メルマガ色鉛筆第93号「手紙「10年前の私へ 10年後の私へ」 その2
タイトル 「手紙「10年前の私へ 10年後の私へ」 その2
メルマガ色鉛筆編集チーム
こんにちは、メルマガ色鉛筆編集チームです。
91号に引き続き、手紙「10年前の私へ 10年後の私へ」をお届けします。
10年という大きな流れの中で自分と向き合って語られた思いや、
そこにある一つ一つの場面たちを読者の皆さんと分かち合いたいと思います。
★ペンネーム 北のクロベエ(40代 男性 弱視)
「10年前の私について」
つい先日47歳になりました。
10年さかのぼると37歳のころの話になります。
そのころ何してましたかねえ。
私は、記憶をたどるためにオリンピックやサッカーW杯を基準にして考える癖があります。
2006年といえば、ドイツでW杯が行われていたころです。
当時はまだ元気でしたからいちおう仕事などもしていましたが、
それ以外の生活はどんなものでしたかね。
節制とは程遠い生活だったのは確かです。
不規則な生活をしていましたし、お菓子などもよく食べていました。
その結果として今の体たらくがあるわけですが、私としてはそんなに後悔しているわけではありません。
自分のやりたいような生活ができていたわけですし、
「昔はよかったなあ」みたいな追憶のような思いがあるくらいです。
とはいえ、残念に思っていることもいくつかあります。
最大のもののひとつは本が読みづらくなったことでしょう。
「読む」という行為は私にとっては何ものにも代えがたいものです。
デイジー図書などではちょっと違和感があり、「目で読みたいなあ」という感想
になってしまいます。
夢の中ではときどきスラスラと本を読んでいる自分がいて、
目覚めたときに自分の視力が戻ったような勘違いをしているときがあります。
そういうわけですから、10年前の私に忠告するとすれば、
「本がめっちゃ読みづらくなる」ということですかね。
ただ、これを聞いた10年前の私はどんな反応をするでしょうね。
生活態度を改めるのか、それとも読めるうちにたくさん本を読んでおこうとするのか。
どうも後者を選択しそうな気がします。
それではまた10年後に。
「追伸」
それにしても当時かよっていた本屋さんはどうなっているのでしょうね。
ちょっとのぞいてみたい気もするのですが、白い杖を持って本屋さんに行くのは
少しはばかられます。
これも視覚障害者あるあるのひとつかもしれませんね。
最近つぶれる本屋さんが多いので心配しています。
私は月に何万円もつかう、自分でいうのもなんですがよいお客さんでしたからね。
本屋さんに貢献できなくなったことも残念なことのひとつです。
まちの本屋さん、頑張ってください。
★ペンネーム アイアンシルバー(30代 男性 弱視)
「10年前の自分へ」
10年前の自分はマッサージ師になるための勉強をしていた。
毎日苦しみながらも頑張っていた。
なかなかやる気になれないこともあって、本当にこの道に進むのかを考えていたりもした。
このときは本当に人と話をするのが苦手で、誰に話せばよいのかもわからずに一人で苦しんでいた。
就職してからは、少しずつではあるがコミュニケーションをとることの大切さ
を知ることができるようになった。
「10年前の僕、この道で間違いはないよ。不安はあるけど、少しずつ無理はせずに進んでいこう!」。
今は仕事を離れているが、今後、また仕事に復帰できたら今以上に自信が持てそうだ。
「10年後の自分へ」
44歳になった自分は仕事も順調で、
自分の好きなものをいろいろ買ったり、職場の仲間と一緒に出かけることも多くなっていると思う。
自分で治療院を開業するのは難しいとは思うが、最高の40代を過ごしているかも。
今までよりももっと話が好きな自分がいると思っている。
今までの苦労が全部忘れられるくらいの生活が送れていることを期待している。
「無理はするなよ!」。
★ペンネーム ダークバイオレット(70代 女性 弱視)
「10年前の私に」
主人が他界してしばらくたったあの頃、私はマンションに移り住んだ。
必要最小限にとどめた衣類や食器類とともに。
そうそう、柴犬のチャロを引き連れて。
家具やカーテンは茶系統にこだわり、遠くの専門店にまで足を運んだ。
若かりし頃に描いた下手な絵を飾り、狭いベランダは季節の草花で満たした。
カルチャーセンターに通い、ハイキングに加わり、時には旅行をし・・・、
一人暮らしの侘しい生活の中でささやかな楽しみをエネルギッシュに追いかけていたように思う。
「見えにくさ」への不安は常にあったけれど、だからこそ貪欲な自分があったのかもしれない。
いつも私を見つめていてくれたワンちゃん。
韓国映画のビデオを持って時折訪ねてくれた友人。
今は介護施設にいるお隣の住人。
10年前の私を充たしてくれたあの人、この人に「ありがとう」を言いたい。
そして、思い出をいっぱい作ってくれた自分自身をなつかしく、また愛おしく思う。
編集後記
第91号のその1につづいて今回のライターさんがご自身に語りかけるお手紙、
みなさん、読まれていかがでしたでしょうか。
10年先のことはわからないものです。
それを知った今から10年後の自分は、その10年の重みを感じることができま
す。
視覚障害という大きなことがあり、視覚障害とともに自分はどのようにやってき
たかというテーマがあります。
このテーマの持つ重みは大したものだと思います。
そして、明日に向かうその先に10年後がありますね。
一日一日、重みにつかれるときもあるかもしれませんが、重みはきっと手応えになると、
北のクロベエさん、アイアンシルバーさん、ダークバイオレットさんの手紙が
知らせてくれているのではないでしょうか。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2017年5月12日
☆どうもありがとうございました。