活動紹介
メルマガ色鉛筆第253号「コツコツと歩く」
タイトル 「コツコツと歩く」
メルマガ色鉛筆編集チーム
こんにちは。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
今回は「歩行」をテーマに寄せられた文章2編をお届けします。
偶然にもこの2編の文章、どちらにも「コツコツ」という表現が入っています。
それぞれの「コツコツ」の音、思いを共有します。
タイトル コツコツ
ペンネーム まじめな桃色(50代 女性 弱視)
私の好きな場所の一つがデパート。
何も買わなくても行くだけで豊かな気持ちになる場所。
そんなデパートの中に入っている靴のブランド店をのぞくと、色とりどりの洗練され
た靴たちが「私すてきでしょ」とウインクしながらポーズをキメてこっちを見ている
。
その靴の中でもハイヒールがいかに多いか。
「ああ、こんなの履いてみたいなあ。わあこれもすてき」なんて思いながらそっと手
に取る私。
でも、すぐに思いなおす。
こんなの履いて歩けないなあ。階段怖いしだいぶ前かがみだし、こういう靴はさっそ
うと歩けないときれいじゃないし。
コツコツというハイヒールの音を聞いて、自分が履いて歩いているところを想像し
たこともある。
ハイヒール、女性だからやっぱり履いてみたい、だけど、やっぱり履くのは怖い。
なので、いつもは安心して歩けるべた靴を探してまわる。
まあ、これでいいや、そうしてただ歩くためだけの靴を選んでいた。
でも、やっと見つけた、自分が納得して履ける靴を。
スーツにもパンツにもワンピースにも合う靴。
コツコツという音はしないけど、これまでのべた靴じゃない。
履いて歩くことがうれしくなる、そんな私のお気に入りの靴。
これを履いて背筋を伸ばし、階段も知らない場所も、もちろん好きなデパートも白杖
を片手に女性らしく優雅に歩きたい。
きっとできるよね、私。
だって、今日はお気に入りの靴と一緒だもんね。
ーー
タイトル 歩く
ペンネーム 山猫と山吹(70代 女性 弱視)
よちよちと歩く
いづめを出て 短いかわいいあんよで
伝い歩きをする 家の中を
一歩踏み出す 庭へ
歩き回る 村の中を
のんびり歩く
なだらかな畑と里山の間を縫う道を
毎日歩く
毎日通う
守られた小さな世界で
せかせかと歩く
仕事 家事 子育て 介護 その他
時間とのやりくりだ
体力とのたたかいだ
おずおずと歩く
曇り空 雨降り
まぶしい真夏の昼下がり
黄昏時
ゆっくりと確実にやってきた見えにくさ
これ以上 進んだらどうしよう
「君の目の代わりになるよ。見えなくなったら盲導犬になるよ。」と言う連れ合いも
私も
随分年をとった
コツコツと歩く
何年後かの 闇の世界に
恐れることはない
悲しむことはない
卑屈になることはない
白杖をもった私が
背筋を伸ばし 颯爽と歩いているだろう
時間が許すまで
ーー
二つの「コツコツ」の音、どうでしたか?
どちらも歩く自分へ語りかけておられました。
見えない・見えにくい中で歩くことには困難があります。
それでも歩きます。
歩きたい自分がいます。
そして、こんなふうに歩きたいという自分を描きます。
実は桃色さんと山吹さんは新しい「歩き」をはじめたばかりのお二人さんです。
手に白杖からの一歩です。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2022年1月14日
☆どうもありがとうございました。