メルマガ色鉛筆第297号「窓辺にて7」
タイトル 「「窓辺にて7」」
メルマガ色鉛筆編集チーム
こんにちは。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
昨年4月よりスタートした「窓辺にて」、連載第7回です。
タイトルをしりとりでつなぎながら、いろんなジャンルの文章が登場します。
これまでに、点字、地味、ミミ、ミント神戸、ベル、ルビーの指輪、わらび餅、
ちょっとだけよ、夜遊び、Vivid、どないしょー!、小革命、
いい子にしてなきゃ、キャッチ、ちょっとの15作をお届けしました。
そのバトンを受けて、今月は
「問う」へとタイトルがつながれました。
窓を開いてひろがる世界、見えない・見えにくい中でひろがる世界をお届けしま
す。
タイトル 問う
ペンネーム アクリル絵具(30代 女性 弱視)
私はものづくりが大好きだ。
目が見えにくくなる前は絵を描くことのほうが好きだった。
今は立体をつくるほうにシフトしている。
特に編み物、現時点ではトップクラスにアツい。
私には色も見えなければ、糸も見えない。
でも、毛糸を手に取れば、手がその存在を認識する。
編む、そのきっかけはただそれだけだった。
糸は語り掛けてくる。
「私は黒い毛糸なの、これから何に生まれ変われると思う?」
そんな感じの声が聴こえる。
まったくもって、いったい何を言ってるんだと笑われそうな話だが。
思えば私、幼い頃からよくわからない人間だった。
例えばスーパーへカレーの材料を買いに行ったのに、
「この人参はきんぴらになりたがっている」なんてことを言いだして、
カレーそっちのけできんぴら作りをはじめたり。
「ぞうさんの絵を描きましょう」と言われて
「ぞうさんはみかん色の感情をもっているから」と、
ぞうの体をオレンジに塗ってやり直しをくらったり。
そんな経験は山ほどある。
大人になった今もまんまなんだろうな私、おそらく。
編み物の話に戻ろう。
糸が問いかけてくるように、私が糸に問いかけることも多々ある。
「君は何になりたい?」
「そういう君は、何を作りたい?」
そんな風に、常に問いかけあいっこをしている。
今までいろんなものを編んできた。
靴下も、マットも、帽子も、マフラーも、ポーチも、
本当に数えきれないほど編んできた。
それこそ幼い頃から、じっとしていることが苦手だった私は、
常に体のどこかを動かしてきた。
なにかしていないと落ち着かない。そんな私と編み物は相性抜群なのだ。
そしてさみしいことに、彼らは形となった瞬間に何も言わなくなる。
生まれ変わった姿に満足したからなのか、
はたまた不満だからこその無言なのか。
きっと誰にもわからないが、それでいいのだろうなと思う。
見えなくたって、見えないなにかとの対話は昔から得意なのだ。
糸は問う。意図を問う。
その問いにどう応えるかは、私の自由なのだ。
なんて、格好つけたことを言ってはみたが、要は下手の横好きの照れ隠しだ。
今日も私はとまらない人間として生きている。
今日も私は問いを編み上げてゆく。
ーー
問いを編み上げる、素敵な表現ですね。
オレンジのぞうさん、キュートです。
そして、今日も何かが生まれていくのでしょう。
何もないところから何かを作り出す、それにはとてもエネルギーが必要です。
すでに何かがあるところに、そのルールの中で動く、これもエネルギーが必要で
す。
0から生み出す文章は、うんうんと頭をひねりながらも
自由に描く、動ける世界でもあります。
それは書くための方法を持っていればということになります。
その方法がわかって、自分にもできればちょっと一つ、ちょっと一歩が出ます。
そうして生まれたちょっと一つがこのシリーズでもあります。
さて、次回の窓辺から、どんな世界がひろがっているでしょうか。
シリーズ第8弾でご一緒しましょう。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2023年4月7日
☆どうもありがとうございました。