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メルマガ色鉛筆第122号「ついにこの日が来たけど買い物したい」

タイトル 「ついにこの日が来たけど買い物したい」
ペンネーム 夜色鷹人(40代 男性 全盲)
 レポートの要旨です。
 全盲視覚障害者の買い物体験談。
いつもの日常のつもりが、非日常体験に突入します。
ああ、これでよかったのだろうか。
現実はうまくいったりいかなかったり。
 ここから本文です。
 その日は、たまごとギョウザを買いたかった。
さあ、買い物だ。
近くにあるコンビニみたいな小さなスーパーに行くことにしよう。
ついでにかっぱえびせんとバニラアイスも買って、合計4点でいいだろう。
 視覚障害者の買い物は、1人で行くとどう進むか。
お店に入ったら、店員さんを見つけて声をかけることから始まる。
しばしば最初からレジに向かう。
「いらっしゃいませ」、
「買い物したいので案内をお願いします」、
「少々お待ちください」。
 それから店員さんといっしょに店内を回って、「これください」「あれくださ
い」と買いたいものをリクエストする。
「これですか」、
「はい、これで」。
できれば言葉のやりとりだけでなく、カゴに入れる前に1つ1つ手に持って確認
する。
これをやらないと、帰ってから商品が思っていた感じとぜんぜん違ってびっくり
ということが起こる。
最後にレジでお金を、最近は現金でなく、カードでさっとお金を払って無事終了
となる。
 しかし、ついにこの日が来たのだった。
実は恐れていたことがあった。
「いらっしゃいませ」、
「買い物したいので案内をお願いします」、
「今、店員が2人しかいなくて無理なんです」、
「……」。
恐れていたのはこれだ。
 「無理なんです」、こう言われたらどうしたらよいのか。
「はい、わかりました。では、さようなら」、従順にこう言うべきか。
それとは逆に反論することもできる、勝ち目は少ないけれど。
 実は恐れていただけではなく、考えてもいた。
この日が来たら、一応できることがあるにはある。
右手に白い杖、左手にカゴを持つ。
いざ、店内に突撃。
やってみますか。
 よく行っているお店だと、どのへんに何があるかはだいたいわかる。
1・ギョウザ、2・たまご、3・かっぱえびせん、4・アイスの順番がベスト。
ギョウザはこのへんというところで、「すみません、どなたか」と声をあげる。
店員さんに頼めないなら、お客さんに頼むしかない。
ラッキー、ついているときは神様のような人がそばにいるものだ。
「すみません、どなたか」を繰り返す。
 ラッキーじゃない日もある。
右手に白い杖、左手にカゴを持つ。
いざ、店内に突撃。
やっぱり強引で無理があったか。
 「どうしましたか」、来てくれたのは中国人女性2人。
「ギョウザを探しているんです」。
ギョウザを見つけてもらってカゴに入れることができた。
たまごは思っていたあたりにはなかった。
しばらく来ていないと場所が変わることがある。
次のかっぱえびせんは通じない。
片言での日本語のやりとりだった。
「ポテトチップスみたいな。赤い袋、かっぱえびせん」、
「これですね」。
ここまでのところで思ったより時間がかかったので、アイスはやめてレジに向か
うことにした。
 手助けしてくれた2人に何度もお礼を言って家路についた。
ああ、これでよかったのだろうか。
 後日、袋を開けると、それはポテトチップスだった。
次、同じようなことがあったときはどうしようか。
バリバリ食べながら考えた。
きっと次もやるだろう。
 うまくいくこともあれば、いかないこともある。
ものすごくうまくいくこともある。
でも、ものすごくたいへんなことにはならないように。
それできっと前に進めるだろう。
 編集後記
 1人での買い物、いろんなパターンがありますね。
イメージどおりのものがゲットできたとき、よかったなあとなります。
あれ?、ちょっと違うけど、まあ、いいかということもあります。
なんだかうまく伝えられずに、これは困ったなあということだってあります。
 やれやれよかったとなるか、やれやれしょんぼりとなるか、
これもその日の心模様で色あいを変えるかもしれません。
それでもきっと前に進める、そんな心持ちで買い物ができるといいですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2018年5月25日
☆どうもありがとうございました。

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