メルマガ色鉛筆第220号「僕は懸命に生きる」

タイトル 「僕は懸命に生きる」
ペンネーム 水色めがね(70代 男性 全盲)
★レポートの要旨です。
 「視覚障害者が癌と闘って一生懸命に生きた姿をみんなに見てもらおう」と決意し
これまでやってきました。
ここにその経緯と今の思いを語ります。
今、体はかなりきつい状態です。
大好きな歌とともにささやかせてください。
★ここから本文です。
 水色めがねです。
70歳代の全盲男子です。
35歳ごろに完全に失明しました。
そう、網膜色素変性症です。
2018年10月に大腸癌が見つかり、手術をして撤去していただきました。
以前に痔の手術をしてもらった経験から、また、再発したのだろうと勝手に思い、
放っておいたのが悪かったのです。
 大腸癌を撤去しましたが、「リンパ節もいくつか腫れていました」
とドクターから告げられました。
抗癌剤治療は免れないだろうと悟った私は、
「視覚障害者が癌と闘って一生懸命に生きた姿をみんなに見てもらおう」と決意しました。
そして手術後に、大腸癌と闘って生きている僕を見てもらおうと、
周りの人に大腸癌の手術を受けたことを公表しました。
PET検査をうけ、肺に小さな癌が5個転移していること、
その他には今のところ転移していないとのことで、
同年12月から抗癌剤治療を始めました。
 当初順調に経過していた抗癌剤治療ですが、2019年3月に、
急に座っていることすらつらくなりました。
抗癌剤治療が少しきつかったようです。
薬を20パーセント減らして治療を継続しようということになりました。 
 その翌月の4月のCTスキャーンの画像では、肺に転移していた5個の癌が、
3個消えていました。
同年7月の同じ検査画像では、5個の転移していた癌も消えていると、
うれしい結果でした。
それでも「治療はこのまま続けてください」とドクターからの指示がありました。
 抗癌剤治療を始めるにあたり、「趣味や生きがいを見つけ、頑張って治療してください」
とドクターからの言葉がありました。
僕はコーラスが趣味で年10回程度舞台に乗っていること、小中学校、
交通局などで年に数回視覚障害者についてお話をさせていただいていることが生きがいだと伝えました。
そんな僕の思いを受け止め、「点滴の中に声の出にくくなる副作用があるものがあります。予定表をいただければそれに合わせて治療を進めます」
とドクターが提案してくださいました。
 僕は癌とともにありつつ自分らしく生きるための治療プランを相談していました。
再発もなく治療を進めてきましたが、2020年3月から、新型コロナウイルスの件で
全く趣味や生きがいをなくしてしまいました。
 そんな中、11月の検査で腹水が少したまっていることがわかりました。
2週間後に1泊2日の入院の予約を取りましたが、入院を待たずして腹痛がきつくなり、
体重が毎日1キロ弱増えてきました。
 そこで緊急入院をしました。
癌から来ている腹水ならば、もう長くないなと思いました。
腹水を抜いて検査をしてもらった結果、きれいな腹水で癌は見つからなかったそうです。
結局十日間の入院検査では原因は判明しませんでした。
腹水もほぼなくなってきたので、退院し、今この原稿を書いています。
無事退院はしたものの、腹水を3リットルも抜いたことで体力が減退し、
寝たり起きたりの状態です。
 こうしている今も、視覚に障害を持ちながら、癌という大病と闘っておられる仲間が
多くおられると思います。
そんな人たちの闘病生活を1冊の本にまとめて出版したいとひそかに思っていますが、
今の僕の力では無理かと思っています。
この文章を読まれた方で、やってみようと思われる方がおられましたら、
ぜひ協力させてください。
 僕はこの60年あまり、音楽とともに歩んできました。
その中の大好きな曲、1曲を紹介し、静かに筆をおきます。
  男声合唱組曲『雨』より「雨」
雨のおとが きこえる 雨が降っていたのだ。
あのおとのように そっと世のために はたらいていよう。
雨があがるように しずかに 死んでゆこう。
編集後記
 魂の疼き、熱情が詰まったご寄稿でした。
震える思いでこの原稿を受け取りました。
何かに突き動かされるように縁を結び、人がつながる、
そんなことが人生のひとひらの中にあります。
ここに記された「雨」は日本の合唱音楽の名曲です。
作曲者の多田先生ご自身の言葉に、組曲「雨」が
つらいことにぶつかった時にも私をなぐさめ、そっと世のためにはたらくことをささやく特徴的な作品、とあります。
この曲が生まれたこと、それを愛しここに伝えてくださった水色めがねさんのこと、
これも何かに突き動かされつながったものの一つではないでしょうか。
つらい時に私をなぐさめ、そっと世のためにはたらくことをささやく、
大きくてやさしくて、強くて消えないこの言葉が、
今もここに生きています。
静かで深いメロディとともに。
ご寄稿から2か月、水色めがねさん、今は元気に活動されています
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2021年2月12日
☆どうもありがとうございました。


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