メルマガ色鉛筆第282号「なめたらあかんでぇ 」

タイトル 「なめたらあかんでぇ 」
ペンネーム チュニジアンブルー(60代 男性 弱視)
レポートの要旨です。
 瞬間湯沸かし器の異名も併せ持つチュニブルは、すぐカッとして怒ることなく
優しさとほほ笑みを持って物事に向き合うべきだと基本的には思うのである。
しかし東日本のある街で起きた、祭りへの盲導犬の参加拒否問題には温厚なチュ
ニブルも、思わず、なめたらあかんでぇと、この夏、使いなれない関西言葉で叫
んでしまった。
一方で、事件は記者を育てる、というが、
今回の問題は少なからぬ当事者に貴重な経験をもたらしたとも言える、
事件について語ってみたい。
 ここから本文です。
 舞台は太平洋に面した海辺の街。
その街の眼科病院に集う視覚障害者や支援者は、
地域とも繋がりながら学びや交流活動を続けてきた。
そして今年8月8日の朝をむかえた。
今夜は駅前通りを通行止めにしての踊りパレードがある、
楽しみだなあと病院の副院長でもある水色さんはワクワクしていた。
盲導犬ユーザーなども交え、30人で参加するのだ。
 日中、水色さんの携帯が鳴った。
「盲導犬は参加できない、と言われました」。
パレード参加者の世話人が、午前中、パレード事務局に一応、
盲導犬も参加することを連絡したところ、拒否されたというのだ。
水色さんたちは市役所の観光課、障害福祉課にすぐさま連絡した。
5年前のパレードにも盲導犬が参加したこと、
法律上もこのような対応はできない、などと抗議したが、
担当者は「音響や光で盲導犬が騒いで何かあるかもしれない。
5年前のことは知らない」と答え、
これは差別ではないか、という抗議に対しても
「そう言われてもいい」とまで突っぱねたという。
 結局、盲導犬ユーザーはパレードには参加できなかった。
その二日後、市役所からは参加拒否は大変申し訳なかった、
当日は十分、対応できなかった、改めて謝罪の場を設けたいとの連絡があった。
 ここから水色さんたちの戦いは本格化した。
何が問題なのかを明確にしないまま、
表面的な「お詫び」でやり過ごそうとしているかのような市役所。
そこで水色さんたちは、当日、何時何分に誰がどう発言したか、
対応したかを時系列的に記した詳細なメモを含む1500字にものぼる文書を作
成した。
差別解消法や補助犬法にも抵触する対応であることも明確に指摘した。
日本の役所、は文書主義だ、きちんとした文書を突きつけられると弱い。
このような文書を送り付けられては白旗を上げざるを得ない。
 後日、水色さんたちと市側の対面交渉の場で、そして市議会本会議での一般質
問の場で市側は謝罪を繰り返した。
水色さんたちは市の対応を批判するだけでなく、
障害者のためのバリアフリー観光に取り組むべきだ、などの提案も行い、
市側はこれに取り組む方針も明らかにした。
盲導犬対応などについての職員研修を強化することも明言した。
議会傍聴には盲導犬ユーザーも加わり、
今日は盲導犬も傍聴しているとの説明に議員たちは一斉に傍聴席を振り返った。
 しかし、割り切れないものも残る、当日の朝に盲導犬の参加を急に言われても

対応できないのは当たり前、という声が市役所内外にある。
これは完全な誤りだと水色さんもチュニブルも感じる。
補助犬法や差別解消法に理解があれば、
あ、そうですか、盲導犬の参加は嬉しいです、と言えばいいだけのことなのだか
ら。
 今回、水色さんがチュニブルも関わるメーリングリストに
この問題をリポートしてくださった。
そのおかげで、全国の仲間達が盲導犬をめぐる問題について理解を深め、
市議会本会議をオンラインで傍聴した。
議員さんたち、市役所側も全国の視覚障害者が注視していることを知って、
少なからず緊張していたという。
 チュニブルの拙いレポートから、行政が問題を起こしたときの向き合い方、
視覚障害者の連携のあり方など何かを感じていただければ、
とてもとても、毎度、おおきになのです。
編集後記
 「知る」ということの大切さを感じるレポートでした。
「知る」ということは「理解する」につながる土台です。
今回のことは、知ってさえいれば自然だったことが、
なぜか特別なことになってしまったという残念なお話です。
その結果、楽しいひとときが奪われました。
行政にとって自然なこと、市民にとっての自然なこと、
それはちゃんと「知る」からはじまります。
盲導犬のつぶらな瞳には
「いつだってユーザーさんの行きたいところに一緒に行くんだ」
というまっすぐな気持ちが浮かんでいる、私はそうイメージしています。
理屈ぬきにわかる、言葉がなくても感じる、
見えなくても想像してみる、すると何かが見えるかもしれませんよね。
さらには知らなくても想像してみる、すると何かが見えるかもしれませんよね。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2022年11月4日
☆どうもありがとうございました。


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