メルマガ色鉛筆第234号「全盲夫婦の結婚式 開催編」

タイトル 「全盲夫婦の結婚式 開催編」
ペンネーム 青のシンフォニー(30代 男性 全盲)
★レポートの要旨です。
前号「全盲夫婦の結婚式 準備編」のつづきです。
 2019年夏からスタートした結婚式の準備は、年が明けていよいよ本格化し
ていった。
衣装合わせや当日の料理の内容など、触ること、そして食べることを目的とした
我々の結婚式の準備は順調に進んでいると思っていた。
ちょうどその頃である。
テレビから、新型コロナウイルスという単語がちらほら聞こえ始めるようになっ
たのは。
当時はまだ日本では感染者がほとんど確認されておらず、横浜に停泊していた豪
華客船の名前を何度も耳にしたのは、皆さんの記憶にも新しいだろう。
船の中で何か大変なことが起こっているんだなというのが正直な感想だった。
それからはあれよあれよという間に状況が変貌していった。
もちろん結婚式の準備は中断に。
今となっては1回目というべき緊急事態宣言も発令され、
大阪と兵庫の往来を控えてなどという異例の文言を耳にしたりもした。
そんな中でようやく結婚式の準備を再開できたのは、5月も半ばに差し掛かった
頃だった。
★ここから本文です。
 「結婚式は予定通り行いますか?」。
これが打ち合わせを再開して最初に聞かれたことだった。
すでにある程度準備も進んできた中でこの質問をされるということに、
事態の重さを改めて認識させられる。
ただ、我々はきっぱりと答えた。
予定通りこのまま進めてくださいと。
決してコロナウイルスを軽視していたというわけではない。
ただ当時から、必要以上に怖がることはないと思っていたし、
もし仮に延期したからといっていつ終息するかもわからないという考えがあった

中止という選択肢がなかったのは、僕の勝手な想像だ。
妻はその可能性も考えていたのかもしれない。
ただ、自分のお気に入りのウェディングドレスまで決めて、
当日どうやってみんなに見てもらおうかという話を毎日聞かされているのだ。
そんな妻に、じゃあ中止にしようかと言える夫が世の中にどれぐらいいるだろう
か。
ノロケはこの辺にして、我々の結婚式の準備はこれまで以上にスピーディーに、
なおかつ神経を使う必要があった。
触ることと食べることなんて、どちらも感染リスクの塊のようなものだ。
使い捨ての手袋をゲスト全員に配布したり、
ウェディングケーキの模型をテーブルの数だけ作ってもらったり。
友人、家族、そしてプランナーさんのお母様にまでサポートをいただいて、なん
とか11月29日を迎える準備が整ったのは、前日の夜だった。
同時に、我々が責任を持ってゲストの方々をお迎えする「覚悟」を決めた。
 当日はもう、あっという間に過ぎていった。
たくさんの方々の祝福の言葉に埋もれながら、
式から披露宴までの4時間足らずが一瞬に思えた。
こんな状況の中でも足を運んでくださる方々がいること。
以前から、人のつながりには本当に恵まれていると感じていたものだが、この時
改めて実感した。
我々が当日初めてゲストの方々と顔を合わせるのは、バージンロードを歩く時だ

「もし式場の扉を開けて、拍手の音が2・3人だったらどうするの」と冗談を言
っていた。
妻は式の支度の最中もゲストの方々が無事到着されているか、常に気をやってい
た。
我々の心配はよそに、当日は割れんばかりの拍手に迎えられてバージンロードを
歩いた。
たくさんの「おめでとう」が、そこにあった。
二人で受ける祝福、こんなこと生涯に一度だろう。
改めて、集まってくださったゲストの方々には感謝の気持ちでいっぱいだ。
結婚式をやって良かった。
僕はその時になって初めて、心の底からそう思った。
 我々全盲夫婦の結婚式が無事終了したと言えたのは、それから2週間後。
我々はもちろん、ゲストの方々からも体調不良の連絡もなく、何事もなく過ぎて
いった。
正直この2週間がヒヤヒヤものだった。
我々の判断が正しかったかどうかなんてわからない。
たまたま我々の結婚式では感染者は出なかった、運が良かったということだろう

日ごろから我々夫婦(妻?)は起こってもいないことを心配しても仕方ないという
スタンスでいる。
できる限りの準備をしたならば、あとはなるようになると。
どちらかと言うと心配性の僕にとっては、妻のそのスタンスには日々救われてい
る。
というのか、振り回されているというのか。
ただ一つ、これを機に妻の度胸は以前に増して据わっている。
・・・、そんな気がする。
今日も妻の作ったご飯を、僕は隣に座って食べている。
心持ち小さめに座って、食べている。
編集後記
 ていねいに準備をしていた結婚式、さらにていねいに感染防止の準備もして、
無事にすばらしい式になったようで安心しました。おめでとうございます。
 ウェディングドレスはバラの鼻の付いた裾の長いドレス、カラードレスは海を
イメージした水色のドレス、宝石の付いたティアラ、それらを手で触れて話をし
ながら選ばれたそうです。
食事は、どんな人でも好きなものがあるよう、和洋折衷のコースにし、各メニュ
ーのわかりやすい説明や前菜のお皿を分けるなど楽しんでもらえる配慮をされた
そうです。
 みんなで祝ったよい思い出の結婚式、ずっと心に残り、思い出す度に心をあた
ためてくれるでしょうね。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2021年7月2日
☆どうもありがとうございました。


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