メルマガ色鉛筆第209号「カラフル本棚」

タイトル 「カラフル本棚」
ペンネーム ホットブラウン(50代 男性 全盲)
★レポートの要旨です。
 1枚ずつページをめくるように、木々も色づいていく季節になりました。
さて、大好きな色鉛筆で何を語ろうか、
ふと、私の読書ノートを開いてみました。
大好きな作家さんたちのイメージを、色に例えてみたら?、
そう秋の風がささやきました。
今回は本に包まれるひとときをお届けします。
★ここから本文です。
 2019年の本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』などの著書で有名な瀬
尾まいこさんは、卵の黄身の黄色、それとも温かみのあるクリーム色かな。
中学校の先生だった瀬尾さんの作品は、優しくほっこり、ハートウォーミングなもの
が多いです。
穏やかな風を感じます。
 小手鞠るいさんの作品は、オレンジ色のイメージ。
2019年の小学館児童出版文化省受賞作『ある晴れた夏の朝』などの著書がありま
す。
戦争がない平和な世界、誰もが一緒に混ざりあって暮らせる社会、そんな大きな人間
愛を感じる作品は柔らかなだいだい色かな。
実は直接お会いしたこともあるんです。
ご本人はまさに情熱の赤のイメージ、熱いパッションを感じました。
詩人としてデビューされ、アンパンマンの著者やなせたかしさんとの交流も深かった
方です。
『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』で読むことができます。
 やなせさんの色は、太陽の色、赤みがかったオレンジ色でしょうか。
『手のひらを太陽に』などの多くの詩を残してくれた方でもあります。
戦争を体験している、やなせさんの人生はバラ色ではありませんでした。
『絶望の隣は希望です!』という本では、やなせさんの歩まれてきた道がつづられて
います。
辛さ、苦しみを味わったやなせさんからのメッセージはとても温かいです。
蒼い地球で生きる私たちのことを、太陽のような大きな優しさで天国から見守ってく
れていることでしょう。
 『DIVE!!』や『クラスメイツ』など、10代に人気の高い森絵都さんは、少
しだけ青みがかった白といったところでしょうか。
教育をテーマとした長編小説『みかづき』や、ちょっと不思議なエンターテイメント
小説でありながら、社会的テーマをも感じられる『カザアナ』は、しっかりと読み応
えのある作品です。
森絵都さんの作品群には出版年順のグラデーションを想わせます。
それは強さと、しなやかさを併せ持つ森の木々のような色調です。
キャリアを重ねることでだんだんとイメージカラーが変わってくる作家さんもいます
ね。
 書店勤務経験のある大崎梢さんの作品は本屋や図書館が舞台だったり、本にまつわ
る物語が多いです。
温かみを感じるレンガ色、古い図書館ってところかな。
『本バスめぐりん。』は、街を巡る移動図書館のお話です。
『天才探偵Sen』は児童書でミステリーの図書館版全7巻です。
昨今、希薄になりつつある、人と人のふれあいのストーリーが心地よさを誘います。
読書はあまりしないという人にもオススメです。
 ここからは、書名に色がついている作品をご紹介します。
まずは、古内一絵さんの『蒼のファンファーレ』 
物語の舞台は、廃止もささやかれる西日本の地方競馬。
デビュー2年目の女性ジョッキー瑞穂が置かれた環境は華やかな中央競馬とは全く別
世界です。
血統の良い、強い馬は中央競馬に集まっていきます。
一方、瑞穂の関わる馬たちは絶頂期を過ぎていたり、老いていたり、訳ありの馬ばか
りです。
そして、周囲のひとたちも、声が出せなかったり、ちょっと訳ありな感じです。
一歩一歩歩んでいく馬と人間。どんなゴールが待っているのでしょうか。
なお、この作品は、『風の向こうへ駆け抜けろ』の続編です。
新人ジョッキーとして悩みながらも少しずつ成長する瑞穂の姿を描く同作の後に読む
と、より味わい深くなります。
古内一絵さんの人気作品には、マカン・マランシリーズがあります。
都心から少し離れた路地裏にある夜食カフェ「マカン・マラン」は23時に開店です

シリーズは4作あります。
『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』
『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』
『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』
『さよならの夜食カフェ マカン・マラン おしまい』
古内さんの作品には、社会的マイノリティの人々が多く登場します。
登場人物はひたむきに毎日を生きていたり、真のやさしさを持って人を愛していたり
します。
 続いてご紹介するのは、藤岡陽子さんの『いつまでも白い羽根』です。
藤岡さんは異色の経歴を持つ作家さんです。
2017年現在、京都市内で看護師として勤務されています。
藤岡さんは、スポーツを取材する新聞記者でした。
取材を進めるうちに、第一線で活躍する選手よりも、スポットがあたらない人へ興味
を抱くようになったそうです。
タンザニアの大学に留学し、帰国後に看護師資格を取得したという方です。
心動かされたものを機に新たな道へ踏み出す、そもそも藤岡さんの人生がドラマチッ
クなんですよね。
彼女の作品は人への愛にあふれています。
『いつまでも白い羽根』は、ナースを目指す主人公の成長、葛藤、医療現場の厳しい
現状、看護とはどういう行為なのかなどを描いた大人の青春物語です。
重いテーマでもありますが、文章は読みやすく、ぐんぐん引き込まれていきます。
2018年にはドラマ化されました。
『満天のゴール』や、『手のひらの音符』は、切なさの中に暖かな希望を感じるスト
ーリーです。
 知ることは楽しいこと。楽しいなという気持ちは、前へ進むエンジンです。
もっと知りたいなって思えて、次のページをめくりたくなります。
創造の翼で大空へ舞い上がれば、新たな景色がみえることでしょう。
さて、どこに行けるかな。
何ができそうかな。
ページをめくると、白くてふわふわの雲にも乗れますし、エメラルドグリーンの海で
イルカと戯れることもできます。
鮮やかな紅葉のように色とりどりの世界に出会えるかもしれません。
さて、行先には何が待っているでしょうか。
編集後記
 今回は、カラフル本棚さんの書斎にお邪魔しました。
少しでも穏やかな、優しい心持になる人が増えたら、それが今回の本選びのコンセプ
トだと聴きました。
段落ごとに、一冊ずつ本棚から取り出される仕草が目に浮かびます。
それはとてもゆったりとした動きで、秋の1日にしっくりときました。
そして、前へ進むエンジンは、別のお部屋にもあるそうです。
そこにはどんな色が詰まっているのでしょうか、「知りたい」と思わず声が出て、ペ
ージをめくりたくなりました。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2020年10月30日
☆どうもありがとうございました。


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