メルマガ色鉛筆第51号「運転席に座って出発」

タイトル 運転席に座って出発
メルマガ色鉛筆編集部
レポートの要旨です。
こんにちは。メルマガ色鉛筆編集部です。
今回は編集部が聞きつけた意外も意外な企画のレポートを、スピーディーにお届けしたいと思います。
どれくらいスピーディー、速いかと言いますと時速80キロ以上で走る自動車です。
その運転席には普段は白い杖を持ってゆっくり歩いてる視覚障害者。
ありえへん、と思うこんなことを何回も楽しんでいるという人が、
色鉛筆ライターの中にいた。
ライターのグレーさん(40代 男性 弱視)にお話を聞きました。
ここから本文です。
●質問 いったいどこで運転するんでしょうか?
栃木県にあるサーキットです。
そこを借り切って走るんですよ。
クラブツーリズムという旅行会社が、視覚障害者向けの旅行としてやってくれてます。
●質問 道からはみ出さずに運転できるんですよね。何にもぶつからずに運転できるんですよね。いったいどんな仕組みなのですか?
まず走るコースは、安全に走れる専用のサーキットです。
そして、助手席にインストラクターの人に乗ってもらいます。
もし自分だけ乗って走るのなら、自動車の前に白い杖を付けて探らないといけませんけどね。
カーブでハンドルを回すタイミングや角度を指示してもらいます。
「左手はハンドルの9時の位置ですが、それを11時まで回してください」などと時計の例えを用いて具体的に指示してもらいます。
●質問 本当に時速80キロ以上出すのですか?
出せますよ、調子がよくてうまく走れると。
窓を開けて走ると風を感じます。
音や振動からも、スピードを感じ取ることができます。
スピードは30キロの感覚、50キロの感覚など、体で覚えます。
すると、自分の感覚でもある程度調整できます。
●質問 思ったよりも飛ばして走るんですね。ツアー参加者のみなさん、そうなのですか?
あ、どうでしょう。カーブはちゃんと30キロに落としてますよ。え? それでも速いだろって。うーん、確かに車間距離をしっかり取ってた前の自動車によく追いついてしまうから、飛ばしてますね。すみません。
●質問 いえいえ、謝らないでくださいね。運転はこわくありませんか?
自分は自動車の中にいますから、けがをする心配はありません。
コースも安全を考えて作ってありますし、他車とぶつかることもないように距離を置いて走ります。
インストラクターの人もいてくれますし、一般の市販車とちがい運転する自動車は助手席にもブレーキを付けてありますしね。
(ちなみに車種はホンダ・シビックです。)
●質問 何か発見はありましたか?
クルマは急に止まれない、ということがよくわかりましたよ。
そして、走るのは楽しいということも。
走った後は、思った以上に腕や肩が疲れています。
受身でなく自分がやった満足感がありますね。
●質問 それにしても、視覚障害者が自動車を運転する企画を旅行としてやってくれているのはおどろきです。グレーさんはなぜこの企画に参加しようと思ったのですか?
自分が運転するなんて、日常では絶対にないことです。
そもそも、できると思っていません。
そんな未知の体験をしてみたいと思いました。
そして、1泊2日で栃木県まで行くんですけど、旅行気分で行けると思いました。
旅行は見ることができないと不利です。
実際に行ってみて、見ることが目的じゃなくて、走ることが目的で、日常から離れて非日常を楽しんで来れるのは、いい旅行だと思いました。
よくこんなユニークな試みを、ここまでていねいにきちんと企画してくれるものだと思います。
最初は1人の視覚障害者の要望があったそうですが、一言で、そりゃ無理、でおわってもおかしくないでしょう。
こうやって実現してくれて、視覚障害者の可能性を感じさせてくれます。
●質問 ほかにどんな旅行があるとよいと思いますか?
私の趣味で言うと、プロ野球を体で感じるツアーがいいですね。
巨人OBの選手にコーチしてもらって、実際にプロ野球で使われているボールやバットで投げたり打ったりできるのがいいですね。
●質問 牧場で牛の世話や乳しぼりをするのはどうですか?
それはいいです。行かないですね。
実はあまり好奇心旺盛なほうでも行動的なほうでもありません。
それなのにこの運転ツアーにはよく行ってます。自分に合ってるのだと思います。
編集後記
これ、視覚障害者にとっては宇宙旅行みたいに別世界ですね。
私達、視覚障害者を外に、いろんな世界に引っぱって行ってくれることに、さまざまな人が協力してくれています。
プロ野球体験ツアーもいつか実現するよう願っています。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2015年9月25日
☆どうもありがとうございました。


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