メルマガ色鉛筆第290号「窓辺にて6」

タイトル 「窓辺にて6」
メルマガ色鉛筆編集チーム
 こんにちは。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
昨年4月よりスタートした「窓辺にて」、連載第6回です。
タイトルをしりとりでつなぎながら、いろんなジャンルの文章が登場します。
これまでに、点字、地味、ミミ、ミント神戸、ベル、ルビーの指輪、わらび餅、
ちょっとだけよ、夜遊び、Vivid、どないしょー!、小革命、いい子にしてなき
ゃの
13作をお届けしました。
そのバトンを受けて、今月は
「キャッチ」、「ちょっと」とタイトルがつながれました。
窓を開いてひろがる世界、
見えない・見えにくい中でひろがる世界をお届けします。
タイトル キャッチ
ペンネーム とうめい(20代 男性 全盲)
 私の古道具は、ビートルズのCDだ。
しかもベスト版ではなくオリジナルアルバムである。
私がビートルズを好きになったのは8歳の頃だ。
両親がCDをレンタルして聞かせてくれたのがきっかけだった。
初めは特に興味を持つわけでもなく聞き流していた。
しかし何に衝撃を受けたのかわからないが、気がつけばとりこになっていた。
それからというものレンタル屋でCDを借りてきてはカセットテープに保存し、
ひたすら聞いていた。
そんな中、小学校を卒業するすこし前にある先生が声をかけてくださった。
「卒業生から貰ったCDがあるけどほとんど聞かないし、好きならあげるわ」と。
率直に嬉しかった。
こうして1枚のdiscが私の元へ来た。
それがビートルズの6作目のアルバム「rubbersole」だ。
ベスト版のCDはたくさん持っているが、オリジナル版で持っているのはこの1枚
のみだ。
その後私の卒業と同時に先生は転勤されて、以来一度もお会いしていない。
discをいただいた数年後、全てのオリジナルアルバムをステレオ化した物が発売
された。
私は迷わずそれを借りてSDカードに全ておとした。
これで気楽に楽しめるようになった。
 ところでオリジナル版の「rubbersole」だが、今も自宅に保管してある。
まだ再生は可能だが、使うとクリーナーをしなければならない。
そして何せ貴重だからどうしても使用するきにならないのだ。
でもやっぱりこのオリジナル版を楽しみたいと思っている自分がいる。
当時はただ嬉しいという気持だけだったが、この文章を書いているうちに、
これはそう簡単には訪れない出来事だったのではと思えてきた。
これを機にタイミングを見つけて再生してみよう。
discをキャッチできた喜び・奇跡・ありがたみを噛みしめながら。
ーー
 レコードやCDなんて買ったことない、ダウンロードだけという声があります。
実際に手にして触ることができるものがある、
それは見えない私たちにとって大切で価値のあることなのかもしれません。
手渡す、手に取る、そんなシーンからつかむ(キャッチ)という感覚も出てきた
ようです。
タイトル ちょっと
ペンネーム 開けたての色鉛筆(40代 女性 弱視)
 4歳位になるとオムツからパンツへと進級する子が増えてくる。
我が息子も昼はパンツ、夜はオムツと二刀流。
ある日見慣れないパンツを履いて帰ってきた息子。
どしたん?と聞くと、「ちょっとだけ」らしい。
僕の中ではちょっとだけだったみたいだけど、先生曰くまあまあ漏れていたそう
で、
パンツを履き替えることになった。
自己評価と他者評価の程度の違いはよくあること。
 別の日、先日のように保育園のパンツを履いて帰ってきた僕。
例のごとく「ちょっと」らしい。
「そっかー、ちょっと出たんやなー」というと
「トイレの前で全部出た」と返ってきた。
漏れたのは、ちょっとどころではない。
僕が言うには、パンツ下ろすのと同時に全部出てしまったらしい。
「ちょっと間に合わなかった」という感じ。
いや、それとも僕にも羞恥心とプライドがあっての「ちょっと」なのかもしれな
い。
 以前、似たような場面で「ちょっとだけ」と聞いたから
僕の「ちょっと」のあとには「漏れた」がくると決めつけていたことに気づかさ
れた。
「漏れた」僕はヘラヘラしていたが、もはやそれも気にしていないのか、
触れられたくないのか定かではない。
今更だけど、言葉にはいくつかの意味合いがあること、
人の話を聞くときは一旦自分の考えを置いてみることを思い出した気がする。
子育ては人育て。わたしも子供に育ててもらっている。
そして、この話には続きがあって、履いて帰ってきたパンツは後ろ前だったのだ

しゃがむと社会の窓からおしりが覗いていた。
この間違いもちょっとなのか?
たしかに出ている部分はちょっとだ。
大人になって注意したいのは大腸検査。穴開きのズボンを検査前に履くのだけど
、ご
くまれに穴開きが前に来ている男性がいる。
そう、いつも前が空いているからね。
でもね、そこは見ないの。検査では。
尚、この話は僕の名誉のためにも「ちょっと」秘密にしておいてほしい。
ーー
 思わずクスリと笑ってしまう、なんとほほえましいお話でしょう。
「僕」のちょっとエピソード、大人になった自分のこととして思い出せるでしょ
うか。
いや、現在進行形で「ちょっと出た」なんてこともありますよね。
出たのが何かによって、そこに生まれる思いも色とりどりでしょう。
 言葉にはいろんな意味があります。
いろんなニュアンスを込めることができます。
誰かの話を聴く時、誰かの文章を読むとき、
聴き方、読み方もいろいろあります。
それはものの見方に通じていきます。
ちょっといつもとは異なる聴き方、読み方をしてみると、
ちょっとしたものが見つかるかもしれません。
さて、次回の窓辺から、どんな世界がひろがっているでしょうか。
シリーズ第7弾でご一緒しましょう。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2023年1月27日
☆どうもありがとうございました。


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