メルマガ色鉛筆第41号(「眼の疲労と英文読書」)
タイトル 眼の疲労と英文読書
ペンネーム 青空色の日記帳(50代 男性 弱視)
レポートの要旨です。
先天性の眼の病気のあった私は、細かな漢字は黒く潰れて見え、元々は読書はできませんでした。
ですが、細かな文字の存在しない英語に出会ってからは読書が可能になりました。
それでも眼の疲れやすさはかなりあり、
毎日勉強を続けるための工夫や試験の解答時間内で長文を読み終わるための対策などを積み重ねなければなりませんでした。
今回は、そういった部分を正直にお話しようと思います。
ここから本文です。
「(眼の疲労を軽減するための打開策、その1)
辞書を引く苦労を減らすため、ひとつでも多くの単語を覚えるように努力しました」
せっかく出会った英文読書でしたが、
新聞よりもさらに小さな文字で書かれている英和辞典を引くことは眼への大きな負担になりました。
そこで、その苦労を少しでも減らすために、
市販の単語集を利用して毎日単語暗記を続けるようになりました。
単語を知っていれば知っているほど辞書を引く必要がなくなるからです。
高校1年生の頃から10年間以上、ほぼ絶え間なく続いた日課でしたが、
不思議なことに苦しいと感じたことは一度もありませんでした。
「(眼の疲労を軽減するための打開策、その2)
ひとつの段落につき要点はひとつだけという読み方に徹しました」
新聞や書物や試験の長文問題を読むとき、すべての文章に同じウエートをかけて読んでしまうと、
記事やページ全体で何が書かれているのかがわからなくなることがよくあります。
人間の記憶力というのは実に頼りないもので、
そんなに多くの情報量は一度ではそう簡単には処理しきれないのですよね。
そんなとき、晴眼者の人たちは何度も何度も読み返して理解を深めることもできますが、
私たち弱視の者がそんなことをすれば眼のスタミナを一気に失ってしまいます。
そこで、「ひとつの段落につき要点はひとつだけ」という読み方を身につけるように努力しました。
そうすることで、新聞ならその記事全体、
本や長文問題ならそのページ全体を読み終えたときに本筋をしっかりつかむことができます。
何度も何度も読み返して眼の疲労を招くなどということは避けることができるようになりました。
このように、一度話の本筋をつかんでしまえば、
必要に応じて細かなところを読み返してもしっかり頭に入ってくるようになります。
「段落要点読みの練習方法、その1」
まずは、ひとつの段落を読むごとにごく短い要点をメモするという練習から始めました。
説明のため、「からす、なぜなくの」で始まる童謡の歌詞を「ひとつの段落」に例えてみます。
やはり、正式な題名「七つの子」が示しているように、
「かわいい七つの子(をいとおしむ親がらす)」というのが要点になるのでしょうか?
テクニックのひとつですが、
「要点の書かれた文章の後には、同じような内容の文章が補足的に続いていたり、別の言葉に言い換えて説明されている場合が多い」ので、
それらをヒントにして読めば要点がつかみやすくなると思います。
歌詞の後のほうで「かわいい」という言葉が繰り返されていたり、
さらに「丸い目をしたいい子だよ」という言葉が続いていますね。
「段落要点読みの練習方法、その2」
20歳の頃、英語の先生が面白い読書方法を教えて下さいました。
「難しい段落に出会ったら、頭の中で、だれかに要点を説明してみるようにしなさい」というものでした。
本来は受け身一辺倒の読書ですが、このように一時的に思考を発信型に置き換えてみると、
もつれた糸がほどけてくるように話の大まかな要点が少しずつ見えてくることがよくありました。
上記の例ですと「あのからすにはね、とってもかわいい七つの子がいるんだよ」などとなるのですが…、
あれっ?、今、頭の中で自分の言葉に置き換えてみて初めて気がついたことがあります。
この七つの子というのは「7羽の子たち」なのでしょうか、それとも「7歳の子」なのでしょうか?
このように、自分の言葉で説明してみるとより理解が深まるなんていう経験を何度もしました。
「26歳までの到達点」
こういった読書方法でどの程度の効果があったのでしょうか?
目安としてですが、24歳のときに英検準1級に合格しました。
特に一次試験は18点ほど余裕がありました。
25歳のときには国連英検A級に合格しました。
二次試験が難しく、2回目での合格となりました。
しかしながら、次の年に受けた英検1級は合格点まであと1ケタのところまで行きましたが、
それまでの無理がたたったのでしょうか、視力をさらに悪くしてしまい断念せざるを得ませんでした。
そしてその後、英語からも離れてしまいました。
「もう一度だけ…」
それから20年以上が経ちました。
時代は変わりました。
パソコンやインターネットなどの登場により視覚障害者の英語学習環境も整い始め、
なんだか英語への希望がよみがえってきました。
単語暗記は眼への負担が少ないことから、1年半ほどで英単語1万2千語リストを覚えきり、
2012年に英単語検定1級に合格しました。
英検1級の出題範囲まであと3千語になりました。
次回、最新版の携帯用拡大読書器を入手したら、
それを持って20年ぶりに英検の試験会場に行ってみようと思っています。
もし試験用紙にうまく対応できることが確認できたなら、
今の眼の状態に合わせた読書法を工夫しながら、何年かかってでももう一度合格を目指して全力を尽くしてみたいです。
かすかな希望ではありますが……もう一度。
編集後記
これからやろうとしていることがある。
やりたいことがある。
でも、見えない不自由、見えにくい不自由が妨げ、バリアになり道がふさがれる。
そんな困難な状況がしばしばあります。
英語を読みたいけれど、辞書が見えにくく負担が大きい。
困難な状況。
だからできないと考えるのでなく、それなら1つでも多く単語を覚えればいいと考えること。
進んでいくこと。
それは乗りこえる力。
乗りこえる力が青空色の日記帳さんにわいてきましたね。
そして、単語は1つずつしか覚えられないはずです。
1つずつが1万に本当になるんだよ。
こんなふうに言うことのできる人が私たちの仲間にいるとわかりました。
-- このメールの内容は以上です。
発行: 京都府視覚障害者協会
発行日: 2015年5月1日
☆どうもありがとうございました。