メルマガ色鉛筆第260号「言葉が歌う」

タイトル 「言葉が歌う」
ペンネーム フェルメールブルー(70代 女性 弱視)
レポートの要旨です。
 「歳歳に わが悲しみは 深くして・・・」
 見えにくくなっていく私は、京都ライトハウスの生活訓練で文章講座に出会い受講
することにしました。
訓練を振り返ってみると、私の中にゆっくりながら文章力という新たな力が、枝を伸
ばし、言葉、言の葉を茂らせていったと感じます。
それをレポートにしてみました。
石川先生に導かれて、書くことに励んだ日々をご紹介します。
ここから本文です。
 今年もうらうらとした春を迎えようとしています。
視覚障害者になって7回目の春がやってきました。
桜の花はこの季節になると、ちゃんと忘れずに咲き誇ってくれます。
見える人にも見えない人にも見えにくい人にも等しく微笑んでくれます。
けど、私の目には年々、桜の花が遠ざかるかのように、霞にしか見えなくなってきて
います。
この一瞬深まるせつなさに、私はどんな言葉を用いたら良いのでしょうか。
「歳歳に わが悲しみは 深くして・・・」こんなところでしょうか。
 視覚障害者になって、京都ライトハウスで通算2年半のさまざまな訓練を受けまし
た。
その1つが文章講座でした。
文章講座では、毎回それぞれに感じたことを文章にしてきました。
 講座担当の石川先生はいつも、傍らにいてくださり、指導ありきの姿勢でいてくだ
さいました。
そして、文章講座の感想文をいつかは書いてみようと思いながらも、うぅん、これは
難しい課題だと感じ、避けていたことは否めません。
けど今、書いてみようという気になれました。
 さて、文章講座は毎週火曜日の午前中に訓練がありました。
石川先生は開始と同時にある言葉を出します。
訓練生の私たちはそれを受けて連想をさせられます。
例えば「4月と聞いて何を連想しますか?思いつくまま20題書いてください」と。
私たちはそれを真剣に考えるわけです。
「桜・入学式・朧月夜・転勤・・・」いろいろ出てきます。
これが、簡単なようで意外と難しいです。
連想した中からこれと思うもの3題を発表します。
さらに、訓練生のみなさんに発表した3題のどの言葉がよいかを選んでもらいます。
それが、即課題となり、文章を編んでいきます。
時間内に完了しなければ宿題になります。
次の火曜日までに書き上げて添付ファイルにして、石川先生に送信します。
石川先生は一人一人の文章を読み、もっとよくなるようリライトして返信してくれま
す。
うぅん なるほど、これがちょっとの手入れで引き締まるんです。
このように毎週、課題を抱えての訓練がありました。
いささか、しんどいことでもありました。
 石川先生の指導で一番難しいことは、嬉しいことを嬉しいとだけ言わない、「嬉し
い」の言葉を使わない、悲しいことも悲しいとだけ言わない、「悲しいの」言葉を使
わないことです。
何がどう嬉しいのか、悲しいのか。
また、嬉しさも悲しさも分量があります。
 そして、心の琴線に触れることを文字にするのは、ぜひやりたいことであるととも
に、本当に困難な作業でもありました。
さらに困ることは、折角、よい言葉を思いついたのにパソコンに向かうと既に言葉が
逃げてしまっているんです。
これは実に悔しいです。
 文章講座から完成に至った文章は、時には「あるメルマガ」に投稿してもらえます

メルマガになって配信されバックナンバーがサイトにも掲載されることは、訓練生に
とって、大きな励みになります。
 文章講座は、見えない見えにくいことだけが石川先生とも、訓練を受けるみなさん
とも共通しています。
10代から70代まで個性のある訓練生が7人から8人、集まっていました。
このような教室で石川先生は一人一人の個性に合わせてゆっくり指導されています。
 今、振り返ってしみじみ感じるのは、文章力を付けるのに訓練開始時のあの連想ト
レーニングが良かったのだろうということです
私の訓練は終了しましたが、季節移ろう頃になると今ならこんな言葉かなと連想しな
がら指折々して愉しんでいます。
 「言葉が歌う」ほどの文章はなかなか書けませんが、そこを目標に精進したいと思
う今日このごろです。
 石川先生、心深くお礼申し上げます。
 エスパシーバ  メルシー  カムサハムニダ  謝謝  言いつくせないありが
とう。
編集後記
 文章を書くというのは、視覚障害者が自由に動ける分野の1つだと思います。
そこに目を付けて生活訓練に取り入れたのが、石川先生です。
この先生はメルマガ色鉛筆の創始者でもあります。
編集チームの石川さんだ。
 今回のフェルメールブルーさんのレポートは、訓練の様子とそれを直に体験した率
直な感想ですね。
フェルメールブルーさんが訓練によって新たな力を得て、そのぶん、よりいきいきと
日々を過ごしてられる様子が、レポートの文章に出ていますでしょうか。
また心の琴線に触れることを文章にして読ませてもらいたいです。
グラッツィエ  おおきに。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2022年3月25日
☆どうもありがとうございました。


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