活動紹介
メルマガ色鉛筆第348号「やりたいことをやるために!」
タイトル やりたいことをやるために! 私と編み物物語
ペンネーム スカイグラデーション(30代 女性 全盲)
レポートの要旨です。
編み物に興味を持ったきっかけから、少しずつ作れるものが増えていって、こ
の趣味が教えてくれたとても大切なことまでの私の物語です。
全盲の私が編み物をするとどんなことが起こるのでしょうか。
私自身も答えを知らないまま、それでも一歩ずつ進んで行きました。
ここから本文です。
10年ほど前のとある冬の日、知り合いに誘われて遊びに行った観光牧場のウー
ル工房。
アクティビティのひとつに「かぎ針編みで座布団をつくってみよう」というもの
があり、興味を引かれたのが全てのはじまりでした。
「私、全盲なんですけど編めるもんですかね…?」と、恐る恐る尋ねる私。
「まぁ、とりあえずやってみる?」と工房のおばちゃん。
かぎ針を握らせてくれて、閑散期でほぼ貸し切り状態だったとはいえ、半日にわ
たり文字通り手取り指とり根気強く私につきあってくれました。
そして数時間後、「座布団」を作り始めた私の手には…。
「手のひらサイズのコースター」がちょこんと乗っていたのでした。
「この(編みきれなかった)糸とかぎ針あげるから家でやってごらん」
と、ありがたくも家でも編めることになり
「この時期は空いてるから、また行こう」
と誘ってくれた知り合いのお言葉に甘え、せっかくやりはじめたのなら極めてみ
ようと、月に1~2回そのウール工房にお邪魔するようになりました。
初めて手掛けた大作は、かつて私のお道具袋やら何やらを作ってくれていた祖母
へプレゼントするためのクッションでした。
編み始めてから約2ヵ月、できあがった時の感動は忘れられません。
祖母も母も、「手芸? そんなん既製品でいいだろ」と豪語していた私が手芸に
のめりこむとは思っていなかったようです(笑)。
ところで…。
「そもそも見えない状態でどこまで編んだかわからなくならない?」とか、「編
み物のレシピってそもそも図だから使える教材がないのでは?」という疑問が私
にも当然ありました。
人のめぐりあわせに恵まれたのはもちろん、とても幸運でしたが、「初心者」か
ら脱却して自由に作品を作るためには、やはり自分で使える教材が必要だと感じ
ました。
世は情報社会。ネット検索してみると、けっこう同じようなことを考える方はい
るもので、
サピエ図書館には編み図の点訳本があるではないか!! (今のところ、音声の
ものはないようです…。)
図で表現されたものをことばに直して書かれた説明を参考に、今では小物からセ
ーターまで編めるようになりました。
ユーチューブの手芸好きさんによる動画には、言葉で丁寧に説明しながら編んで
いる様子を公開している方も多いので、それらも参考になります。
とはいえ、見えない、見えにくい状態である以上、教科書通りの方法ではうまく
いかず、工夫が必要な場面も出てきます。
私が一番大変だったのはこの部分で、かぎ針は「えんぴつを持つように持って」
針先(かぎの部分)で毛糸を掬うように引っ掛けますが、見えない状態でこの手
順は難しいので
「針を白杖を持つように握って、伸ばした人差し指で針先を確認しながら糸をひ
っかける」ようにするとうまく編むことができます。
牧場での試行錯誤で、これにたどりつくまで苦労しました…。
ちなみにこの方法、英語ですが、アメリカの全盲のシスターがユーチューブで紹
介していました。
針のおしり部分を胸や腹に固定するような感じで押さえると、安定してかなり編
みやすいです。
上達してくると欲が出て、「せっかくならかわいいものにしたい!」と思いつつ
でも、毎回ビデオ通話機能を使うのは面倒だし…。
と、いろいろ試してみると、今のAIはそれに答えてくれるようになっていまし
た。
アプリ「ビーマイアイズ」(be my Eyes)の画像解析を使えば、配色
を細かく、毛糸も並べた順に何色かを説明してくれます。
おかげで、ボーダー柄やワンポイントなどを取り入れられるようになり、作品の
幅がぐっと広がりました。
と、語りだすと止まらなくなるので…。
私がこのできごとで学んだことは、「やりたい」を叶える一番大事なエッセンス
は「とりあえず実行してみる」そのはじめの一歩だと思います。
同じようにがんばっているどこかの誰かが、そのかけらをそっと、どこかに置い
ておいてくれているかもしれません。
なので「まずはちょっと検索」してみよう♪
編集後記
質問、どこまで行けるやろ?
答え、行けるとこまで。
課題、ここどうしたらよいかな。
工夫、うーん、やっぱりあかん。
別の 工夫、やった、うまく行った。
こんな展開は、まさに物語。
その主人公はスカイグラデーションさんであり、何かに取り組むあなたです。
スカイグラデーションさんは書いておられます。
「やりたい」を叶える一番大事なエッセンスは「とりあえず実行してみる」その
はじめの一歩。
この一歩が自分の世界を広げてくれるよう願います。
さらにスカイグラデーションさんは書いておられます。
同じようにがんばっているどこかの誰かが、そのかけらをそっと、どこかに置い
ておいてくれているかもしれません。
この世界に私達は、いっしょに生きているのですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2024年10月25日
☆どうもありがとうございました。