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活動紹介

メルマガ色鉛筆第262号「窓辺にて1」

タイトル 「窓辺にて1」
メルマガ色鉛筆編集チーム
 こんにちは。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
今月よりリレー企画「窓辺に手」がスタートします。
タイトルをしりとりでつなぎながら、いろんなジャンルの文章が登場します。
今回は「点字、地味、ミミ」とバトンがつながれました。
窓を開いてひろがる世界、
見えない・見えにくい中で広がる世界をお届けします。
タイトル 点字
ペンネーム フェルメールブルー(70代 女性 弱視)
 私は67歳で視覚障害者になった。
68歳から京都ライトハウスで2年間点字の訓練を受けた。
しかし、全く進歩しなかった。
6点に泣かされた。
そのうち6点に見放された。
イヤイヤ自ら見放したのだ。
とにかく点字と聞くと、途端に左脳が拒否するのだ。
ほどなく、まわりの方々はすらすら読めるようになっていかれた。
いささか焦ったが復讐はしなかった。
 いつの間にか左手人差し指の指紋が薄くなっていた。
つるつるの指先を触りながら、これでは読める筈がないと自分を納得させた。
少々気が楽になった。
その上、点字の訓練が始まると何故か睡魔が襲ってくる、
ギブアップだ。
 世の中の方々は白杖を持っていたら点字は読めるものと信じておられる。
これはとんでもない間違いである。
駅やレストランで案内をお願いすると「点字で案内しています」と返されること
があった。
緊張で心臓がピクピクとした。
私は「点字は読めません」と申し出た。
おそらく先方は怪訝なお顔をされていただろう。
早いもので点字訓練を終えて、2年の歳月が流れた。
今、改めて6点に触れてみた。
やはり、チンプンカンプンだった。
先生もボランティアさんも6点で泣かせた、困らせた私である。
先生とボランティアさんには改めてお詫びと感謝を申し上げたい。 
本当に有難うございました。
「古希過ぎし 点字ふれるは 泣き寝入り」
ーー
 泣かされつつも思わず寝てしまった「点字」との日々、ユーモアな川柳でバト
ンがつながれました。
お次は「地味」からひろがる言葉の窓をどうぞ。
タイトル 地味
ペンネーム まじめに桃色(50代 女性 弱視)
「地味」という言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか。
多くの人が華やかでなく、暗い目立たないというものを想像されるでしょう。
地味な色や柄、というように洋服を表したり、人の性格や好き好みを表す時にも
使われています。
この「地味」はそんなにマイナスのイメージを持つものでしょうか。
辞書で「地味」という言葉を調べてみました。
華やかさ、けばけばしさがないこと、
態度、行動が控えめで人の目を引かないこととあります。
また、「地味」の「地」は生来の物、つくりものでないという意味です。
「味」は感触、物事を深く知ることによってわかる面白み、素晴らしさ、味わい

気が利いているさま、生意気であるという意味があります。
二つの漢字の持つ意味合いから「地味」は作り物ではない感じであることがわか
りました。
生来のもの=作り出した派手さがない、目立たないということなんですよね。
 私は自分は「地味」だと思っています。
華やかな人を見ると羨ましいなあと思うこともあります。
でもこれまで培ってきたものを変えていくにはそれなりのエネルギーがいるし、
無理をしてもしんどくなってくるはずです。
それなら「地味」な中に、私らしさをだしていくほうが生きやすい気がします。
世界にたった一つの私らしい花を咲かせられたらいいなあ。
焦らず、他とくらべずにいたい。
それが地味と評されるものでいい。
私らしさに胸を張るから。
ーー
 生来のまま、それが「地味」、それが私らしさ、晴れやかにバトンがつながれ
ました。
お次は「ミミ」からひろがる言葉の窓をどうぞ。
タイトル ミミ
ペンネーム ブルーな嵐、コバルトの風(40代 男性 全盲)
私は自室で、とある一つの古いホームビデオを流していた。
あどけない無邪気な二人の少女の、
活発に動く音と歓喜の声が聞こえてくる。
ミミとメメ。かけがえのない愛娘たちが、
近所の小さな公園の遊戯具で楽しく遊んでいる様子を映したものだろうか。
私は昔の記憶をたどり、噛みしめながら、しばらく懐古に浸っていた。
やがて、ため息が漏れた。
映し出されている少女の音と声は、もう今は一つしか聞こえないからだ。
メメは、10年前に空に昇ってしまった。
通学時の事故だった。
突然の出来事に、私はその現実を受け入れられずにいた。
失意のどん底に落ちた私は、やがて酒におぼれ、病に倒れ、目を失った。
一方、ミミは強く儚く生きている。
今でも鮮明におぼえている。
メメとの別れの日、彼女は妹の写真を目の前にして、
ひとすじの大粒の涙を流した。
「メメは私の中にいる」
その透明かつ聡明な太いラインに、彼女の小さな決心があった。
そのときの彼女の心情は、どんなものだったのかはわからない。
幼心なりに妹の分まで生きよう。いや、ともに生きようと。
自分自身をマインドコントロールしていたのかもしれない。
彼女の凛としたしんの強さがそうさせたのかもしれない。
 時は過ぎ、ミミは道を踏み外すこともなく、
元気に充実した青春時代を送ってくれていた。
けがによりスポーツ特待生の道を諦めなければならなかった。
挫折、葛藤を味わう日々もあったが、
彼女は振り返ることもなく先を見据え続けてくれていた。
ミミは、男やもめで視覚障害者になっただめな父親の私に、
いつもあたたかく優しくそばに寄り添ってくれていた。
彼女は、見えなくなった私にあらゆる情報を提供してくれていた。
流れゆく世の自然や風景、あふれる音や声を、
彼女は色や言葉で私に耳打ちしてくれる。
柔らかな母性を感じさせる彼女の声のトーンが、
私の聴覚をじんわりと心地よく刺激してくれる。
「お父さんに似なくてよかったわ」と、憎まれ口をたたくも、
ミミは身も心も美しい女性に育ってくれているようだ。
さらに時は過ぎ、彼女が嫁ぐ日を迎えることになる。
幸せに満ち足りた声色を私は体中で感じていた。
愛娘を手放すことの不安や寂しさはなぜか微塵もなかった。
やっとミミらしく人生の階段を昇っていくんだと。
逆に感謝の言葉が私には切ない。
何もしてあげられなかったことに悔み償うばかりだ。
私は今、流れている映像を聞きながら、はなむけの言葉をささやくことしかでき
ない。「ミミよ、幸せをどんどん積み上げていけ」と。
ーー
 ミミと聞くと、目、鼻、耳、口のように体の一部を連想しがちですよね。
その連想を生かしつつ、メメちゃんを登場させた創作の窓がひろがりました。
 さて、次回の窓辺から、どんな世界がひろがっているでしょうか。
シリーズ第2弾でご一緒しましょう。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2022年4月15日
☆どうもありがとうございました。

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