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活動紹介

メルマガ色鉛筆第9号 (入院、そして車椅子生活を振り返って)

タイトル 入院、そして車椅子生活を振り返って
ペンネーム 黄金の左足(40代 男性 光覚)
レポートの要旨です。
 こんにちは。黄金の左足です。
「黄金の左足」というと、サッカーで華麗なボール捌きができる選手を意味するようですが、私にはそんな技術はありません(苦笑)。
私は、昨年11月に交通事故で左足首を骨折し、約三か月の入院生活をおくりました。
現在、私の左足はようやくゆっくり歩けるようになった程度です。
サッカーの黄金の左足とまではいかなくても、順調に回復し、これまで以上に充実した生活ができるようにとの気持ちも込めて、このペンネームにさせていただきました。
そこで今回は、三か月におよぶ入院生活で感じたことを、振り返ってみたいと思います。
ここから本文です。
今回私は、かなり重症な足首の骨折をしました。
入院後十日間は足を機械につないで牽引しなければならず、ベッドから動けない日々が続きました。
今振り返ってみると、寝返りすら打てなかったこの期間が最もつらい時期でした。
しかし、手術を経て、車椅子での移動が可能になると、多少精神的に楽になりました。
それと同時に、少しでも動いてみたいという気持ちになりました。
 私は光は感じることができますが、目の前にある物体の形がぼんやりと見える程度の視力で、日常的に白杖を使って歩いています。
普段の歩行では、晴眼者の方が先に私を避けて下さっていることが多いです。
これまでそれが当然のことのように感じられ、生活してきました。
 でも、今回の入院では、車椅子で病棟内を移動することになり、白杖は使えませんでした。
当然の事ながら、白杖を持っていない私を、視覚障害者だと周囲の方に気づいてもらうことは困難でした。
入院していたのが整形外科の病棟だったため、ご高齢の方や若くても松葉杖でゆっくりしか歩けない患者さんが多くおられました。
そこは、「相手から先に避けていただくことが前提」の日常の外出とはかなり異なる環境でした。
また、建物が古かったこともあって、狭い廊下では、すれ違いが難しい場所も多くありました。
私は、車椅子で移動する際は、必ずナースコールを押して看護師さんの見守りの中で移動することになりました。
 大きな病棟でかつ24時間の看護が行われているため、私が接することが考えられる看護師さんだけでも約30人、ナースコールによって駆けつけてくれる方も一定していません。
そこで、どうしても対応に差が生じてしまいます。
 私は、体力を維持するためにも、できるだけ自分で車椅子移動し、危険な時だけ声をかけてほしいと希望しました。
私の希望を受けてくれる看護師さんもおられましたが、
「自操ではなく看護師さんによる車いす移動を」と言われる方、「夜は暗いのでトイレも病室で収尿器を使ってほしい」と言われる方など、対応は様々でした。
できるだけ自分の希望を伝えるようにはしましたが、忙しくしておられると感じる時はそんなに長い時間をかけることもできず、歯がゆい思いをしました。
忙しい中にあっても、ベッドの横に車椅子を停止させるための目印のテープを貼るなど、担当が変わってもわかるような工夫をしてくれた看護師さんもおられました。
しかし、短時間の説明では限界があることを強く実感せざるをえませんでした。
 移動についてだけでもこれだけ対応には違いがあるのですから、食事をはじめ、少し元気になって開始された入浴など、様々な場面で、配慮点について伝える必要が生じました。
私は自分のできること、配慮が必要なことについて、できるだけお伝えするように努力しました。
その人なりに一生懸命考えてされていることに対して、短時間で、いかに気持ちを害さずに、自分の希望する配慮を伝えるかというのは、大変難しいことでした。
そこで私は、看護師さん達に対して、二つの点に絞ってお伝えするようになりました。
一つは、できるだけ声でのコミュニケーションをお願いしたことです。
これは、私だけにとどまらず、何らかの見えにくさを持つ視覚障害者にとって、共通のポイントかと思います。
30人も看護師さんがいると、声だけで看護師さんを特定するのはかなり困難です。
「この前お願いしたのはこの人だったかな、違うかな」と不安になったりします。
最初は、「間違ったら失礼かな」と思いました。
でも、「こちらの障害を理解してもらう上でも必要かな?」との気持ちから、
私の方から「○○さんですよね」と確認するようにしました。
まあたいていは当たっています。
しかも看護師さんのリラクションは、「えっ?、なんでわかったんですか」と、大体共通していました。
そんな時は、顔がわからないので声で予想してはいるけれど自信がないこと、晴眼者が顔を見て誰と話しているかわかっているのと同じく私も誰なのか知りたいことを伝えました。
このことがきっかけで、「戸惑いながら対応されているな」という看護師さんの雰囲気が、かなり和らいだように感じられました。
 お伝えするようにしたもう一つのポイントは、視覚障害者にも様々な見え方や経験を持つ人がいるということです。
それは、「見えなくてもこれはできるんですね」と言われたり、逆に「やはり難しいんですね」などと言われたりする中で、強く意識するようになりました。
内容によって、私ができなくても、他の視覚障害者にはできることもあるでしょうし、その逆もあるでしょう。
一見相反することかもしれないけれど、声掛けのように共通する部分と、
食事や入浴、解除のように、見え方や見えなくなってからの経験によって個々に必要な配慮が異なる点もあります。
このことを私の未熟な説明の中から、看護師さん達に少しでも感じていただけたなら、今後入院される方たちを支援される際にも、お役に立てるのではないかと思いました。
 今回の入院経験で、入院時における視覚障害者への配慮について、コンパクトにまとめられた資料を医療現場へお渡しすることも有効なのではと感じました。
看護師さんの授業などでも知る機会があるのかもしれませんが、しょっちゅう視覚障害者が入院することは少ないと思いますので、実際に入院する際にそのような物があれば、より実感を持って対応していただけると思います。
実際にそのような取り組みが行われているのか、また調べてみたいと思っているところです。
 最後に、今回の入院で自分にとって最も良かったのは、車椅子で生活する方をはじめ、足の不自由な方の気持ちが少しかもしれないけれど理解できたと感じたことです。
たとえば、これまで普通に歩けていた数センチの道路の段差でも、電動ではない車椅子では引っかかってしまうことがありました。
もう少し私がスマートなら、乗り越えられたかもしれませんが…(苦笑)。
普段とは違う環境におかれたことで、他の患者さんと接し、自分の障害について話したり、
自分以外の方たちの悩みや経験など、様々なお話を聴く機会もいただきました。
長期間の入院は大変でしたが、なかなか経験できない貴重な時間を過ごさせてもらえたと思います。
これからの様々な活動に、この経験を生かしていきたいです。
編集後記
 ナイスファイト!
黄金の左足はミラクルな大活躍ですね!
「見えない・見えにくい私たちの安心入院ライフ」について考える素敵なパスが生まれました。
入院を通して、 普段とは少し違う環境になることで、周りの景色が違って見えることがありますね。
それが自分自身のことだったり、自分と社会との関係だったり、
いつもは想定しにくいような「もし、~だったら」について考えてみたり・・・。
入院についてのエピソードはとても多用です。
緊急的なものから事前準備が可能な場合、また、病院の規模や病気や怪我の種類等により、状況はまったく異なります。
入院体験について情報交換できる交流会も、おもしろいかもしれませんね。
ーー このメールの内容は以上です。 
発行: 京都府視覚障害者協会 
発行日:2014年3月7日
☆どうもありがとうございました。

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