「視覚障害三療家の明日を切り開く第一歩に!」

本会会長 田尻 彰
 今、あんま・鍼・灸を生業とする視覚障害三療家の仕事の実態はどうなっているのでしょうか。
 そして、京都における今後の視覚障害三療家の未来を切り開くための方策は、考えられているのでしょうか。
 日増しに厳しくなる視覚障害三療家を取り巻く暮らしと営業。かつて三療の免許さえ取得すれば、何とか暮らしていけるとも言われていた時代もありました。
 今から40年前、団塊の世代が働き盛りを迎えていた頃の京都は、まさに病院就職を中心に視覚障害三療家が働く喜びを感じ、働く場で大いにその役割を発揮していた時代でした。
 その後、晴眼者(視覚障害者に対する健常者の総称)が三療業界に進出するようになり、次第に視覚障害三療家の職域は侵食されてきました。病院や医院などで働く視覚障害三療家は次第に職場を追われ、働き続けることが難しくなると共に、働く条件面でも大きな後退が始まりました。また、自宅開業などの自営に踏み切ったとしても、車による往診や保険請求のレセプト請求事務のサポートなどにおいて、視覚障害による社会的不利が多く、周囲の晴眼者の三療業者との間に、大きな格差が生じていきました。そして、そのような格差を是正する施策や具体的な対策も立ち遅れたまま現在を迎えています。
 こうした事態に立ち向かう取り組みが始まろうとしています。
 2月21日、本会の三療部が呼びかけて、「京都視覚障害者三療関係団体連絡会議(仮称)」の集まりが企画されました。その場には、京都で視覚障害三療に関係する団体や養成施設、就労支援施設や盲人ホームなどが一堂に会しました。この会議の目的は、京都におけるこれからの視覚障害三療家の未来を切り開くことです。資格を取得した「視覚障害三療家がいきいきと働き続けられる京都」をつくるという、共通の目標に向かっての取り組みの第一歩が記されました。
 当日は、参加施設や関係機関から現状や問題点、当面の課題などについて報告し、それぞれの思いや考えを共有するところから始めました。視覚障害三療家を社会へ送り出す側の京都府立盲学校や、京都府立視力障害者福祉センターからは、実技試験なしで行われている国家試験制度や、授業カリキュラムの中での基礎的な技術指導の現状について、問題提起されました。 
 また、資格取得後の視覚障害三療家を受け入れる側の就労支援施設や盲人ホームなどからは、基本的な手技を支える指使いの課題などが具体的に提起され、基礎的な学習の積み重ねと卒後研修の場の必要性が共通の課題として浮き彫りになりました。
 これらの意見交換を通じて、視覚障害三療家の質の高い研修の場の創設と、各関係機関・施設のノウハウを持ち寄ったスキルアップが、京都全体で必要であり、求めていく目標であることが大きく浮かび上がりました。そして、このような情報交換の場を通じて、就労問題や技術教育研修等の共通する課題を、京都全体で改善していく必要があることを再確認しました。
 一方、このような京都での画期的な取り組みが開始された時期に、京都府内で気になる動きがありました。「宇治市高齢者あんま・マッサージ・指圧・鍼灸施術費助成事業」廃止の動きです。
 宇治市では、1994年以来長年にわたって宇治市の高齢者があんま・鍼・灸を受ける際に低料金で受診できるよう、助成事業が行われてきました。しかし、最近の財政事情の悪化などを理由に、今年度限りで助成事業を廃止する旨の連絡がありました。
 そこで、本会と宇治市の今里地域団体長と協力し、本会と宇治市の団体の連名による事業の存続を求める要望書を作成し、三療関係団体連絡会議と同じ2月21日に宇治市健康長寿部に提出しました。特に強調したのは、一つ目に、年間2000件も実績があるにも関わらず、市民の健康増進と視覚障害三療家の就労を支える優れた事業を、財政的な理由だけで切り捨てるのは認められないこと。二つ目に、今まさに、国内3か所で係争中の「あはき法19条違憲訴訟」の行方を無視した行政の動きは、宇治市にとっても将来的な禍根を残す結果につながりかねないこと。そして三つ目に、議会への提案間際になってからの説明はあまりにも唐突であり、施策に対する聞き取りや説明責任を果たしていない状況にあることなどをお伝えしました。
 また、本会の懸念として、こうした自治体による助成事業の廃止・削減が周辺市町村に波及することと、その悪しき先鞭を宇治市が切り開くことの重大性を強調しました。
 私たちは、今こそ、三療の免許資格取得者が働き続けられる職場を開拓し、一人ひとりが働くことによって生きがいを感じることができる社会の実現を目指さなければなりません。そのためには、晴眼者の養成施設や学校が国を訴えている「あはき法19条違憲訴訟」において原告が敗訴すること、今回のような自治体による「施術費助成事業」の廃止の動きに機敏に反応する運動に加えて、今回立ち上がった京都における新しい動きが実を結び、新たな峰への前進を目指す取り組みを発展させていく必要があります。
 皆さん、どうかこのような状況をご理解いただき、私たちと共に視覚障害三療家の未来に向けての取り組みに、大きなご支援とご協力をお願いいたします。


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