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メルマガ色鉛筆第116号「挑む福、紡ぐ福 後編」

タイトル 「挑む福、紡ぐ福 後編」
ペンネーム グレージュのバッグ(40代 女性 弱視)
 レポートの要旨です。
 皆さんはどんなものに福を感じますか?
初売りの福袋、思いがけず見つけたセール、隣り合わせた人の見守り、
そして若き日の自分、家族と重ねた時間。
 福を思う今、流れゆく今を書きしるすことにしました。
 ここから本文です。
 (前号からの続きです)
 帰りに母を見舞い、一緒にバーゲンを戦った日がよぎり、少し胸が痛みました。
そんな私の気も知らず、母は福袋を検閲します。
 バッグを見て、「私でも持てそうなええ色やわ。
この形、好きやわ。
あんたが買うてくれたラベンダーのもこれと同じ形やなあ」と、ここまではよか
ったのです。
ところが、「そやけどこの鍵やっかいやで。
この革、通勤でやられるで。
弁当入れたら形くずれるで」、厳しい指摘が始まりました。
 さらに箱を開けて大笑いしています。
「なんやこれ、ゴールドの財布、ラム革やって、こんなもんが2万円もするの。
定価で買う人いるんか。
招福財布とかいう意味か?」。
さらにさらに、「なんや、この小さいもん、どこにつけるんや。
変なデザインやなあ。
私やったらいらんわ」と、ファスナーチャーム2個にもご意見です。
 娘の福袋にケチつける母、これには年神様もお手あげでしょうね。
 一息ついた母がぽつりともらしました。
「退院したらデパート行きたいわ。
ほしいものないけど、デパートの空気吸いたい。
それができたら幸せや」。
「お母さん、車イスでは福袋は無理やで。
人がすれちがうのも大変やから」。
「中身教えてくれるんやろ。
お母さんと一緒ならいいもの買えるで。
あんた、店員さんの説明だけでいいものかどうか判断つかへんやろう。
お母さんの目ならしっかり見立ててあげられるのになあ」。
 退院が待ち遠しい、お口だけは元気な母でした。
 「やっぱり一緒に行きたかったんやなあ。私も同じやで・・・」、
病院を出て、バス停でうつむいて小声でつぶやいた、母を残しての帰り道。
 若い日の私は、母と娘でお買い物にランチ、近所でも有名な仲良し親子でした。
そんな日が当たり前のようにずっと続くと思っていました。
結婚式のドレスも息子のベビードレスも、母の思い、おばあちゃんの思いを込め
たものを選んでくれました。
不思議と、私が選ぶものと母の「これにしなさい」はいつも一緒でした。
 私の代わりにベビーカーを押してくれた母と子ども服バーゲンにもよく出かけ
ました。
予算の都合で悩む私を見て、「おばあちゃんからのプレゼントや」と勝手にレジ
してくれたこともありました。
「こんなかわいいの、着せてやりたいやんか。男の子やけど着せ映えするからな」
と言いつつ、
「それにしても高いなあ」とこぼしておりました。
その笑顔はどこか誇らしげで、同じ年頃の子を見ては、
「やっぱりこの子ひときわおしゃれやわ」と私の肩をポンポンたたいておりまし
た。
 「おばあちゃんと一緒にいたら大丈夫やで。守ってあげるから」、
それが母の口癖でした。
なのに私にはそれが言えない、そんな力もない。
 情けない気持ちを振り払いたくて、退院祝いのホテルランチを予約しました。
「楽しみにしときや」、
それを伝えるために今から母のところへ行ってきます!
 くよくよせず、その時その時を精一杯やるしかない、
母の車イスすら押せないだめな娘ですから。
どうか晴れた気持ちで行けますように。
 編集後記
 グレージュのバッグさんが買ったものの品定めをして、入院中のお母様もデパ
ートの気分を味わって楽しんでおられましたね。
親子でいっしょにいろんなことをしてこられて、
あんなこともあったなぁ、こんなこともあったなぁと語れるのは、またとてもよ
いことだと思います。
 見えない・見えにくいことは、何をするにもつきまといます。
人にしてあげたくてもできないことも多いです。
それはだめなことではあるのですが、その時その時を精一杯やっていれば変わっ
ていきます。
だめなことがあるからこそ人を励ます、勇気をあげることにもなるというふうに
変わっていくのだと思いませんか。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2018年2月23日
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