活動紹介
メルマガ色鉛筆第69号「ある物静かな人の声」
タイトル ある物静かな人の声
色鉛筆編集チーム
レポートの要旨です。
視覚障害者どうしの交流、仲間に対する思いを聞いてみたくて実施したインタビューです。
訓練や交流を経て元気を得る姿を見る喜び。
元気な人でもある不安な思い。
励ましになる考え方を話したり、いい人に接して思いを受け止めてもらって励まされたり。
ここから本文です。
目に障害があることがご縁の出会いがある。
出会って交流をしていると、お1人お1人の人がらがだんだんわかってくる。
そんなお1人に、この色鉛筆にも記事を寄せてくださるペンネーム、青空色の日記帳さん(50代男性、弱視)がいらっしゃいます。
青空色の日記帳さんは物静かな方。
仲間に対する思いを中心にお話を聞かせてもらいました。
●質問 視覚障害の方とどこでどのような交流がありますか?
いくつかあるのですけれど、当事者の団体に入っているので、その会合や行事に行っています。
パソコンボランティアをしています。
パソコンを習う視覚障害者の方のお手伝いです。
作業所のほうにも行かせてもらっています。
当事者団体の行事は、外に出かけることもあります。
農場公園に行ってバター作りをしたり、観光地で船に乗ったりしたことがあったんですよ。
酒蔵や防災センターの見学にも行きました。
●質問 ご自身の視覚障害についてどんなことを思いますか?
親に教えてもらったのですが、私は赤ちゃんのころに命を失いかけたことがあったそうです。
本当に厳しい状態だったそうですが、それでもそこを越えて生きることができました。
生きることができ、そのかわりに与えられたのが視覚障害であったという思いがあります。
「この人生を進みなさい」と背中を押されているようにも感じます。
●質問 物静かな青空色の日記帳さんですが、大きな声で強気に発言する仲間をどう思っていますか?
うらやましいです。
本当にうらやましいですね。
うれしい気持ちになることもあります。
パソコンを習うお手伝いをしていると、
習い始めのころは元気がなく、声にも力がなかった人が、数ヶ月後にはいちばん元気になってられたりします。
パソコンやその他の訓練を受け、さらにそこで仲間と出会い、元気を取り戻していかれるのだと思います。
●質問 弱気な発言をする仲間をどう思っていますか?
仲間の弱気な発言を聞いたときはどのように思いますか?
私も強気なほうではなく、こっちのほうです。
行事や集まりに来ているときは元気な様子の人が、家では不安な思いで元気をなくしていると聞いたりもします。
また、生活のこと、将来のことが不安という声も聞きます。
これは簡単には変えることができないこと、なかなか道を開くことはできないと思います。
●質問(…というか感想) その人の話を聞きながら、話の重みを感じて受け止めてられるのだと思いましたが?
私もそうしてもらえたことがありました。
私の話を聞いてくれた人が後でお手洗いに行ったときに偶然気がついたのですが、そこで泣いてられたんです。
話をしっかり受け止めてくださってたと感じ、それだけで救われた思いでした。
●質問(…というか感想) 青空色の日記帳さんは人を大切に思ってられると感じましたが?
自分では意識していませんでしたが、そうだとよいですね。
●質問 仲間にはどんないい人がいますか?
この質問で思い出したことがあります。
これから忘年会に行くというときに、急に雨が降り出して豪雨になったことがありました。
この大雨だからタクシーで行こうという話になったのですが、そこには5人いました。
タクシーに乗るには中途半端な人数です。
そしたら、大先輩のリーダーの人が「自分はバスで行くから4人でタクシーで行って」と言われました。
私がいちばん後輩でしたし、少し見えていますので「バスで行きます」と言ったのですが、
そのリーダーの人が豪雨の中をバスで行かれました。
●質問 どんなふうに仲間を励ましていますか?
ある行事で、仲間の先輩のお1人が「60%幸福論」という話をしてくださりました。
100%、90%、80%とはなかなか行かないですが、60%行けたら幸福と聞いてなるほどと思いました。
また、「どんどんチャレンジしたらいい」とも言われていました。
チャレンジして、もし失敗しても、チャレンジしなかった位置に戻るだけ。
だから、「どんどんチャレンジしたらいい」と。
「こんな話を聞いたことがある」と、人を励ましたいときに話したりしています。
仲間には白い杖で歩く訓練をがんばっている人もいて、
「近所にあるローソンまで行けるようになった」と喜んでられたことがありました。
目標は人それぞれで、その人の目標が見つかればと思います。
その人の好きなことにつながるものを探して、お知らせして興味を持ってもらえたら、それが励ましになるかもしれません。
例えばスポーツが好きな人なら、
目の不自由な人向けのスポーツのことをお知らせして、それで興味を持ってもらえたらよいですよね。
●質問 人との関わりが難しいと感じるのをどう乗りこえていますか?
人の言葉はなるべく善意に取るように心がけています。
バスから降りるとき、運転手さんが他のお客さんには受け答えしているのに、私にだけ無言だと、やっぱりいい気はしません。
そんなあるとき、歩道の手前で「そこで段差です」と言ってくれたことがありました。
私の足元をよく見てくれていたのでした。
いつもそうではありません。
でも、そういうこともありますし、どんなこともなるべく善意として受け取ったほうが自分も楽だと感じています。
編集後記
「人は人を励まし、人に励まされる」という基本のことをかみしめるインタビューでした。
I hope someday you'll join us.
「いつか君もここに加わってくれることを願っているよ」というジョン・レノンの曲『イマジン』を思い出します。
うまくやれなくても、気持ちは「励まし励まされ」という基本に立ち戻りたいと思いました。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2016年6月3日
☆どうもありがとうございました。