活動紹介
メルマガ色鉛筆第384号「声を聞き やっと出会いが 始まるよ そのこと知って 話しかけてね」
タイトル 声を聞き やっと出会いが 始まるよ そのこと知って 話しかけてね
ペンネーム オレンジ八千穂(70代 女性 全盲)
★レポートの要旨です。
ある夜、NHKの「ラジオ深夜便」で短歌のお話しをされているのを
偶然聴きました。
その一瞬をとらえて言葉にする話が心に焼き付きました。
その後、さまざまな出会いに支えられて、短歌で思いを表現するようになりました。
その時折の思いを、その瞬間を詠む中でのことをお届けします。
★ここから本文です。
ある夜、NHKの「ラジオ深夜便」で歌人の佐佐木頼綱氏が
短歌のお話をされているのを偶然聴きました。
視覚障害アスリートの方々が「その瞬間」を短歌に詠まれる話を
とても分かりやすく説明されていました。
その一瞬をとらえて言葉にする話は心に焼き付きました。
その後、視覚障害者に向けて短歌を詠む会のお誘いのメールをいただきましたが、
その時はまだ詠めるようになるとは思えず、
定期的に短歌を詠んで投稿することなどまったく考えられませんでした。
それから数年経った頃、教会のK先生が御説教の締め括りに数首の短歌を詠まれました。
それがとても心に響きました。
私も一首詠んでみようと思い立ちましたが、上の句 五 七 五 しか出て来ません。
なんとか 七 七 を詠んで、やっと一首となりました。
その初めて詠んだ短歌をHさんにメールしました。
Hさんはわたしがとてもお世話になっている同じ教会員だった方で、
短歌も20年詠んで来られた方でもあります。
それ以来、拙いながら、夜眠れない時や早朝に目が覚めた時などに
短歌を詠み始めたのです。
「ラジオ深夜便」で佐佐木頼綱氏が言われていた「その瞬間」を言葉にすることに
挑戦していきました。
そして、それらの拙い短歌をHさんにメールして、Hさんから
その短歌についていろいろなアドバイスを頂くようになりました。
わたしがHさんから教えていただいたことは以下です。
短歌の主語は吾(われ)。
敬語は使わなくて良い。
濁音は音が綺麗でないのであまり使わない。
言葉を上下入れ替えたりして、何を言いたいのかを突き詰めて言葉を探す。
何度も口に出して詠んで推敲する。
誰が読んでもわかる短歌にする。
Hさんは、初心者のわたしの拙い一首一首を丁寧に読み取ってくださり、
具体的なアドバイスをしてくださいました。
そこからわたしが気がついたことは、
31文字の中に詠み込むために主語の吾を抜き、限られた文字の中で
いかに分かりやすく事柄の描写とともに思いを語れるかということでした。
今は、まるでゲームを楽しむように言葉を選び、
上に入れたり、下に入れたりしながら楽しんでいます。
23歳の時、突然失明しました。
なので心の中にはさまざまなシーンが刻み込まれています。
その一つ一つを取り出しては、写真を言葉に置き換えるようにして、
短歌を詠みました。
すると、私の中からその瞬間、その瞬間が心に浮かび、
短歌は溢れ出てきました。
その短歌をHさんとその従姉妹のNさんに見ていただくようになりました。
お二人の入っている短歌会に入会し、今では月に一度10首を投稿しています。
そのような折に、京視協を通して中学1年生の「ほほえみ人権学習」で
地元の中学校から講師依頼を受けました。
思い切って短歌を通して話してみようと思い立ちました。
言葉だけでは難しいので、漫画のように短歌に絵を描いてもらおうと、
絵の好きな妹にイラストを頼みました。
イラスト入りの短歌をレジメとして配布する準備をしました。
問題は短歌です。
中学1年生にわかる短歌を詠む必要があります。
作っては妹にメールをして妹の意見を聴き、Hさんのアドバイスも受けて、
何度も何度も詠み直しました。
この短歌では何が言いたいのか、この言葉は何を伝えたいのかを
突き詰めていったのです。
「名乗られて 透明人間は 人となり 言葉交わして 友となりいく」
妹からは「透明人間」と言う表現はやめて欲しいと言われました。
見えないわたしにとっては周りは透明人間だらけなのですが、
透明人間と言われる側の妹はやめた方が良いとの意見。
それは受け入れることにして、結局、この短歌を二つの短歌に詠み替えました。
「声を聞き やっと出会いが 始まるよ そのこと知って 話しかけてね」
「名前聞き わたしもこれで 出会えます おしゃべりできたら 嬉しいな」
続けて更に何を伝えたいのかを考え、次の短歌を詠みました
「見たことを 言葉で聞けたら うれしいよ 見えない不自由 助けてくれる」
「虹が出た われらの上に 七色の 虹は幸せ運ぶ 皆のこころに」
「虹出たら 虹が出たこと 伝えてね だってみんなの 虹なんだから」
11月3日、2025年の「ライトハウス祭り」に、
鳥居寮の機能訓練の一つである創作の時間に機織りを習ったKさんが、
「織工房フラミンゴ」として出店し、7万円を超える売上を
ライトハウスに寄付されました。
出品された織物は、Kさんが1日に1、2本織り上げた織物を、
同窓のご友人達が縫製して作り上げたものです。
Kさんが鳥居寮で機織りするのをサポートしたわたしは、
当日、織工房フラミンゴの皆さんのかたわらでお手伝いしました。
その朝、ライトハウスに向う時、西の空に大きな美しい虹を見ました。
バザーが終わった後の帰り道で、今度は東の空に大きな虹が出ました。
そのことをガイドヘルパーさんが喜んで伝えてくださったおかげで、
わたしの上にも、見えなくても虹が等しく出ていることが分かり、
この一日が神様に祝されていることが感じられて、とても幸せな気持ちになりました。
このことは誰にでもきっと分かってもらえる、
正にこのことを短歌に詠んで伝えたいと思いました。
最後に 一首。
「寝る前に 『今日も一日 ありがとう 幸せです』と 布団に入る」
編集後記
「その瞬間」を描く、詠むこと、短歌を通して大切なものが何かを見つめること、
深いメッセージを受け取りました。
色鉛筆も日々の中のひとひらを愛しくとらえ、その中にある悲しみや悔しさや、
時にもっていき場のない思いでさえも、あるがままにと届けてきました。
言葉を紡ぐ時、その中では心を編むような感覚があります。
これまでにも色鉛筆にご寄稿いただいた方たちから、
書くことは魂と対話するような経験であったというお声をいただきました。
今回のエピソードも人の縁が縦と横の結びつきとなり、その「結」が面となって、
新たな力へと動いていく様が描かれていました。
そして頭上には虹、声もなく音もない、その存在が言葉として伝えられた時、
真の喜びは生まれるのだと語って下さいました。
空を仰ぐことをともにできた気持ちです。
さて、皆さんはどんな心模様でお布団に入りますか?
まずはお布団があってよかったなと思うところから、一歩一歩といきたいものです。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2026年2月6日
☆どうもありがとうございました。