいことで困難だったり、
周りができないと考える業務が経験や工夫で無理なくできたりで、
理解を得ながら自分のできる業務を確立するまでには時間がかかりそうです。
家事、育児、訓練との両立もあり、
仕事中心の生活にならないように週3日の出勤にしています。
 働く上で日頃私が心がけていることは、
職場のスタッフとのコミュニケーションを"自分から"とることです。
その中で業務上や生活での工夫を伝えていければと思っています。
「見えにくいってそういうことなんだ」ってことをさりげなく啓発して、
仕事上での理解につなげたいとも思います。
 働く私とはいうものの、一番の仕事は家事と育児です。
当然ながら、こちらは職場に行く時以外は年中無休のフルタイムです。
 私の得意な家事は料理と洗濯です。
料理は見ることだけに頼らず、味見や香りでできているかの確認をしています。
あとは、できるだけ包丁で皮むきやみじん切りなどをしています、
調理器具をたくさん使うと片付けが増えるので。
洗濯では靴下がよく迷子になるので、洗濯ネットに入れて洗い、干す時は足数を数えています。
 買い物は、苦手というより疲れます。
食料品、日用品、衣服など全般に苦手で、
とにかく目当てのものを探すこと、値段を確認することに一苦労です。
 よくあるずっこけは飲み物間違いで、
炭酸水と思ったら天然水だったり、発泡酒と思ったらノンアルコールだったりと、
主人の溜息が聞こえます。
日用品の詰め替え用も種類が豊富すぎて大変です。
値段が見えないまま予測だけで買い物かごに入れていっては、
レジで背中に汗をかきながら店員さんの声に耳をすませています。
 子育ては楽しく、緊張感満載です。
現在、子どもは2人とも幼稚園に通っています。
4年保育を行っている幼稚園で、上の子は年中クラス、下の子は2歳~3歳クラスです。
仕事の日は、夫か祖父母にバス停までの送り迎えと朝夕の子守をお願いしています。
仕事以外の日は、育児は私がするようにしています。
参観日や行事、習い事など、できるかぎり私が行くようにしています。
 行政(市)で行う乳幼児健診や育児相談などは毎回困っています。
まずは、現地までの移動と会場内での移動は子どもを連れてになるので、緊張してドッと疲れます。
 もう一つは、私が視覚障害者だと伝えても、子どもの様子を見る場なので、
私は他の見えているママと同じ動きを要求されます。
いつも「お子さんのことで困ったら子ども福祉課へ、当事者のことは障害福祉課へ」と言われ、
一度に話ができないものかと思っています。
二人とも、これからも就学時前健診などがあるので、ガイドヘルパーさんを利用したり、
市の担当者に困っていることを伝えていこうと思います。
 子どもたちには、できるだけ自分のことは自分でできるように、関わるように声をかけています。
例えば、食べたら食器をさげる、脱いだ服は洗濯かごに入れるなど、マナーの習慣づけにもなりますし、
何より物を失くしたり探したりなんてことも避けられます。
そして、放置されたものによる事故防止にもなります。
 家の中では音に注意しています。
子どもたちのイタズラはほとんど音で判断できますものね。
 外出の時は、子どもたちの服は見分けのつきやすいものを選び、
柄やキャラクターなど共通のものを入れて兄妹とわかるようにしています。
 子どもと私だけの外出の時は、
子どもを見失わないように点字ブロックや車道の白線を目印として活用しています。
私が点字ブロックや白線の上を歩き、
その線を基準に「この線の左側を歩くよ」と子どもたちに声をかけます。
歩くラインを軸にして、自分の視野の中に子どもたちが入るようにしています。
 とにかく忙しい私ですが、家族の協力が得られる時には、
見えない・見えにくい同世代の仲間との交流の場、主にきららの会に参加しています。
年に数回の参加ですが、同世代ならではの話題を共有できるのでストレス発散の場になっています。
 両立ドタバタの毎日の中で「Help me!」と感じるのは、
やはり仕事でしょうか。
仕事は、障害の有無に関わらず誰もが悩みながらも頑張っているものだと思います。
だから頑張ることはできるけれど、頑張りだけでは解決しないこともあります。
社内、社外どちらでもよいので、
見えにくさを理解した上で仕事の相談にのってくれて、
会社への提案やお願いをする時のサポートもできる人がいてくれたらと思います。
 毎日ドタバタしていると、先の不安を考える余裕すらないのが現実ですが、
不安がないわけではありません。
見え方の変化の不安以外には、親のこと、仕事継続のことが頭をよぎります。
 現在は、両家の親に子守をお願いしたり私の外出に付き合ってもらったりしています。
もう少し高齢になるとお願いできなくなるかなと思っています。
 仕事継続は大きなミッションですが、子どもが成人するまでと考えるとあと20年、
正直なところ「目も心ももつだろうか」と思います。
この不安が現実になるのは何年か先のことだろうし、今は誰にも言わずに自分の心にだけとどめています。
そんな思いも、友人や当事者の集まりなどで話ができれば少しは楽になれるのかな・・・。
こういう気持ちって、やっぱりなかなか家族には言えないものですね。
 私は、将来への不安も今目の前にある課題もある中で、とりあえず今を生きるのがせいいっぱいです。
それでも、明日の自分、1年後の自分を思い描きながら生活していこうと思っています。
何も目標がなかったり、やるべきことがないとだらだらしそうですし、
何より自分が生きている意味や役割があると思いたいのです。
 視覚障害はあるけれど、
ママの子でよかったと思ってほしい、よい奥さんだなと思われたい、職場では頼りにされたい。
私ってとっても欲張りなんです。
いつもそうは思われてないだろうと不安だから、
その不安を消すためにドタバタとオーバーワークしているかもしれません。
 「障害があるんだから人より頑張って当然だ」という空気の中で私は生きているのでしょうね。
そして、今日も明日も、負けず嫌いな私はまた頑張ることを続けるのでしょう。
誰かに「頑張らなくていいよ」と言ってほしいのかどうか、私にはわかりません。
今の私は、「頑張らないと生きていけない」ときっと言い返すことでしょう。
 今のドタバタ両立生活を選択したのは私自身。
ほどよく疲れながらも楽しい毎日です。
 幼少期から今に至るまで徐々に見えにくくなっていますが、
まだ見えているという気持ちのほうが強く、見えているふりをすることもよくあります。
そんな中、私は子どもを授かったことで考えを変えることができました。
1人目の子どもを産んでから、
「この子を守るために、この子にはありのままの自分を知ってほしい」と手帳を持ちました。
それをきっかけに当事者同士の集まりを知り、今につながっています。
生きることに喜びと責任を感じ、訓練を受けたり、生きていく道を探すようにもなりました。
 それまでの私は「手帳は持ちたくない。結婚なんてしない」と、
仕事だけのおもしろくない毎日を過ごしていました。
でも、何かをきっかけに生きる道に光がさすことがあるんですね。
その光を大切にして、これからも笑顔を忘れずに生きていきたいと思います。
編集後記
 頑張らないと生きていけない、それが両立の現実。
見えているふりをする頑張りと、
あるがままの私を知ってほしいという頑張り。
この二つの力が心の支えとなり、楽しい毎日につながっていくのでしょう。
ほどよく疲れながらも、母は強しですね。
 仕事、子育て、家事を両立させる中で、
これからもたくさんの出来事と巡り合うことでしょう。
不安とともに歩き続ける明日の中に、
また一つ、そしてまた一つ、
生きる光につながる何かが見つかるといいですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2015年11月6日
☆どうもありがとうございました。


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