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メルマガ色鉛筆第92号「食べる視覚障害者」

タイトル 「食べる視覚障害者」
ペンネーム 夜色鷹人(40代 男性 全盲)
 レポートの要旨です。
 ごはんを食べるときの見えないならではのハプニングや対処法は、私たちの生
活の身近にあることです。
お刺身を食べるときのあれこれなどなど、
食べることについて私がやっていること、思っていることを書かせてもらいます。
 ゴルフをするみたいに、ナイス食欲でいきたいものです。
 ここから本文です。
ごはんやおやつを食べるとき、見えないと困ることがあります。
たとえば、おかずを食べようと口に運ぶ途中でぽろりと落ちてしまったり。
たとえば、エビフライを食べてしまった後でそれにかけるソースを発見したり。
しばらく後にお箸でつかんだのがそのしっぽだったり。
そのことに気づくのが口に入れかけたときだったり。
食べることがハプニング、ハプニング、苦労の連続ならば、疲れてしまいます。
気持ちも落ちます。
でも、そもそも食べることは、おいしく楽しく満たされるというよいものです。
見えないことによる苦労を減らすことができたら、こっちのものだと思います。
こぼさないためには、おかずは小鉢に入っているとらくですね。
手に持って、口に近いところから食べることができます。
そうでなければ、どうする?
取り皿をもらうことも一つ。
よい方法です。
ただし、いつも取り皿とはいきません。
和食、お刺身のときを考えてみます。
身を一切れお箸でつかんで、好みでたまり醤油にひたして、それを口に運びます。
うーん、いかにもハイリスク、いろんなことが起こりえます。
一切れをちゃんとつかめるだろうか。
菊の花など、いらぬものをつかまないだろうか。
たまり醤油のところで落ちるかもしれない。
そこから口までの、まあ、遠いこと。
そして、これを身の数だけくり返すのだ。
私はためらいを捨て、左手をお刺身にのばします。
指でそっと確かめ、一切れの真ん中をお箸にしっかりつかませ、それからすまし
た顔で左手をひっこめます。
任務完了。
さらに、姿勢を前かがみにして食べるのが無難ですね。
左手の指先はこうしてよごれてしまうので、おしぼりがあると助かります。
また、飲み物のグラスは右手で持つようにします。
右手はきれいなままなので。
そのとき、お箸をどこに置くかも注意したい点。
何かの拍子にお箸に手が当たり、床に落ちてしまうという経験を何度もしました。
「あっ」と思ったときにはお箸はとんでいます。
器の上はもちろん、箸置きの上でもそうなることがありました。
ルール違反かもしれませんが、お箸は縦に置くようにしています。
食べるのがらくそうに見えて、意外に難しいものもあります。
たとえば、牛丼。
ひたすら食べればよいと思っていたのに、お肉とごはんをバランスよく食べるの
に苦労します。
ごはんはどこか、お肉はどこかと探すのに集中するはめになり、らくさせてもらえません。
ハンバーガーも、形をくずさず、ソースをはみ出さず、そして、口のまわりをよごさずに食べたいものです。
豪華なやつを。
これも、何回も食べてたらマスターできるのでしょうか。
ハンバーガーはお持ち帰り、家で少々のことは気にせずに食べるのもよいと思います。
ごはんやおやつを食べるときの、見えなくて困ることやハプニング。
きっとゼロにはできないでしょうね。
それは、プロゴルファーがあるホールでバーディーをとりながらも、次のホールでボギーを出すのに似ています。
ときにはOBや、出られないバンカーもあります。
いろんなゴルフコースがあります。
いろんな食べ物があります。
私も、箸さばきやフォークさばきのフォームを整えて、ナイス食欲したいと思います。
編集後記
 食事は気持ちよく、おいしく食べたいものですね。
失敗してまわりにどう見られるだろう、そう思うだけでおいしさも減少してしまうかもしれません。
でも、失敗は次のナイスにつながるヒントもくれますね。
今度はこうやって食べてみよう、そう思えたらナイス食欲に一歩近づきます。
 いつもいつもナイスとはいかなくても、ナイスを目指して食べる、
そんな心もちはキープしたいものですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2017年4月21日
☆どうもありがとうございました。

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