活動紹介
メルマガ色鉛筆第173号シリーズ 「コーラスあおいとり」3
シリーズ 「コーラスあおいとり」3
メルマガ色鉛筆編集チーム
こんにちは。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
視覚リハビリテーションの中から生まれた活動を共有します。
京都ライトハウス鳥居寮には文章講座という訓練科目があります。
グループセッションを通して自己表現をワイワイ楽しむ時間です。
そんなにぎやかな講座を修了された方が集う場があります。
文章講座修了者の会あおいとりです。
文章を書いたり読んだりを重ねながらつながっておられます。
あおいとりから生まれた作品テーマ「月」に現役訓練生さんが飛び入り
参加されました。
OBさんと現役さんの言葉のコーラスをお届けします。
見えない・見えにくい、それがきっかけで同じふるさとを持つ人たち。
そんな皆さんの思い、ほんのりとした鳴き交わしをどうぞ。
あおいとりレポ3 十六日
ペンネーム 因幡の白やぎ(40代 男性 弱視)
月に帰ったかぐや姫。
母なる大地はあったかい。
ピロピロリン。
こんな夜更けに誰だろう。
「どうも太郎です。姫ちゃん元気?」
空に浮かんだ青い月。
一人になりたい夜もある。
雨に濡れたい夜もある。
ラインの未読が増えてゆく。
ーー
ここからは現役訓練生さんの登場です。
タイトル 「十六夜」
ペンネーム purple moon(20代 男性 弱視)
月の名称である十六夜という言葉を初めて聞いた時、
「かっこいい言葉だな~」と思っていました。
キャラクターや技の名前などでその名称はよく聞いていましたが、
じゃあどんな月?と聞かれたら答えられませんでした。
なので、自分なりに調べてみました。
まず「いざよい」と呼ばれるようになった理由は、
ためらうという意味のある「いさよう」からきているとか。
満月と比べて空に現れるのが遅く、それがためらっているように見えたことから、
そう名づけられたそうです。
漢字で書くと、漢数字の「十」、「六」、夜空の「夜」と書きます。
新月から数えておよそ16日目であることからつけられたそうです。
他にも既婚者の「既」、希望の「望」と書いて既望(きぼう)や、
不可能の「不」、知識の「知」、夜の月と書いて不知夜月(いざよいづき)とも
呼ばれるそうです。
色々な呼び方があるんですね。
今までは意識して「あれが十六夜かな?」と思って見たことはないけれど、
意識して見てみようかなと思いました。
目が見えにくくなってからは、夜空を見る機会が減っていました。
ある日母と出かけた時に見ることがありました。
最寄りのバス停から我が家である団地の敷地にさしかかった時に
「月が大きくてきれいやで」と母に言われました。
自分も空を見上げました。
するとそこには、大きくて真ん丸な月が!
久しぶりに見たんです。
すこし興奮ぎみに空を指さして「あれ?」と確認しました。
しかし、返ってきた答えは真逆な一言。
え?と思いながらよく見ると駐輪場に設置された街灯だったのです。
その日以来、わざわざ空を見上げることは無くなりました。
でも、今回十六夜という言葉に刺激されたので、
また無意味に空を見上げてみようかなという気持ちが湧いてきました。
もちろん街灯ではなく、本物の月を。
ちなみに2019年の十六夜はあと2回、11月13日と12月13日らしいです。
是非見てみたいものです。
ーー
タイトル 「月見と言われるもの、そうでないもの」
ペンネーム 月見てポンポンいっぱい(40代 男性 弱視)
月見と言えば、月見うどん、月見そば、月見バーガーと数あるけれど、
何故だ。フライパンで調理した瞬間に目玉焼きに名前が変わるんだ。
まだある。
カレーに生卵、牛丼に生卵、
麺類に至ってはチキンラーメンに卵ポケットを新たに備えているにも関わらず、
日清食品はおろか、食べる私たちも月見チキンラーメンとは寡聞にして聞かない。
何故なのか。
月見とは何か。
それは形だけではないのかもしれない。
器の色と和食という要素が多大に関係している。
代表的なものは月見うどんとそばだろう。
日本にある、ついでに京都ライトハウスにある黒い器。あれは夜の闇だ。
まさに漆黒と言ってもいい。
あの漆黒の器の中に輝く円い存在感。
うどんやそばは雲に見立てているに違いない。
君の名は黄色い身と書いて黄身ですというかもしれない。
だがしかし、君の名は昭和の銭湯の女湯をからにした真知子でも
平成の映画館を満員にした三葉(みつは)でもない。
君の名は月だ。
ちなみに私が真知子巻きを寿司と勘違いしてたのは内緒だ。
三つ葉といえば親子丼だけど、私はかつ丼が大つきだ。
いや大好きだ。
それはともかく、最初にこういう名前を付けた人の美的センスが欲しい。
そりゃ月見て食べるから。
ついでに見ないで食べるけど月見バーガーと名付けたマクドナルドのセンスもありだ。
朝は調理法が同じだと思うけどエッグマフィンとかになるのは仕方ない。
夜じゃないから。
それを踏まえても新たな謎がある。
雪見大福というアイスのどこに雪見の要素があるのだろう。
雪を見て大福食べるくらいなら、月を眺めつつ熱燗で一杯やりたい。
お猪口に月を映しつつ、いやさかずきに、
いやどいつもこいつも小さくて月なんかはいりゃしない。
そうだ、京都ライトハウスにあるような黒い器にお酒をいれたら月が映りこむに違いない。
花札じゃないけどそれで月見て一杯というのも悪くないと思う。
そこまでしてお前は飲みたいのか・・・。
ツキがあるとしたら、それを逃したくないのが人情というものだろう。
ーー
月というキーワードから、実に多面的な月ワールドが生まれました。
そこで1曲、「魔王」シューベルトの歌曲を紹介します。
♪「魔王」は、とても印象的なピアノの前奏で始まります。
3連音符の細かい連打で何か恐ろしいものに追われるような切迫感のあるパターンが
曲の間に繰り返し現れます。
魔王が怖い存在であることを、長調から短調へドラマティックに変化させることによって
表現されています。
めりはりがあってわかりやすい歌曲です♪
魔王を聴いて、子供も大人も怖いと感じる方がおられるでしょう。
それはこの歌曲がとても小さくて劇的だからかもしれません。
今回の月のレポートも、小さな言葉、短いエピソードでした。
そこにはシンプルで凝縮された世界が描かれています。
魔王にも、月エピソードにも、目に浮かぶ、伝えようとする力強さがありました。
シリーズ コーラスあおいとりでは、
心のさえずりを言葉のコーラスに仕立ててお届けしていきます。
次回の唱和ではどんな色が描かれるでしょうか。
それでは皆様、ごきげんよう。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2019年11月8日
☆どうもありがとうございました。