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活動紹介

メルマガ色鉛筆第357号「世にも奇妙な宴」

タイトル 世にも奇妙な宴
ペンネーム サンタク☆ロース(50代 女性 光覚)
レポートの要旨です。
 日常の中で「お手伝いしましょうか」のお声かけをいただいて。
それが縁となって、さらに縁をひろげて、
私きっかけの食事会にまで発展して。
そんなことあるの?自分のことなのに不思議。
そんな世にも奇妙なお話、はじまりはじまり。
ここから本文です。
 それはある寒い日の帰り道。
会社のある駅から、地下鉄に乗り、
自宅の最寄りの駅で降りて、改札をぬけ、
いつものように西方向の横断歩道を渡り、ファミリーマートを左横目に見て、西
へ西へ。
二つ目の横断歩道に差し掛かった時、
「お手伝いしましょうか?」と後方からやわらかい女性の声。
まぁいつも通い慣れた道でもあるし、私としては特段必要ではなかったが、
ある程度の勇気を持って声をかけて頂いたであろうと推察した。
もしここでこの親切を断ると、彼女にとって「せっかく声かけたのに断られた」
という
トラウマになってはいけないと思い、
「ありがとうございます。助かります」とお答えするのが最善だと判断した。
彼女の申し出を素直に受け入れ、
彼女の右腕に掴まらせて頂き、歩き始めた。
彼女はおもむろに話しはじめた。
「何度かお見掛けしていて、ずっと声をかけそびれていたのです」と。
「ああそうなんですねー。気軽にお声がけ頂ければいいのに。助かりますから」
と私。
すると彼女は少し遠慮気味に
「実は私、パソコン関係の仕事をしていまして、今目の見えない人が使いやすい
ソフトの開発をしています。もしよろしければ、お手伝いして頂けないでしょう
か?」とのこと。
寝耳に水の申し出に少し困惑しながら
「私でお役にたつことがあるのであればぜんぜんいいですけど、おそらくそんな
にパソコンにも明るくないのでお役にたつかどうか」とお返事。
彼女の自宅は私が毎日通勤時に通る道に面しており、私は毎日彼女の自宅前を行
ったり来たりしていたようだ。
「ここなんです」と彼女の自宅前に到着。
とりあえず私の名刺を渡して、その日は別れた。
数日後、彼女から連絡。
一度夕食でもしながらお話聞いてほしいとのこと。「あらら、本気やったんやー
」と少々びっくりしつつ、
次回会う約束をした。
数日後の約束の日曜日、駅で待ち合わせをして、さてどこに行こうかということ
になり、
昼間は喫茶店、夜は飲み屋さんというお店へ行くことになった。
しかし、約束の当日は日曜日。
そのお店は日曜日は別のカレー屋さんに場所を貸しているらしく、
知らずに入ってしまったので、
出るに出られず、その日の晩御飯はスパイスカレーとなった。
お互いの自己紹介をいろいろしている間に、あっという間に時間が経ち、
結局お仕事の話は全くなく、その日は終了。次回に持ち越しとなった。
 彼女の名前は桃子ちゃん、私よりは10歳ほど年下のようだ。
さて桃子ちゃんとの第二回目の宴は、また先日と同じお店。
今回はウィークデーなので通常の居酒屋メニューで、一杯飲みながらの宴となっ
た。
実はこのお店、私は知り合いに連れて来てもらったのが最初だったのだが、
その知り合いというのが、駅前のファミリーマートの元店長だった。
彼女はファミマ時代、このお店の常連。
ファミマを辞めてからは実はランチのバイトをこのお店でやっていた。
そんな彼女とは、ファミマの店長をしている時に、お買い物を手伝ってもらった
り、
時には、バースデーケーキを買っていてくれたり、
さらにファミマに売っていないお菓子を尋ねたところ、
翌日別のスーパーで買ってきてくれておりプレゼントしてくれるという、
親切という言葉だけではいいあらわしようのない女性。
そんな元ファミマの店長かぼちゃんは、現在私の紹介でガイドヘルパーになって
おり、
時々私のガイドもしてくれている。
そんなお話を桃子ちゃんにしたところ
「私、そのかぼちゃんに会いたい!次回3人で飲みましょうよー」ということに
なり、
次回の宴は奇妙な出会い3人組で開催されることになった。
 さてその奇妙な飲み会の開催を控えたある日の帰り道。
いつものようにポコポコ歩いていると背後から、
「おけいさん」と元気な声。
「あー、みどりちゃん久しぶり~。帰り道で合うのは珍しいね」
彼女は朝にたまに会う女性。歳の頃もおそらくアラフィフ。
もう数年前から声をかけてくれる人だった。
「ほんと帰り道で合うのは珍しいねー」などと話しをしている中で、
ふと開催を約束した奇妙な宴のことを思い出した。
「みどりちゃん、実は...」と
桃子ちゃんとかぼちゃんと3人で飲みに行く奇妙な飲み会の話をして、
「みどりちゃんもどう?」と恐る恐る誘ってみた。
するとみどりちゃんは「へー、面白そう、ぜひぜひ参加させてー」と快諾!
というわけでメンバーは桃子ちゃん、かぼちゃん、みどりちゃん、そして私の4
人。
みんなは私のことしか知らない、
私はみんなのことを知っているという、とても奇妙な飲み会が開催される運びと
なった。
 
 かぼちゃんといつもの駅で待ち合わせして、お店へ。
まだ桃子ちゃんとみどりちゃんは来ておらず、
お店の一番奥の左側のテーブルにかぼちゃんと座って二人を待った。
なんとも言えないワクワク感とドキドキ感。
私はそれぞれの人とは会って仲良くおしゃべりしているけれど、
さてそれぞれの人たちが気持ちよくおしゃべりできるのか?!
そんな心配をよそにほどなくみどりちゃんがやってきた。
「みどりちゃん、こちらが元ファミマの店長のかぼちゃん、
かぼちゃん、こちらが朝時々声をかけてくれるみどりちゃん。」
お互いにご挨拶をして、あとは桃子ちゃんのお出ましを待つのみ。
まぁ、桃子ちゃんが来るまで先に少しはじめてますか?ってな具合でまず1杯!
なんだかんだとお話している間に桃子ちゃんが到着!
するとみどりちゃんの様子が少し挙動不審。
「すいませんでしたー」と遅れて入ってきた桃子ちゃんもなんだか様子がおかし
い!
「どうしたの?」と尋ねると、
「私が座っているのかと思った」と桃子ちゃん。
するとみどりちゃんも「そうそう、私が入ってきたのかと思った」とのこと。
私には見えないが、二人はとてもよく似ているらしい。
そんなこんなで意気投合。楽しい時間はすぐに過ぎた。
 宴の終盤、私からひとつ提案をした。
「もう一人、気になる子がいるんやけど。台湾出身の33歳男子。
次回開催時はその子も誘ってもいいかな?」
とアラフィフ女子にお伺いをたてたところ、
「もちろん!いいやんいいやん、私台湾大好きやねん!」とみどりちゃん。
そう、みどりちゃんは海外旅行と言えば台湾しか行かないというほどの台湾好き

手っ取り早く話がまとまり、翌日からシローくんを探す日々が始まった。
道で声をかけてくれるだけの人、わざわざ連絡先などかわしてないので、
偶然に出会うのを待つしかないという日々が始まった。
 シローちゃんとは朝となく会社帰りとなく、遊び帰りとなく、
何度も何度も出会い、会った時は必ず自宅まで送ってくれるという、とてもやさ
しい子。
結構頻繁に出会うのに、こういう時に限ってなかなか会わないものである。
シローちゃんを探しはじめて約ひと月が経とうとした時のある日曜日の朝、
通勤途中に背後から「けーちゃん」と呼ぶ声。
まさしくそれはシローちゃんだった。
「シローちゃん!私探してたのよー」と、アラフィフ飲み会のことを説明。
シローちゃんも速攻ご快諾頂いた。
 
 こうして奇妙な飲み会はシローちゃんを迎えて5名となり、
すぐに開催することとなった。
それぞれのお仕事の話や、家族の話、台湾の話で盛り上がった。
こうしてこの飲み会は「サンタク会」と名付けられ、定期的に開催されることと
なる。
つい先日も忘年会ということで、3度目のサンタク会が開催された。
 知らない人によく声はかけられるし、顔見知りになることもあるけれど、
連絡先を交換して、晩御飯へ行くなんて。
この経験を「神様からの贈り物」と私は呼んでいる。
これが生まれて初めて経験した、とても奇妙で愉快で、うれしいお話。
これにておしまい!にこっ。
編集後記
 カラフルな面々が登場する、なかなかないお話でした。
そして、驚くべきことはたまたま出会った人が、なんだかそのたまたまに乗っか
って、
さらに出会いをひろげていることです。
サンタク会の人たち、めっちゃ気さくですね。
たまたま見えてないこと、それがきっかけで楽しい出会いへ。
「お手伝いしましょうか」のあたたかい声かけは、
すごい力を生み出していたんですね。
このお話は何気ない日常、いつもの道の上に、時間の中に起きたことです。
それは気さくな声かけでありながら、勇気がなければ生まれない、
特別なことでもあります。
神様からの贈り物、色鉛筆でまたいつか。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:  京都府視覚障害者協会
発行日:  2025年3月7日
☆どうもありがとうございました。

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