[地域団体より報告] 会員旅行「歴史と文化を訪ねて」を終えて

福知山市視覚障害者協会
 去る9月25日、会員日帰り旅行を行いました。
 近年、観光客の多い京都市内を避けてきましたが、今回敢えて市内のど真ん中、二条城へ、会員13名、介助者11名で歴史探訪の旅をしてきました。
 天は高く、秋色の快晴。世界文化遺産の神々しい趣は空の青に映え、すごい迫力で迫ってくるようでした。バスを降車して、まず目や耳に飛び込んできたのは、圧倒的な外国の方の多さと異国語の響きでした。二の丸御殿に入ると、感嘆からか異国語のボルテージは上がる一方で、ヘルパーさんの説明はかき消され、何度も聞き直しながらの見学となりました。
 往時の技の粋を集めた重要文化財と静かに向き合うことは今はとても無理ですが、たとえ見えなくても、シーンと張りつめた空気の中で人の手と心が産み出した重厚な作品と対面出来れば、心血を注いだ作者の声が聞こえてくるのではないだろうかと思いながら歩きました。大広間の障壁画の老松の上に止まっている鷹の目が、どこに移動してもこちらを向いているように見えたのは、感動を通り越した崇高の極みであったとヘルパーさんが聞かせてくれ、見えないからこそ伝わってくる崇高さを共感しました。
 多分、その昔接見した武士たちも、この鷹の目に自身の心の内を問われていたのではないかと時代を懐古しました。今年の日本は譲位によって新時代に入りましたが、大政奉還という歴史を変える大決断をした徳川慶喜は、この時代を、そして連日御殿に響く異国語を、どう思って見ているでしょう。
 障子から差し込む柔らかな明かりが荘厳なたたずまいを一層引き立て、一時歴史上の人物感を味わい玄関に出ましたら、高齢部の研修会に出席されていた、明石(あかし)高齢部長と当会の今川(いまがわ)副会長に出会いました。日本語がやけに懐かしく感じられ、つい笑いが出ました。
 城内の通路は砂利が敷かれており、通常の車イスでの行動はやや困難でしたが、電動の車イスが常備されており、2名の会員が利用されました。利用者の方も介助の方も、使い心地がとても良かったとの感想で、万人に向けた行き届いた配慮にもレベルの高さを感じ感謝しました。
 昼食は、京都大学の学生食堂でいただきました。ちょっと遅いお昼となりましたので、数グループの学生さんが談笑されていましたが、白い杖の団体の来店に、少々驚きつつ迎えてくださったようでした。メニューは豊富で安価でしたが、京都とはいえさすが若者対象ですので味はしっかり濃いめだったのが印象的でした。広いキャンパスのほんの一部を歩いていると、英語の会話が、普通に通り過ぎていきました。
 最後に、帰路の途中にある桂川沿いの「八つ橋庵《あん》とししゅうやかた」へ立ち寄りました。ししゅうやかたの作品は、京都らしく日本刺繍の技が織りなす絶品だったようです。ピンと張った布に、一針一針直角に、糸をよじらせず刺していくのは無の境地でなければできません。日本刺繍といい、二条城の欄間の彫り物といい、障壁画といい、今回の旅は、熟練を重ねた匠の技を訪ねた旅でもありました。
 今回、歩行距離が長く、会員に体力的負担をかけたこと、バスの乗務員さんに京大学食の車イス用入り口まで、車イスを押して案内していただいたり、集合に遅延があったり、ご迷惑をおかけしました。課題はしっかり踏まえ、今後に生かしていきます。安全に介助くださった皆さま、多くの気配りでご援助くださった乗務員の方、大変お世話になりました。心から厚く感謝申し上げます。


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