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活動紹介

メルマガ色鉛筆第346号「音楽と出会えて良かった ~チャンスはハプニングから~」

タイトル 「音楽と出会えて良かった ~チャンスはハプニングから~」
ペンネーム ブルーベアー(30代 男性 全盲) 
レポートの要旨です。
 楽しいこと、とりあえずやってみる、
そうやって音楽と人との出会いを重ねてきたブルーベアーさん。
音楽がくれた喜び、そしてさらなる挑戦とは?
★ここから本文です。
 私は、3人兄弟の末っ子として、二卵性双生児で生まれました。
生後間もなく病気で全盲となりましたが、「なんでもやらせてみよう」という両
親の下、怖いもの知らずの幼少期を送りました。
盲学校の幼稚部では、飽きることなく雲梯(うんてい)に夢中になり、
補助輪の自転車に乗りたいと先生に懇願し、運動場で練習の日々。
怪我は絶えず、周囲にずいぶん心配をかけました。
喘息もスイミングに通ったことで、小学校高学年には症状が出なくなりました。
 子どもの頃の楽しみの一つ、それは寝る前に兄弟みんなで母と過ごす時間でし
た。
母は昔話やイソップ童話などの読み聞かせをしたり、童謡や子供向けの歌を
毎日少しずつ歌ってくれました。
電車好きだった私は「はしれちょうとっきゅう」がお気に入りでした。
そして、近くの音楽教室で約5年間、リトミックとピアノを習ったことが
私の音楽の原点になりました。
 小学1年で点字を習ってからは、歌詞を読みながら歌を歌うことが
目標の一つになりました。
盲学校へは自宅から通っていましたが、週に一度、寄宿舎に泊まることを認めて
いただき、小学2年から入舎しました。
最年少の私を、お兄さん・お姉さんの世代から、親よりも年上の大先輩まで、多
くの方がかわいがってくださいました。
その年の冬、よく聞いていたPUFFYの曲でカラオケ大会に出場しました。
まるでアイドルのような大歓声を浴び、その嬉しさは格別なものでした。
 高校は地域校への進学を選び、軽音楽部に入部しました。
ボーカルに憧れていたのですが、ライブで耳にした女性ボーカルの先輩方の声に
圧倒され、「これは楽器でなんとか付いていくしかない」と、決意を新たにドラ
ムに挑みました。
 軽音楽部は3学年で100名を超える大所帯です。
一つのライブに出演するにも選抜があり、毎回ぴりっとした緊張感が漂っていま
した。
演奏の練習はもちろん、MC(司会進行)の準備の大切さ、そして耳を傾けても
らう方々への思いを身をもって教わりました。
演者とそれを支える人への感謝について叩き込まれました。
人間関係にも恵まれ、周りに支えられた3年間でした。
 
引退ライブを翌日に控えた3年生の8月、下校途中に交通事故に遭いました。
わき見運転のタクシーと正面からぶつかってしまったのです。
徐行していたとはいえ、トラックに跳ね飛ばされたような衝撃があり、
頭からの落下を防ぐのが精いっぱいでした。
どーんという音に近所の方が飛び出して来られ、助けてもらいました。
手放した白杖はぐにゃぐにゃになり、あちこち傷だらけで、膝の靭帯を痛めてい
ました。
装具で固定し、3か月間不便な生活をしました。
骨折を免れたのは奇跡だと医師に驚かれました。
強行した翌日の引退ライブは苦しい演奏になりましたが、
入部の頃憧れていたボーカルとしてステージに立ち、
悔いなく部活を締めくくることができました。
この経験は私にとって大きな自信になりました。
 
これで、音楽を楽しむことも暫くないかと思っていた数か月後、
「近くの中学校で3年生に向けて授業をしてみないか」と担任の先生から提案さ
れました。
自らの体験を伝えることへの戸惑いと、多くの人が眠くなってしまうのではない
かという不安からお断りすることも考えていました。
けれど、「悩み抜いて地域校に進み、事故でしんどい思いをしたことは私にしか
話せない」
という殺し文句に諭され、講演にチャレンジすることにしました。
 当日までの約2か月間、中学校の先生が何度も高校に足を運んでくださいまし
た。
「退屈な場にしたくない」という私の思いに共感し、話だけでなく、
代表の生徒に手引きの体験をしてもらうことや、パソコン・携帯電話の実演をす
ること、即興の質問コーナーを作ること、一人一人に名前の点字シールをプレゼ
ントすることなど、私のアイデアを形にできるようサポートしていただきました

そして、授業の最後に歌を歌うことも決めました。
私は点字の歌詞が必須で、喉は弱く、音域も狭いのでコンプレックスだらけでし
た。
「だからこそ意味があるんだ」と再度背中を押され、担任の先生が手話を付けて
くださることになりました。
講演本番では見えなくても真剣に耳を傾けてもらっていることを肌で感じること
ができ、
最後には割れんばかりの拍手をいただきました。
気恥ずかしさ以上に、これ以上ない達成感と喜びを味わいました。
 その後も、大学時代、就職後の現在に至るまで、
毎年、小中学校での講演の機会をいただいています。
歌への思い入れが年々強くなり、忘れられない経験も積むことができました。
先生からの発案で吹奏楽部の伴奏に載せて歌い、数年後、
共に演奏した一人が母校の後輩として声をかけてくれたこと。
「U.S.A.」や「パプリカ」、「鬼滅の刃」など、話題の曲を取り入れ、
児童たちと大合唱したこと。
コロナ禍で卒業式の歌が中止され、私の歌った曲が卒業祝いになったと
先生から手紙をいただいたこと。
恩師をテーマに選曲し、生徒会長の涙の挨拶を聞いたこと。
そんな時、自分自身が「生きていて良かった」と心底感じます。
大げさでなく、皆さんからの思いを受け取る瞬間、私の心は喜びで満たされるの
です。
 
数年前からオンラインの企画などで自宅で収録した歌や演奏を披露する場ができ
ました。
そんな折、ある雑誌で「インスタコード」という楽器の存在を知りました。
ウクレレのような形をしていて、コードではなく、
数字を押して演奏する楽器だと紹介されていました。
 「人生初の弾き語りができるかもしれない」「これは触ってみるしかない!」
と、
開発者の方へ相談のメールをしたところ、1週間後に会うことができました。
実機を手に取り、言葉での説明を頼りに30分弱。
大好きな曲、森七菜さんの「スマイル」をワンコーラス演奏できた時には
鳥肌が立ちました。
歌が中心だった私と音楽の結びつきが、より強くなった気がします。
 来年春には、「かんぷれ」という新しい楽器が
クラウドファンディングの成功を受けて誕生します。
まだまだ道半ばの可能性を追いかけて、どんな世界が待っているのか、
今から楽しみで仕方ありません。
編集後記
 音楽が好き、やってみたい、できるかもしれない、
これならどうだろうか、こうしてみたらどうだろうか、
それは自分へ、そして、楽器への問いかけだったんですね。
音楽との結びつきはさまざまな可能性とのご縁なんですね。
このレポートを読んでおられる皆さんからも「うんうん、そうだそうだ」
というお声が聴こえてきそうです。
新たな一歩である「かんぷれ」とはどんなものなのか、また教えてくださいね。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:  京都府視覚障害者協会
発行日:  2024年9月27日
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