活動紹介
メルマガ色鉛筆第3号 「触って感じて、あきらめない心を育んで」
タイトル 触って感じて、あきらめない心を育んで
ペンネーム 陽だまり色の未来(40代 女性 弱視)
レポートの要旨です。
はじめまして、陽だまり色の未来です。
ほんわかと温かい希望を、毎日の暮らしの中に見つけたい、そんな四葉のクローバー探しみたいな気持ちで、レポートを書きました。
今回私は、点字との出会いから、自分がどんな自分と出会ったのかについて考えてみました。
点字を読むことで感じたこと、生まれたことについてお話します。
ここから本文です。
私は生まれつきの弱視ながらも普通教育を受けたことで、周りの人と自分の違い、越えられない壁が何かということをいつも感じながら生きてきました。
そんな中でも、工夫したり予習したり、時には見えにくさを隠したりすることで「みんなと同じにできる」ということは、私にとって最も大切なことでした。
見えないゆえの悲しさを、絶対に誰かに見せたくないという堅固な姿勢を支えに、私は30歳まで過ごしました。
結婚後、子供への遺伝について考えるようになり、夫婦で大学病院を受診しました。
それがきっかけとなり、自分のハンディが障害者に値する重いものであることを知りました。
「見えにくかったし、困ることもいっぱいあるけれど、私って障害者って言われるほど見えない人だったの?」
そんなことも知らずに過ごしてきたことに、私は驚きました。
困惑と憂鬱、考えても考えても光が見えない時間を過ごす私の元に、点字講習会のお知らせが届きました。
「私って点字を学ばなきゃいけない人なの? 見えない人の仲間入りするの?」
一枚の葉書をじっと見つめながら、私はひどく落胆しました。
でも、こんなままじゃ嫌だという焦りもあり、とりあえず点字を体験してみようという軽い気持ちで参加のお返事をしました。
これが、仲間との出会いにつながる「はじめの一歩」となりました。
点字はとてもおもしろく、眼に負担をかけることなく文字を認識できるということに、私はシンプルな感動を覚えました。
また、点字の分かち書きの成り立ちそのものにもおもしろさを感じ、新たな私の文字をもっと学びたいという欲が湧いてきました。
京都ライトハウス生活訓練部で1年間じっくり勉強できることを知り、私は迷うことなく積極的に行動していきました。
この点字への欲をきっかけに、多くの仲間と出会い、白杖への抵抗を少しずつ受け入れ、心と技術の両輪が揃い、私は障害を持って生きる自分と出会いました。
見えない自分の悔しさを隠す孤独な姿勢から、まさに180度の転換です。
自分の障害を明らかにした上で自分のできることを積極的に習得し、周りにも「私にできること、できないこと」をアピールしていくことができるようになりました。
どちらの生き方も私らしい私が、それぞれの時間の中にいます。
しんどかったことも、孤独だったことも、私にとって愛しく、かけがえのない時間です。
でも、今は自分の弱さや無力さを相手に伝えることの勇気が持てるようになりました。
私は自分が支えられて生きる存在であることを感じます。
この喜びは私の大きな支えです。
「助けてもらってありがとう」、この体験を重ねる日々の中で、私にも誰かの小さな光になりたいという思いが自然に生まれました。
現在、中途視覚障害者の方に点字触読の指導をしています。
不安や迷いの中にあっても、できることをやってみようという思いで6点(点字)を感じようとされている目の前の仲間と、
「見えないことは全てを失うことではないこと」を、点字を通して分かち合っていきたいです。
息子は、私が点字を読む姿から「こうすればママにもできるんだ」を考えられるようになりました。
一見困難に思えるハードルも、やり方次第でどうにかクリアできること、簡単にあきらめないで、その前に考えてみることを、触れて理解する日常のやりとりの中で感じているようです。
点訳絵本を読んでもらったこと、一緒に勉強したこと以上に、息子は別の角度から私を見ていました。
子育てにおいても、「見えないからできないはない」といつも前を向いて、母子の二人三脚でたくさんのトライをしてきました。
息子の暖かなまなざしと、点字という「触れて感じるもう一つの文字」があったからこそ、あきらめずに私たちは歩けたのだと思います。
今後、少しずつ光を失いつつある時間の中で、幾度も迷い苦しむことがあるでしょう。
でも、そんな時に、あの一枚の葉書を手にした日のことを、そこから始まった時間のことを、幾重にも重ねられた感謝の光を、私は思い起こさずにはいられません。
それは真夏のまぶしい光ではなく、夜空に浮かぶ月のような静かな光で、眼を閉じても見える希望の光です。
それは、どこにでも持っていける光です。
そして、「こうすればママにもできるんだ」という未来を描く息子の心を宝に、これからも強く自分を律して歩いていきたいと思います。
点字との出会いに感謝をこめて。
編集後記
「私って点字を学ばなきゃいけない人なの?」
手元にとどいたときにそんな落胆をもたらした1枚のはがき。
でも、それをきっかけとして<多くの仲間と出会い、白杖への抵抗を少しずつ受け入れ、心と技術の両輪が揃い>、
<障害を持って生きる自分>と出会えたと言います。
さらには、<私にも誰かの小さな光になりたい>という思いが自然に生まれ<眼を閉じても見える希望の光><どこにでも持っていける光>の存在に気付けたと言います。
人生は日々訪れるささやかな出来事の積み重ね。
1枚のはがきもその一つです。
たとえそれが一見マイナスの出来事に思えても、長い目で見れば人生の手応えをもたらしてくれる…そう思うと元気が湧いてきます。
ーー このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2013年12月13日
☆どうもありがとうございました。