メルマガ色鉛筆第382号「私が点字を読む理由」
メルマガ色鉛筆読者の皆様
あけましておめでとうございます。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
2026年も皆様からのエールを百万馬力に変えて、素敵でカラフルなメルマガをお届けいたします。
どうかよろしくお願いします。
タイトル:私が点字を読む理由
ペンネーム:つぶつぶ苺 (30代 女性 弱視)
レポートの要旨です。
点字って難しいし面倒でしょ? 自分には無理!と思っているそこの当事者さん。
最近は点字離れが進んでいるわよね…と感じておられるそこの点訳関係者さん。
こんな動機で点字を始め、こんな風に点字に支えられている人間も世の中にはおりまして。
当事者さんへの点字学習のお誘いと、点訳に携わってくださっている関係者の皆様への感謝を込めて。
ちょっと読んでやってくださいな。
ここから本文です。
ありがたいことに、視覚障害の世界にもテクノロジーの進歩の恩恵がたくさんある。
その一つが音声読み上げ機能。
スマホの操作やメールの読み上げはお手の物。
手紙やチラシをスマホのカメラで撮影すれば、
それを読み上げてくれるOCRなんていうものも続々と開発されていて、
その精度も着々と進歩している。
そして、読書のスタイルもずいぶんと様変わりした。
一昔前までは点字やデイジーが主流で、
最新作を読めるようになるまでにはタイムラグがあったり、
希望の書籍がみつからなかったりと不便が多かった。
しかし、今や電子書籍の方が主流になりつつあったり、
オーディブルなんていう晴眼者が「ながら読書」を楽しむための朗読アプリなんかも
精力的に展開されていて、
視覚障害者にとっても読書へのハードルがずいぶんと低くなった昨今である。
そんな中で私はあえて点字で読書を楽しんでいる。
それはなぜか。
『脳内再生したいから』
私が点字を習得できたのは、目標があったからだ。
私は、とあるロックバンドが大好き。
そのバンドのギタリストでバンドの楽曲の大半の作詞作曲を担当する
リーダーが特に大好き。
その彼が数十年前に執筆した自叙伝を識字が難しくなってきたいま、
もう一度読みたいと思った。
電子書籍を読み上げさせたり、デイジーで聞くこともできたけど、それはしたくなかった。
だって、私は本の内容が知りたいわけじゃない。
彼が書いた文章を、彼の想いを、彼自身をもう一度読みたかった。
そうすることで、見えなくなっていく中で徐々に徐々に失っていくなにかを
取り戻せそうな気がした。
まったく同じとはいかないけれど、ぽっかり空いたなにかを、ほんの少し、だけど確実に、
そしてとても大きな意味を持って埋めることができるような、そんな気がした。
そのためには、彼の声が必要だった。
そう。
点字なら、頭の中にある「彼の声」を使って脳内再生して読むことができるのだ。
「好きこそ物の上手なれ」とはよくいったもので、
おかげさまでその本を読みたいがために苦しみながらも楽しんで
触読に勤しむことができた。
そして、うまく言葉にはできないけれど、小さくも確かになにかが埋まった。
現在は、アニメの原作である小説を点字で楽しんでいる。
これも点字で読むことで、アニメの声優さんの声で脳内再生して読めるので
これまたおもしろい。
内容を把握するだけじゃなく、世界観に没入しやすい。
まぁ、その分疲れるし、点字を習得するにも時間を要するし、
誰でも彼でも読めるようになるものではない。
けれど、触れば触るだけ読む時間も早くなっていくし、読み間違いが少なくなったり、
読みにくい点を拾えた時の喜びはひとしおである。
皆さんもぜひ点字を!とは軽々しく言えないけれど、
こんな『点字を読む理由』も実はあるのでございます。
編集後記
「彼が書いた文章を、彼の想いを、彼自身をもう一度読みたかった」
この言葉に力を感じました。
シンプルでまっすぐなハートには、「~したい」がちゃんとあります。
そう、ちゃんとあるってことがとても大事なんだって、教えてもらいました。
本を読むことを通して、「心で味わえるもの」を探ることへつながったんですね。
つぶつぶ苺さん、ぽっかり空いたなにかを、ほんの少し…、
この続きを色鉛筆でまたいつか。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2026年1月9日
☆どうもありがとうございました。