活動紹介
メルマガ色鉛筆第342号「私たちのところへ来てくれてありがとう」
タイトル 私たちのところへ来てくれてありがとう
ペンネーム 茄子大好きマン(20代 女性 弱視)
レポートの要旨です。
恋愛、結婚、出産、それって私にもあるのかな?
無理なのかな?、そう思っていたころがありました。
それなのに、今、お腹はまん丸と膨らんでいて、もうすぐ私はママになります。
自分のことなのに驚いています。
これまでのこと、これからのこと、あるがままの今の私の気持ちを書きました。
★ここから本文です。
夫とは大学生の時に知り合った。
この人ならお付き合いをしてもいいかなと感じたのは、
最初に2人で遊びに行き、昼ご飯を食べた際のことだった。
メニューが見えなかったので、
彼に気づかれないようにこっそり拡大鏡を使った。
彼から、「それ何?虫眼鏡?へぇー、見せて!」と興味深々で聞かれた。
少し躊躇しながら拡大鏡を見せると、
「へえー結構大きく見えるんやー、すごいすごい」と、
初めて理科の実験で見た小学生のような感想が飛んできた。
その時私がおどおどしていたからだろうか、
彼は「別に隠さんでいいやん、俺別にそういうの気にしないから」と言った。
私は、そんな彼の言葉に驚いた。
そのころの私は、仲の良い友人以外には眼のことは伝えておらず、
できるだけ知られないように隠し、”普通”を装っていた。
これまでありがたいことに、学校などでは配慮などを
たくさんしてもらってきたため、眼のことを知られたことで
嫌な思いをしたことがあるわけではなかった。
その当時の私は、配慮への申し訳なさも感じていた。
そんな自分に対しての劣等感もあった。
当然ながら、いつもどこか特別視や特別対応されている感じもあった。
そんなことのすべてが重なってプレッシャーを感じてもいた。
そのため、できるだけ”普通”を装いたかったのだ。
拡大鏡を使っていることを他人に見られることも恥ずかしいと思っていたため、
きっと彼もそんな私を見て嫌悪感を抱くと思っていた。
だから、私は彼の思いがけない反応にとても衝撃を受けた。
自分自身が一番自分のことを恥ずかしいと否定していたことに
気づいた瞬間でもあった。
この人なら見えにくさの部分も含めて、
私のことを自然に受け入れてくれるかもしれない、
そんな気持ちが私の中に生まれた。
その後数年の交際を経て結婚した。
夫のご両親にも私の眼のことは事前に伝え、
有難いことにご両親も抵抗なく受け入れてくださった。
結婚して2年後に、妊娠がわかった。
夫と一緒に最初の検診に行った帰り道、
夫から「元気で健康な子が生まれるといいな」と言われた。
あまり喜んでいる様子が感じられなかったため、
「嬉しくないの?」と聞いたところ、
「嬉しいけど、眼の病気とか何もなく健康に生まれてきてくれるかが心配」
と言われた。
できればどこにも病気や異常がなく、健康で元気な子が生まれてきてほしい、
そう考えるのは自然なことだろう。
その部分では私も同じ思いだ。
でも、眼の病気に限らず、他の病気や障害を持って生まれてくる可能性も
あるため、私は眼の病気の遺伝についてあまり気にしていなかった。
結婚前に、もしかすると眼の病気が子どもに遺伝するかもしれないことは
話していたため、夫は納得してくれていると思っていた。
確かに、眼の病気があることで、苦労をしたこと、悔しいこともたくさんあった
。
でも、病気があったからこそ出会えた人もいたし、
仕事でのご縁などもたくさんいただいた。
私自身、今は自分自身が不幸だとは思っていない。
そのため、夫が素直に喜んでくれなかったことが悲しかった。
今までの私の人生が不幸だと思われ、否定されているようにすら感じた。
もちろん、夫にはそんなつもりはないこともわかってはいるのだが。
「一度確定診断を受け、遺伝する可能性についてきちんと説明を聞いた方がいい
」
と母親からも言われ、主治医に相談した。
「遺伝に関しては、もしその病気だったとしたら、
50%の確率で遺伝する可能性はある。ただ、確定診断をつけるかどうかは、
診断をつけた後、妊娠中に子どもの遺伝子検査をするのか、
その結果、子どもに病気があるとわかったときにどうするのか、
家族でよく話し合った上で決めた方がいい」
と丁寧な説明を受けた。
最初夫は「もし病気があるとわかったときは子どもはあきらめたほうがいいので
はないか」
という意見だった。
私は、たとえ病気があっても生んで育てたいと思っていることを伝えた。
結果、私たち夫婦は確定診断はつけず、子どもの遺伝子検査もしないと決めた。
今、妊娠の経過は順調で、
夫婦ともにもうすぐ生まれてくるこどもに会えることを楽しみにしている。
ただ、最近私の眼の状態が悪くなってきているため、
子育てには少し不安はある。
周りの人の協力を得ながら、無理なく安全に子育てしていきたい。
おなかの中で今も元気に動きまわるベビーへ
検査技師の方に「将来はシンクロ選手ですね!」と褒められたよ!
私たちのところへ来てくれて本当にありがとう。
まずは無事に元気に生まれてきてね。
そして、かけがえのない毎日を一緒に過ごせることを楽しみにしているよ。
どんな名前をつけようか、夫婦で絶賛討論中。
ん~決まりそうにない(汗)。
ここまで読んでくださった皆様
特に恋愛や結婚、出産など不安を抱えておられる皆様へ
私自身も恋愛や結婚については、中学生~高校生くらいの頃から、
どこかなんとなく自分には無理なのではないかとあきらめていました。
なので、今こうして結婚して子どもを授かっていることに
自分自身が一番驚いています。
本文にも書きましたが、
確かに色々な人はいて、病気や障害に対して嫌悪感を抱く人もいるかもしれませ
ん。
一方、”そんなこと”を案外気にしない人もいて、
結局は自分自身が一番自分のことを否定して、殻に閉じこもり、
周りの人をどこか敵対視していたのかもしれません。
これは私が、かつての私のことをふりかえってみて思うことです。
私自身もまだすべてを受け入れられているわけではありません。
だから、決して偉そうなことは言えません。
前に進むためには、まずは自分自身を少しずつ認めて受け入れて、
堂々としていることが大切なのかなと、
そんなことを思いながらお腹をなでなでしている今です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
編集後記
ただただ愛しい、それが命の重さ、絆の強さなんですね。
このレポートをかつての自分に重ねながら読まれた方もおられるかもしれません
。
また、恋愛中の方、子育て真っ最中の方、不妊治療されている方など、
いろんな状況の中で読んでくださった方もおられるでしょう。
心の中では揺れることがあっても、
堂々としっかりと地面を踏みしめるような思いでいることって、
それだけで少しずつ自分を抱きしめることになるのかもしれません。
どうか茄子大好きマンさんのご家族の上に笑顔の一歩がありますように。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2024年7月19日
☆どうもありがとうございました。