[報告] 「あはき等法19条裁判について」

 学校法人平成医療学園(以下、「平成医療学園」という)は、自らが設置経営
する3校の養成施設と大学のあん摩マッサージ指圧師養成課程の新設認可申請が
不認定とされたことを不服として、国を相手にその不認定処分の取り消しを求め
訴訟を提起した。
 訴訟の当事者は平成医療学園と国であり、我々は裁判の当事者ではないが、訴
訟の結果によっては視覚障害あん摩マッサージ指圧師が失職し、あるいは視覚障
害者があん摩マッサージ指圧師の職域から閉め出されかねないことを考えれば、
我々こそが実質的には当事者であるとの認識に立ち、国の立場を強く支持するも
のである。
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下「あはき等
法」という。)19条は、「当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩
マツサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マツ
サージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の
総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障
害者であるあん摩マツサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないように
するため必要があると認めるときは、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養
成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一
項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことが
できる。」と定めている。
 平成医療学園は、この規定が制定されてから半世紀あまりが経過しており、1.
視覚障害者に対する年金などの社会保障が充実し、あん摩マッサージ指圧師以外
の職業に広く就職しているなどとしてこの規定の意義は失われている
2.あはき等法19条は憲法22条によって保障された平成医療学園の営業の自由を
侵害するものであり、国の不認定処分は憲法31条によって保障された手続き的保
障に反するなどと主張している。しかし、それらの主張は現状の認識を大きく誤
り、憲法解釈にも反するものである。
障害者雇用促進法が施行された今日においても、視覚障害者の職域は依然と
して狭く、視覚障害者の一般雇用は極めて低位のまま推移しており、今日におい
てもあん摩マッサージ指圧業は視覚障害者の中心的職種なのである。また、視覚
障害あん摩マッサージ指圧師の収入は、晴眼あん摩マッサージ指圧師に比較して
極めて低い状態が続いている。
他方、年金などの社会保障が制度化されたとはいえ、障害者の生活は引き続
き困難な状態が続いており、障害者の生活保護受給率は一般国民の10倍を超えて
いるのである。
視覚障害者の職業選択の自由が未だ実現していない中で、平成医療学園の主
張が認められることがあれば、あん摩マッサージ指圧業の分野からも視覚障害者
が実質的に閉め出されることとなり、視覚障害者の就労を通じた自立をも奪う結
果となることは必定である。
我々は、そうした事態を回避するため、広く国民の理解と支持をも得て、視
覚障害者の関係団体だけでなく、あはき業界との連携の下に国が勝訴するために
全力を尽くすことをここに決意するものである。
     2017年6月25日
  公益社団法人 京都府視覚障害者協会
  2017年度定時総会


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