メルマガ色鉛筆第307号「コロナ禍で紡いだ思いと思い出」

タイトル 「コロナ禍で紡いだ思いと思い出」
ペンネーム ネイビーヨコハマ(30代 男性 弱視)
レポートの要旨です。
 私は網膜色素変性症で右目0、左目は0.02程度で視野狭窄と夜盲、色弱も
あります。
普段は在宅勤務(テレワーク)にて一般企業の事務職をしています。
私はコロナ禍に一人の女性と出会いました。
彼女との間に生まれた恋物語、ふりかえってみました。
★ここから本文です。
 彼女との出会いは約10年前。
共通の友人の紹介で3人で食事したのが最初でした。
その後友人が出演するコンサートに一度行ったきり、以来お互い音沙汰なしでし
た。
出会った当時の私は母親の病気のこともあり心身ともに落ち着かない状態でした

彼女と知り合った年の冬に母親は天国へ旅立ちました。
 年を経ること9年、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、
偶然彼女に再会し、連絡を取り合うことになりました。
2020年のゴールデンウィークのことでした。
彼女も弱視ではありますが、日常生活の大半をひとりでこなせるとても自立した
女性です。
同じ弱視でもほぼ見えにくい私とはずいぶんちがいます。
1か月後、二人きりで会うことになりました。
しかし、見えにくさはそれぞれにあります。
そもそも知らないことだらけ、育った環境や仕事も生活状況も違う二人です。
「お姉さんな」彼女とあれこれ話した日、それが初デートでした。
 それから私たちは月に一度程度のペースで会うようになりました。
当時の私は自分の病気の患者会にのみ参加していました。
視覚障害に関するさまざまな活動や団体があることを教えてくれたのは彼女でし
た。
白杖を持っていても歩行訓練を受けたこともなければ、
調理などの生活訓練も受けたこともない、iPhoneのVoice overも使用したことも
ない、
そんな私に彼女は「知らなかった世界」をたくさん教えてくれました。
以来、一歩踏み出して様々な当事者団体のオンラインイベントに参加してみたり

SNSでたくさんの方とつながったり、
私の視覚障害者としての視野がどんどん広がっていきました。
 月に一度会うようになってから5か月。私は彼女に思い切って告白しました

私は彼女よりも視覚機能が低いし、出来ることは少ないかもしれないです。
でも、彼女と過ごす時間の中で私の心はどんどん熱くなっていきました。
「一緒にいたい。自分のできることで少しでも彼女の支えになりたい」と。
彼女からのお返事は「OK」でした。
交際を始めて私たちは上昇気流で・・・とはいきませんでした。
お互い仕事のことや取り組んでいることで忙しいこともあり、
すれ違ったり思いが届かなかったり、
一時は関係を解消したほうがお互いのためによいのではないかと考えたこともあ
りました。
 そんな中、二人の関係を見直す時が来ました。
彼女がコロナに感染して倒れました。
この時、二人の関係は良いとは言えませんでした。
けれど、なんとしても力になりたい、
見えにくい私でも食料を購入して差し入れを届けに行くことは出来る!
よし、やるぞ!と気合を入れ、彼女に了解をもらい、私は小さな冒険をしました

仕事を休みスーパーやドラックストアで必要だろうと思われるものを選び、
また彼女にリクエストされたものも忘れずに買いました。
私は歩行支援アプリのサウンドスケープを頼りに彼女の自宅へ向かいました。
まさに「真夏のアドベンチャー、はじめてのおつかい」でした。
迷うことなく一発で彼女の自宅へたどり着くことができました。
私は玄関前に食料を置き、メッセージを残し帰りました。
汗はダラダラですが、クールに冒険は成功、一人ガッツポーズです。
 体調が回復したその日、彼女は真っ先に電話をくれました。
「声が出るようになったから、電話しました。」
彼女の声、この一言がとても嬉しかったです。
その後毎日1日何度も電話しあうようになり、
関係が少しずつ戻っていきました。
快気祝いに二人で彼女の好きなキャラクターのカフェでケーキも食べました。
 それからのこと実に様々なことがお互いにありました。
彼女の資格試験の受験や職場環境の変化。
私自身の職場異動や初めてのテレワーク。
彼女が教えてくれた視覚障害者の世界でも新たな展開がありました。
あれよあれよと私は、同じ疾患の若い仲間たちの集まる会で副部会長になってい
ました。
そして、私は一人暮らしを始めました。
2022年の12月、私はさらに一歩踏み出しました。
彼女にプロポーズしました。
彼女から「よろしくお願いします。」とOKを頂くことが出来、婚約しました。
彼女が教えてくれたこと。それは、
やるだけやってみる。工夫して出来ることを増やす。
やりたいことを小さいことでも書き出してみて取り組んでみる。
病気の特性上、見えにくくなるのは運命なのだから、
今のうちにできることを一つでも増やして生活して行けば良い。
どれも前向きになれるメッセージたちです。
私はコロナ禍で彼女に出会い、紆余曲折ありながらも少しずつ前へ向かって歩い
ています。
たとえ将来病気が進行して見えなくなっても、
できることを増やしていれば必ず良いことはある。なんとかなると考えています

彼女と出会えなかったら、私は今でも知らない世界、視野の狭い世界の中にいた
でしょう。
彼女に出会ったからこそ、たくさんの人に出会い人生が180度変わりました。
そんな彼女のことを人として、また視覚障害者の先輩としても尊敬しております

これからは2人で歩いていきます。
私は自分のできることを最大限活かして彼女の力になりたいです。
彼女を支えて行けるように、人としてもっと成長したいです。
これからは自分力アップです。さらにさらに一歩進みたいです。
「人生という線路を「2両編成で」走れるようになりたいです。
そんな素敵な出会いをプレゼントしてくださった友人に感謝です。
そして、一歩踏み出し、そこで出会えた全ての皆さんに感謝です。
私の大切なパートナーへ。
いつもありがとう。
「まだまだお子様な」私ですが、これからも長く共にいれるような二人になりま
しょう。
よろしくお願いします。
なかなか恋愛に一歩踏み出せない、あきらめている方へ
一度きりの人生、どこで誰に出会うかわかりません。
大切なのは、少しの勇気と思いやりと感謝です。
恋する気持ち、私は応援します。応援していきます。
編集後記
 相手の表情がわからない、自分より見える見えない、できるできない、
恋の入り口でブレーキがかかってしまう、そんな話を拝聴することがあります。
だからと言って、なんでもかんでも言葉で伝えるというのも実は難しい、
それも恋だからこそ。
黙っていても手を握ればわかる、それは見えていても見えなくても同じかもしれ
ません。
でも、ただそこに漂う空気感だけで判断し、思い切ってギュゥ、
これってものすごーく勇気が必要です。
もちろん、恋する気持ちにはいつだって勇気がいっぱい必要だけど、
見えないってところでさらに勇気が必要だよってことがあります。
今宵はロマンチックな七夕さんです。
夜空の星が見えなくたって、深く青い空の下、勇敢なネイビーヨコハマさんなら
、きっと。
 -- このメールの内容は以上です。
発行:  京都府視覚障害者協会
発行日:  2023年7月7日
☆どうもありがとうございました。


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