<南部アイセンターだより>
今回は、1月23日に開催した「駅ホームからの転落を考えるつどい」を中心に報告します。
1.「駅ホームからの転落を考えるつどい」の報告
全国で駅ホームからの転落事故が相次いでいます。昨年は京都でも2件の事故があり、さらに年末には阪急京都線で痛ましい死亡事故がありました。
そこで、急でしたが1月23日にセンターで「駅ホームからの転落事故を考えるつどい」を開催しました。当日は71名もの方々に駆け付けていただきました。点字や朗読サークルの方々や、新聞を見た数名の府民にも参加いただきました。また、南部のみならず亀岡や伏見からの参加もありました。
初めに、センターのオカリナサークル有志の演奏があり、住岡(すみおか)理事の司会進行で、田尻会長からは今回のつどいを開くことに対する思い、特に府民の皆さんに共に考えていただきたいという話がありました。
その後、2名からの転落体験の発表がありました。京田辺市の内野正光(うちの まさみつ)さんは、これまでに3回転落されました。ある時は、何で落ちたのかわからなかったそうで、3回目は方向を間違えたのか歩いてすぐに落ちたとのことで、点字ブロックも踏み越え、足の裏の感覚はなかったそうです。ホームに上がった1分後に電車が来て、ヒヤっとしたと話されました。
続いて、宇治市の今里弘美(いまさと ひろみ)さんから2回の転落体験の発表がありました。1回目は、ホームの構造の知識が浅く、階段を上がったところはホームが狭いのに、そのまま歩いてストンと落ちたが、たまたま電車が来ず助かったそうです。2回目は京都駅で、ホームは櫛形で乗り場が多くて嫌だったが、声をかけていただき案内されたのが違う乗り場だったので、下がって待っていたら落ちたそうです。それからは駅員や声をかけてくださる方のご厚意に甘えてお願いされています。また、一人歩きをされている方は大抵転落を体験されていると思うが、内方線があるのは大変助かると話されていました。
お二人からの発表の後の懇談では、多くの方の発言がありましたのでご紹介します。
「ワンマンカーで落ち、駅員に助けてもらった。ホームで白杖の先が、突然沈んだ経験もあり、声をかけてもらった。また、一定の時間無人になる駅も多い。人的課題として、駅員増を求めたい。」
「向いのホームに電車が入ってきたのに、手前に入ってきたと思った。ホームの滑り止めのザラザラを点字ブロックと思ったなどの勘違いがある。危ない、しんどい時は駅員さんに頼ろう。」
「交通の便はよくなってきたが、逆にややこしくなってわかりづらい。」
「足、鞄や靴も落とした。車両の連結部をドアと間違える。車両到着のアナウンスが早い鉄道もある。亡くなられた方は仕事で通勤していて、一人歩きをされていたのではないか。サービスが使えるようにしてほしい。」
「弱視の方で、日照の関係で眩しくて見えなかったりする場合もある。」
「ホーム柵はコスト面や、車両の種類によってドア位置が異なるなど課題も多い。せめて、内方線をつけてほしい。」
「向い側のホームに入る電車を勘違いして慌てて走っていった。横の人が危ないと抱きしめてくれて助かった。」
「ホーム端に塗ってある色がわかりにくい方がおられる。」
「4回落ちた。白杖を必ず持とう。」
続いて、新聞を見て来られた方や、ボランティアさんにも発言してもらいました。主な意見をご紹介します。
「いつも、役に立ちたいと気を遣っている。車内で白杖を折りたたんでおられるが、それでは視覚障害者とわからない。また、道で会った方に気をつけてと声かけをして、人間同士いろんな話ができた。お礼も述べてもらった。手引きの方法はどうすればいいのか。」
「かつて、駅ホームで向こうの方から点字ブロック沿いに小走りにこちらに来られる方を見たことがあったが、見ていて怖かった。」
「年を取り、点字ブロックを踏むとバランスを崩す。何か違うハード面での対策はないか。また、昔、白杖を使用されている方に出会い、何かお手伝いをしましょうかと声をかけたら、横にいた息子が感心していた。お互い遠慮するのではなく、気持ちのソフトを育てる多くの機会がいるのではないか。」などの発言がありました。これを受けて視覚障害者から次の様な発言がありました。
「一人で歩きたい。自由に歩きたいことも理解してほしい。」
「電車やバスの中は、杖を伸ばしたままでいると、他の方がつまずかれる。降りるときに伸ばす。」
「小学生に話をするが、どこかで会うと声をかけてくれる。」
「声をかけていただいて嫌な思いをする視覚障害者はいない。ただし、大丈夫ですかと声かけをいただいても自分に言われているかわからない時もある。」などの発言があり、率直な意見交換をしました。
さらに、歩行訓練士からは「歩行訓練を重ねて、最後の訓練場面である駅ホームでの移動は難しくナイーブです。改札で駅員さんに依頼し不在のときはいつも以上にゆっくりと歩いてほしい。」と話がありました。
なお、鉄道関係では、城陽支部が、12月25日に朗読ボランティアの会長さんも同行して近鉄に要望書を提出しました。その場で「市内の2駅で点字ブロックを内方線付きのものに張り替える」と回答いただきました。また、近鉄では大阪で昇降式のホーム柵の実証実験が始まったとの報告がありました。JRの方からは、「ホーム柵はいろいろな面で課題が多いので、一人で乗降する際は駅員に声をかけてほしい、他の接客を止めてでも視覚障害者を乗車いただくまで案内するよう徹底している。乗車駅から降車駅に迎えられるよう連絡している。その分、少し早めに声をかけてほしい。また、白杖を持たれていない場合は、認識するのが難しいので、駅員に声をかけてほしい。連結部は柵や板をつけたり、ライトや放送などに努めている。貴重な意見を聞けてよかった。」との意見を述べていただきました。
司会者からは、「せめて駅ホームでは白杖を使おう、駅員の支援を受けようと呼びかけていきたい」と話がありました。
最後に、田尻会長が要望を確認すること、安全に歩きたいとの願いを常に持ち続けたい、安心して歩ける街づくり、安心して利用できる鉄道になるよう、次回は5月17日(木)13時15分からセンターで開催したいと挨拶がありました。
なお、社会的関心の高まりを反映して、報道各社の取材が多く、事前・事後に多く報道いただきました。心から感謝したいと思います。
2.センターで開催予定の企画の紹介
「あはき裁判の勝利をめざす南部学習会」を4月8日(日)13時15分からセンターで開催します。センターに届けられ、本部に送っている署名は、1月12日現在で1904筆になりました。中でも、宇治での取り組みが活発で、延べ860筆も寄せていただいています。学習会の詳しい内容は来月号でお知らせします。
3.1月の川柳サロンの優秀作を紹介します。お題は「冬」でした。
「寝《ね》正《しょう》月《がつ》 テレビで拝《おが》む 初《はつ》日《ひ》の出《で》」