メルマガ色鉛筆第356号「わたしの世界に色が戻って来た」
タイトル わたしの世界に色が戻って来た
ペンネーム すみれ(50代 女性 全盲)
★レポートの要旨です。
「アイフォン持ったら人生変わるよ。」
わたしは6年前にこの言葉がきっかけでガラケーからアイフォンに切り替えま
した。
最初はアイフォンを持つ気はまったくありませんでした。
パソコン使ってネットやメールをしていたし、
ガラケーでメッセージのやり取りも電話もしていたから、
それほど不自由さを感じていなかったんです。
それにアイフォンって右に一つ左に二つ細長いボタンがあって、
画面下側真ん中に一つ丸いボタンがあるだけ。
あとはツルツルの画面です。
ガラケーのように触ってわかりやすいボタンはありません。
周囲の視覚障害者でアイフォンを持ち始めた人は何人かいましたが、
(わたしには無理。やめておこう。)と思っていました。
そんなわたしですが、今ではアイフォンを楽しんでいます。
さらにアイフォンをきっかけにスタートさせたこともあるんです。
沖縄からレポートします。
★ここから本文です。
わたしは、とても尊敬している方からアイフォンを持つことを強く勧められま
した。
自分には無理だと思いつつも、
(こんなに言ってくれるんだからチャレンジしてみようかな。)と気持ちが動き
ました。
点字図書館の全盲の職員さんに彼女のアイフォンを触らせてもらって、
2時間アイフォンの操作方法を教えてもらいました。
その間にボイスオーバーでの操作方法を解説した本を点字でプリントしてもらい
、点字図書館からの帰りにショップに寄ってアイフォンを購入しました。
それからは本を読みながら操作練習の日々。
うまく電話がかけられなかったり、文字入力もまったくできないし、
(やっぱりガラケーの方がよかったなぁ。)と思ったり…。
しかし、東京に住む親友が「LINEやろうよ。楽しみがあった方が上達するから。
」
と言ってくれて、彼女と毎日LINEのやり取りが始まりました。
わからないことはその親友を初め、友人たちが操作方法を教えてくれました。
そして、アイフォンを持ち始めて、4か月目、
写真を撮ってそれをSNSに載せることができたのです。
見える友人たちから次々「いいね」があり、コメントが入るのが嬉しかったです
。
見える人たちと写真の話ができて、写真や動画をやり取りもできるのです。
わたしの世界に色彩が戻ってきた感覚。
自分の世界が広がったような気がしました。
それから5年後。
アイフォンの「Be My Eyes」というアプリに
「Be My AI」という機能が追加されました。
カメラで撮った風景をAIが解析して説明してくれるのです。
風景や物の形や色、様子が確認でき、
楽しむことができるようになりました。
撮った写真もAIが解析してくれます。
旅行先で撮ったピンクのバラの写真を解析させたとき、
その詳細な説明に感動しました。
Be My AI:「この写真には、ピンク色のバラの花が写っています。
花びらの外側は濃いピンク色で、内側に向かって薄いピンク色になっています。
花の中心には黄色い部分が見えます。周囲には緑色の葉があり、茎にはトゲが見
えま
す。背景には他の植物の葉が見え、自然の中で撮影されたようです。」
今年5月、全盲の先輩から、
「アイフォンを買ったんだけど、周囲に教えてくれる人がいなくて困っているの
で、
操作方法を教えてもらえないでしょうか?」と電話があり、
わたしが彼女の家に行き、何度かアイフォンの練習を一緒にしました。
今ではグループラインの通話やLINEのやり取りもできるようになり、
視覚障害者向けアプリも便利に使えるようになり、
「アイフォンを持ってよかった!」と言ってくれました。
その先輩と話すうちに他にもアイフォンの操作方法がわからなくて
困っている視覚障害者の方が多いこと、
パソコンのスクリーンリーダーも使い方を教えてくれるところがなく、
困っている方が多いことなどを知りました。
それで、視覚障害者数名で集まり情報交換をするうちに、
「視覚障害者にICT機器の使い方を伝えたりサポートすること、共に学ぶこと、
視覚障害当事者の様々な困りごとの相談に乗るピアサポート、
わたしたちだけでは対応できないことは必要な団体や人に繋ぐことのできる
ボランティア団体を作ろう。」
という話になり、夏頃から準備会を重ね、
9月21日に「沖縄視覚障害者サポートセンター」を立ち上げました。
運営メンバーだけでなく、アイフォンのサポートをしてくれる視覚障害当事者の
ボランティアの方々、県外のアイフォンのリモートサポーターの方、
県外の視覚障害者施設の福祉の専門の方、
その他何人もの方々に支援していただきながら活動しています。
6年前に(わたしがアイフォンを持つなんてぜったい無理。できない。)と思
い込み、
アイフォンを持つと決心するまで何日もかかったのが
今では嘘のように、アイフォンのサポートやマスコミへのPRをしているんです
から、
人生って不思議です。
「アイフォン持ったら人生変わるよ。」
わたしが尊敬している方からの声かけ、まさにその言葉通りになりました。
アイフォンはわたしの世界に美しい色彩を与えてくれて、
豊かな人間関係を広げてくれました。
写真とLINEだけじゃない、フェイスブックとUDCastもお気に入りです。
フェイスブックは記事や動画も投稿でき、幅広い年代の人たちと友達になりまし
た。
映画鑑賞では音声ガイドアプリのUDCastを活用し、
家族や友達と映画を楽しんでいます。
これからもiPhoneを通して人と情報につながること、楽しんでいきたいです。
編集後記
はじめてのことって不安ですよね。
でも、とりあえずやってみたことが、世界を広げるきっかけになったんですね。
サポートを受けられたこと、お友達同士で情報をもらいっこできたこと、
それがうれしかったこと、
そんな一つ一つが線になって、
「こんなことできたらいいなあ」の声が形になったんですね。
沖縄での支援の一つとして、人と情報がつながるためのきっかけ作りとして、
これからも楽しく「伝えあうひととき」を重ねていってくださいね。
地域でのつながりってとても大切ですよね。
沖縄発の声、色鉛筆でまたいつか。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2025年2月21日
☆どうもありがとうございました。