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活動紹介

メルマガ色鉛筆第78号「その日、痛かった話」

タイトル 「その日、痛かった話」
ペンネーム 夕焼けセピアオレンジ(40代 女性 弱視)
 レポートの要旨です。
 見えていた頃の親友に、見えない自分になって会うことになりました。
帰り道、予期せぬハプニングが起きました。
それをきっかけにいろんなことを思い起こすことになりました。
 痛みが教えてくれたじんわりとした思いをお話します。
 ここから本文です。
 高校時代の親友に8年ぶりに会った。
お互い酸いも甘いも乗り越えての再会だった。
私が白杖を使い出したことも手引きで歩く姿も理解している彼女は、
ホームページで私のことを見ていてくれた。
「あなたの活躍は見ているわよ」と、懐かしい声が電話の向こうから聴こえる。
彼女が見たページには今の私、これまでの私の思いが綴られているから、四方山話など必要なかった。
「年賀状にもコメント一つないし、水くさいやんか」と変わらぬ鋭い突っ込みに、
「そんなもん、私が書けるわけないやん」と返すと、
「ラブラブのダーリンがいるやんか」と言うので、
「ラブラブ、そんなもんおらん」と笑って返した。
「続きは明日ね」と約束して電話を切った。
 カフェで3時間、お互いの近況を話した。
学生時代と変わらない、変に気を遣ってなんてこともない、いつもの調子で話した。
若い頃のお互いの何もかもを知り尽くした仲だから、私は正直に彼女に伝えた。
「私の前は何もかも真っ白やねん。このお皿、白いの?
お皿の上のものも真っ白やわ。紅茶はふんわりシルエットだけあるけど」。
彼女は「そう、白いお皿やで」とだけ説明し、
根ほり葉ほり聞かないけれど、必要なサポートについては的確に質問してきた。
「昔からおっちょこちょいやから気をつけて、けがせんようにな」と、
彼女はしっかり者の先生らしく私の手を握った。
「お互いにな。体だけは気をつけて。まだまだこれからやから」と、
私も彼女の手を両手で包んだ。
先にバスを降りた彼女に、角を曲がるまで手を振り続けた。
女子高生の頃と同じように、私はぶりっ子な仕草でバイバイしたかった。
彼女がいなくなったバスに1人残された私は、とても満たされた気持ちになっていた。
境遇は変わっても、変わらないものがある、
そのことがわかって、私は幸せな気持ちになった。
 夏の夕暮れ、慣れた道をトボトボ歩く。
近所のおじさんが畑で水まきをしていた。
「この間はサザエおおきに。おいしくよばれましたわ。お母ちゃんによろしゅうな」と声をかけられた。
私は笑顔で会釈した。
家の少し前の電柱を杖で確かめ、下り坂を意識した途端、
私は右ひざをついてこけた。
いつも通りの動きだったのになんでこうなったのか、さっぱりわからないまま激痛が走った。
「この感じなら絶対に血が流れているはず、それは見えなくてもわかった。
私は立ち上がると、スカートの裾を持ち上げながら歩いた。
結局、流血したのは右ひざと右の手のひらだった。
とにかく誰にも見られたくない思いで必死に我が家のインターフォンを押した。
息子が出てきた途端、思わずひざがくだけそうになった。
「ママ、ママ、どうしたん?なんで、どこで、どうなったん」と声をかけながら、
自分のほうに私の左腕を回した。
杖もかばんも取り上げられた私は、
お気に入りのピンクのスカートが血にまみれるのがいやで、必死に裾をまくり上げていた。
「けがだけはせんといてや」と繰り返した親友の言葉が、
傷口を洗う水の音に重なり聞こえてきた。
 その夜、彼女からメールがあった。
「無事に帰ったか。大丈夫か」。
「なんでわかったん」と1人つぶやきながら、
「大丈夫、無事に帰りました」と返信した。
なんでもないように、昔と同じように時間を過ごした私たちの心の中には、
お互いを思う一抹の悲しさや切なさがあった。
肉がえぐれた右ひざと小さく折れた左足の骨は、
私たちが別々の場所で重ねた時間のようだった。
傷口に消毒液をかけられると、強い刺激があった。
そして、30年来のあれこれがじわっと沁みてきた。
嬉しかったし、幸せだった、そして痛かった1日。
思えば・・・、心も体も痛かった、それまでも、その日からも。
編集後記
 まさに私たちのリアルな日常を描いてもらったと思います。
道では転んだり、何かにぶつかってけがをすることがありますが、
本当に体だけでなく心も痛みます。
どうして防げなかったんだろうと自分を責めたり、
けがや洋服を目で見て確認できず情けなくなったり。
 ですが、それでも夕焼けさんのこの1日はよい1日だったのではないでしょうか。
積極的に今日をよい日にしようという気持ちと行動があってこその1日でした。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2016年10月7日
☆どうもありがとうございました。

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