メルマガ色鉛筆第351号「まだやれる」
タイトル まだやれる
ペンネーム ブルーバード(30代 男性 弱視)
レポートの要旨です。
僕は左眼に眼帯をしていて、けがで一時的に見えなくなっているものだと思い
込んでいた。
しかし、ある日「左眼は失明している」ということを聞いて、絶望しそうになっ
た。
困難なことはいくつもあった。
それでも何もかも終わりというような絶望的な状況ではなかったのである。
趣味のバードウォッチングも再開したがいろいろと困難があった。
やってみるとわかったのは、見ることだけがバードウォッチングではない、とい
うことだった。
ここから本文です。
僕は2021年5月にあった事故で大けがをして、左眼を失明することになっ
てしまった。
意識がはっきりとしてきてリハビリができるようになったころ、僕は左眼に眼帯
をしていて、けがで一時的に見えなくなっているものだと思い込んでいた。
しかし、ある日「左眼は失明している」ということを聞いて、絶望しそうにな
ったのである。
その上、右目は見えてはいるけれども視野が狭くなっていることがわかった。
食事をしっかりと食べて、歩行訓練をし、白杖の扱いにもすぐに慣れて退院する
ことができた。
ただし、その後も通院でのリハビリが少し続いた。
視覚障害者になってしまったため、京都ライトハウスに通うことにもなった。
退院後に職場へ復帰することを試みたが、うまくいかなかった。
片目であり見えにくいことで、バスに乗り間違えそうになることもあった。
そして、歩行中に枝や石などの障害物や、段差やくぼみに注意しなければならな
い。
趣味のバードウォッチングも再開したがいろいろと困難があった。
視野が狭くなったため、眼で見て鳥を見つけるのが難しくなったうえ、見つけた
鳥を観察する難易度も上がった。
また、僕が見えづらそうにしている様子を快く思わない人もいた。
見下すような行動や発言をする人がいて、悔しい思いをしたこともある。
事故や病気でお前らも視覚障害者になってしまえと呪うような気持ちになったこ
ともある。
このような困難が複数あったが、何もかも終わりというような絶望的な状況で
はなかったのである。
片目が見えないため、視野が狭くて、距離感や立体感の把握も困難である。
そして視力の残った右目ももとからあった近眼によって裸眼では0.1未満、眼
鏡をかけても0.5程度の視力しかない。
けれども、双眼鏡の視野に入れてピントを合わせれば、遠くの鳥の姿形と色や模
様ははっきりと確認できるのである。
また、見ることだけがバードウォッチングではない。
鳴き声を聞くこともかなり重要なのである。
鳥がどのあたりにいて、何の種類なのか、鳴き声も重要な手掛かりとなる。
外見がそっくりでも鳴き声に特徴があって、それが識別する上での重要なポイン
トとなることも多い。
鳴き声の種類も重要である。
繁殖期に出すさえずりは、求愛や縄張りの主張、侵入者やライバルに対する警告
や威嚇の意味を持つ。
普段から雌雄関係なく出す地鳴きからも状況の把握ができる。
威嚇や警戒の声を出していれば、タカやヘビなどの捕食者や、似た餌や環境を利
用する競争相手がいると推察できる。
仲間を呼ぶ声を出していれば、餌場や水場に同種や近縁種の仲間を呼び寄せよう
としていることがわかる。
ヒナや幼鳥の声が聞こえた場合なら、繁殖していることが分かり、ヒナや幼鳥を
探す手掛かりにもなる。
双眼鏡の視野に捕えることさえできれば、片目でもしっかり姿を見ることがで
きる上、鳴き声を聞くことの重要性を再認識することになった。
見えづらさによる困難は一生ついて回るが、これからもずっと趣味のバードウォ
ッチングは続けていこうと思う。
そして、就職が決まって貯金がたまったら北海道や小笠原諸島、奄美大島や石川
県の舳倉島などにバードウォッチングのための旅行へ行きたいと思っている。
編集後記
バードウォッチングで鳥を見つけるのに、見えにくいことはバリアになります
。
好きなことをやるにも、見えない・見えにくいことが障壁、バリアになる場合が
ありますね。
このバリアをどうしたら克服できるのか。
それに取り組む中で、ブルーバードさんは趣味を深めて、まさに心の眼でも鳥を
見る術を習得されたように思います。
この術とともに、うまく見つけることができた鳥の様子を双眼鏡を通して実際に
見たときのよろこび、楽しさ、 …ひょっとすると以前よりも大きかったりする
かも。
事故での大けが、絶望の淵、そこからの再出発には、つらいことや苦労するこ
とが何度もあったことと思います。
それだけにこれからも、よろこびや楽しさのありかに気づく術を、1つまた1つ
と見つけてもらいたいなぁ。
ブルーバードさんとともに私達もそうしたいなぁと思います。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2024年12月6日
☆どうもありがとうございました。